2022年の本邦初公演以降、ロングランを続けている舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。この名作を「観に行きたい!」と思う方も多いのではないでしょうか。本記事では、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』をより楽しむために、観劇前に押さえておきたい基礎知識や設定をご紹介します。(小説・映画の『ハリー・ポッター』シリーズのネタバレを含みます)

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』とは?

『ハリー・ポッター』シリーズは、イギリスの作家J.K.ローリングによるファンタジー小説です。ハリー・ポッターという少年を主人公に、魔法の世界を描いたこのシリーズは、世界中で大ヒットを記録しました。

小説・映画の最終作である『ハリー・ポッターと死の秘宝』では、のちに「ホグワーツの戦い」と呼ばれる大きな戦いが描かれます。

幼い頃、闇の魔法使い「ヴォルデモート卿」によって両親を殺害された主人公、ハリー・ポッター。彼はホグワーツの大広間でヴォルデモート卿と直接対決し、見事彼を打ち破りました。この戦いでは50人以上の死者が出たものの、ハリーがヴォルデモート卿を倒したことで、魔法界に平和が訪れたのです。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、そんな「ホグワーツの戦い」から19年後の世界を描いた作品です。2016年にロンドンで上演されると、たちまち多くの人々から賞賛を受け、イギリスのローレンス・オリヴィエ賞やアメリカのトニー賞など、数々の演劇賞を受賞しました。

日本では2022年の初演以降、総観客数120万人を突破したロングラン公演が続いています。厳しいオーディションを勝ち抜いたキャストたちが、それぞれに魅力的なキャラクターを演じ、観客を感動の渦に巻き込んでいます。

「19年後」のハリーたちと魔法界はどうなっている?

19年の時を経て、主要な登場人物たちはどのように暮らしているのでしょうか。

37歳になったハリー・ポッターは、魔法省に勤める「闇祓い」(「闇の魔術」に関連した犯罪を捜査する仕事)としてキャリアを積みました。劇中では魔法執行部の部長という高いポストに就任しています。

プライベートでは、ジニー・ポッター(旧姓:ウィーズリー)と結婚しています。ジニーは「日刊預言者」という新聞でスポーツ紙面を担当する記者です。そんなふたりの間には3人の子供たちがおり、ハリーは父親になっているのです。

そして、ハリーの親友であるロン・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーも、互いに結婚して温かい家庭を築いています。

劇中では、ロンは兄であるジョージ・ウィーズリーとともに「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」という「悪戯専門店(いたずらせんもんてん)」で働いていることがわかっています。子供たちに手品を見せるなど、陽気なおじさんとして好かれているようです。

一方、ハーマイオニーの方は、魔法大臣として活躍中です。魔法大臣とは魔法省の最高位の役職であり、マグル(人間)の世界でいう「総理大臣」に相当します。

ホグワーツ魔法学校時代、ハリーたちと常に対立していたドラコ・マルフォイは、アストリアという女性と結婚し、息子のスコーピウスを授かりました。

ドラコはかつて、ヴォルデモート卿の従者である「死喰い人」の一員でした。ヴォルデモート卿が倒された今、元「死喰い人」たちはさまざまな偏見やゴシップに苛まれていることが示唆されています。

作中は、一見平和な時代です。しかし、かつてヴォルデモート卿の仲間だった種族(トロールや狼人間たち)の不穏な動きも目立ち始めています。そして、ヴォルデモート卿の死後にはなかった、ハリーの「傷跡」が痛み始めたという不吉な前兆も……。

大人になり、仕事と子育てに奮闘するハリーたち。ホグワーツ魔法学校時代には見られなかった、彼らのリアルな葛藤に注目して観劇すると、より深い人間ドラマとして楽しめるかもしれません。

WOWOW

ハリーやロン、ハーマイオニーの子供たちは?

『ハリー・ポッターと呪いの子』には、ハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてドラコの子供たちが登場します。それぞれに個性的なキャラクターなので、彼らの存在を知っておくといいかもしれません。

ハリーとジニーの間には、3人の子供たちがいます。

長男のジェームズ、次男のアルバス、そして末っ子で唯一の女の子・リリーです。

ジェームズとリリーの名前は、亡きハリーの両親から、そしてアルバスの名前はアルバス・ダンブルドアから名付けられました。また、アルバスには「セブルス」というミドルネームもあります。こちらの名前は、人知れず少年時代のハリーを守り続けたセブルス・スネイプから名付けられているのです。

そして、ロンとハーマイオニーの夫婦には、ローズという娘と、ヒューゴーという息子がいます。このふたりはアルバスたちのいとこであり、ローズはアルバスと同級生です。

ドラコの息子・スコーピウスもまた、アルバスとローズと同じく、ホグワーツに入学したばかりの1年生です。ホグワーツに向かう汽車の中で出会ったアルバスとスコーピウスは、すっかり意気投合してしまいます。

親たちの立場を超え、ふたりがどのように友情を育んでいくのか。そして、どう成長していくのか。それが、この作品の大きな見どころです。

BIGLOBE WiMAX +5G

観なおしておくべき映画シリーズは?

『ハリー・ポッターと呪いの子』を観劇する前に、映画版『ハリー・ポッター』シリーズでぜひ観なおしてほしい作品があります。

それは、第4作目の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』です。今作のメインイベントとして、ホグワーツで行われる伝統行事「3大魔法学校対抗試合」が描かれています。年齢制限により、本来なら出場資格がないはずのハリーが、なぜか代表選手に選ばれてしまい、対抗試合の難関を突破していくという、手に汗握る展開が魅力的です。

この作品に登場するセドリック・ディゴリーという青年が、『ハリー・ポッターと呪いの子』でも重要な存在として登場するのです。

セドリックは、ハリーと同じく対抗試合の選手に選ばれたハッフルパフの6年生で、クィディッチ・チームでも優秀な選手として知られていました。

明るく優しい好青年であるセドリックは、対抗試合を通じてハリーとも友情を深めていきますが、映画の終盤に優勝カップを手にしたことで、ハリーと一緒にヴォルデモート卿の元へと連れていかれます。対抗試合の優勝カップは、ヴォルデモート卿によって「移動(ポート)キー」にすり替えられていたのです。そしてセドリックは邪魔者と見なされ、「死喰い人」に殺害されてしまったのでした。

この経験は、ハリーの心に大きな影を落とします。そして『ハリー・ポッターと呪いの子』では、セドリックの父であるエイモス・ディゴリーがハリーの元を訪れることにより、物語が大きく動き始めるのです。

このように、セドリックの死や彼の存在は、『ハリー・ポッターと呪いの子』においても重要なポイントとなっています。観劇前に映画を視聴しておくことで、より舞台の世界を楽しめるでしょう。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』はTBS赤坂ACTシアターにて上演中。公式HPはこちら

SHEIN
糸崎 舞

観客があっと驚くような演出やキャストの演技はもちろんのこと、脚本で描かれる「人間ドラマ」もこの作品の大きな魅力です!19年後のハリーたちがどんな立場で、どんな社会を生きているのか知っておくと、より深い鑑賞体験ができますね。