「奏劇」は、映像音楽で長年活躍してきた岩代太郎さんが手掛ける、音楽と演劇の融合を目指す新たな舞台シリーズです。2025年6月から、三宅健さん主演の第4弾が上演されることになりました。この記事では、戦争に翻弄されながらも、音楽で心を通わせる敵国同士の恋人たちを描いた『ミュージック・ダイアリー』をご紹介します。
物語の世界観と音楽の必然性が織り成す「奏劇」
音楽が台詞を奏でるかのように、役者と演奏者が繰り広げる独自のパフォーマンス空間をコンセプトとして、2018年に旗揚げされた「奏劇」シリーズ。映画『利休にたずねよ』『キネマの神様』など、幅広いジャンルの映像音楽で活躍してきた作曲家・岩代太郎さんが、企画・原案・音楽を担当します。
「多くのサウンドトラックを手掛けながら、時には台詞よりも雄弁に語る音楽の有様を知り、新しい音楽の可能性を探求したいとの衝動を抱きました」
「かつて『オペラ』の新しい可能性を探求した先に『楽劇』があったように『演奏』と『演劇』の狭間で新しい可能性を探究したい。その想いから生まれた新しい舞台芸術のカタチを私は『奏劇』と名付けました」(『ライフ・コンチェルト』ご挨拶より)
この理念のもと、第1弾『ライフ・コンチェルト ある教誨師の物語〜死撚刑執行までのカウントダウン』、第2弾『TRIO~君の音が聴こえる』、第3弾『メトロノーム・デュエット』に続き、第4弾となる『ミュージック・ダイアリー』が誕生します。
今回の舞台には、個性と実力を兼ね備えたクリエイター2名も参加します。
演出を手がけるのは、15歳で東京バレエ団に入団し、退団後は演出・振付・ステージングにも領域を広げた首藤康之さん。2012年には第62回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しています。
脚本は、早稲田大学「劇団てあとろ50’」出身で、演劇ユニット「Mo’xtra」を主宰する須貝英さん。近年はニューヨークのチェイン劇場で新作ミュージカルが上演されるなど、注目を集める若手脚本家です。
この三者が織りなす音楽と演劇の化学反応が、『ミュージック・ダイアリー』にどのような世界観を生み出すのか、大いに期待が高まります。
「戦争」と「音楽」が交錯する世界で
2021年、東ヨーロッパの音楽大学「ミール音楽院」。青年教授ミカエルは、隣国から通うピアノ教師ローラと恋に落ち、「ミュージック・ダイアリー」と名付けた音楽の交換日記を通じて、心を通わせていました。
しかし、ミカエルの祖国がローラの国に侵攻し、戦争が勃発。敵国同士となった2人は引き裂かれ、ローラは国外退去、ミカエルは軍に強制入隊させられてしまいます。それでもSNSを通じ、2人のミュージック・ダイアリーは続けられていました。
やがて、激しい戦火の中で迎えたクリスマス。わずか24時間の休戦が決まり、国境の橋での再会を約束する2人は、果たして再び抱き合うことができるのでしょうか──。
公式サイトでは、このようなメッセージが記されています。
「ロミオとジュリエット、ウエスト・サイド・ストーリー…などを通しても、私たちは、愛し合う想いだけではどうにもならない、政治のもとの戦争という、抗えない、強大な力をドラマに見てきました。そしてそれがドラマの世界だけではないことも知っています」。
簡単なようで、まだ誰も成し遂げたことのない「世界平和」。それを音楽という形で願い、伝えていく21世紀の「新・戦争レクイエム」──それが『ミュージック・ダイアリー』です。
言葉とメロディーが響き合う新たな舞台体験
主人公・ミカエル役に三宅健さんがキャスティングされました。奏劇第2弾『Trio~君の音が聴こえる』への出演時には、岩代太郎さんの奏でるピアノの旋律がキャラクターの心情を鮮やかに彩り、役に生命が吹き込まれていくような感覚を得たと振り返ります。
「『奏劇』の魅力は、朗読と生演奏が互いに呼応し、新たな芸術体験を生み出すことにあります。今回はピアノ二台による演奏で、音楽がより多層的に作品世界を描き出していくことでしょう」と、今回の意気込みも語りました。
愛を信じる強さを持つヒロイン・ローラを演じるのは馬場ふみかさん。初の朗読劇に挑むうえで不安もあるそうですが、生演奏とともに言葉を届ける「奏劇」独自のスタイルに大きな魅力を感じていると語ります。
そして物語を進行するストーリーテラー・久遠泰平を務めるのは西村まさ彦さん。ミカエルとローラの心情や対話を軸にしながら、教授や軍隊仲間といった複数の役柄を縦横無尽に演じ分けます。名優がどのように舞台を導いていくのか、期待が高まります。 奏劇第4弾『ミュージック・ダイアリー』は、2025年6月20日(金)〜6月29日(日)まで、よみうり大手町ホールにて上演予定。詳細は公式サイトをご確認ください。

物語と音楽が呼応する、この舞台でしか味わえない体験が、きっとあなたの心を揺さぶるはず。愛と平和を奏でる奇跡的な一篇を、ぜひ劇場で体感してみてくださいね。