9月8日から東京建物 Brillia HALLにて開幕したミュージカル『コーラスライン』。ニコライ・フォスターさんが新演出を手がけ、アダム・クーパーさんがザック役を演じる新演出・新振付版は2021年にイギリスで幕を開け、大きな注目を集めました。そしてついに日本に来日。開幕を前に、ドレスリハーサルと囲み取材が行われました。
「21世紀というレンズを通して」新演出版を上演
囲み取材には演出家ザック役を務めるアダム・クーパーさん、本作の演出を務めるニコライ・フォスターさんが登壇しました。

新演出版を手がけるにあたり、ニコライ・フォスターさんは「21世紀というレンズを通してこの作品を見ていくことに着目しました。作品の中で見られるテーマ、セクシャリティであったり、演出家・役者の関係性、ヒエラルキーであったりをどう21世紀にフィットさせていくか。今のお客様にどう伝えるかということを大事にしながら作ってまいりました」と語ります。
アダム・クーパーさんは「面白みのある作品でありつつ、時代性という意味では少し遅れをとっているせいで、作品の良さが薄まっていると感じている中で、新演出のアイデアは凄く素敵だなと思いました。例えばシェイクスピアも色々な解釈をされていくように、良いミュージカルもどんどん新しい解釈をされていくべきだと感じましたので、凄く嬉しかったです」と新演出への期待を語りました。
一方で1975年以降、マイケル・ベネット氏の振付・演出で上演され続けた本作を手がけることには大きなプレッシャーもあったそうで、ニコライさんは「そもそもがとても良い作品なので、それに見合う新しい演出・振付を提供できるのかという不安はありました。フレッシュな目で見ていきたいと思いつつ、個人的にやはりマイケル・ベネットへの大きなリスペクトがあります。彼自身の歴史、ダンサーからブロードウェイの演出・振付家−単なる演出家・振付家ではなく、最も偉大といっても過言ではないところまで辿り着いた彼の作品と考えると、そこまで辿り着けるんだろうかということがいちばんの難題でした」と振り返りました。
また作中では“演出家”を演じるアダムさんについては「皆さんご存知の通り、本当に偉大な役者です。それだけでなく、美しい人間性を持った方です。自分自身のことをよくわかっていらっしゃるし、とても誠実で、そして想像力にあふれています。今回こうしてコラボレーションできて本当に光栄です。初めて拝見した時から憧れの存在でした」とリスペクトを込めて語ります。

アダムさんはニコライさんについて、「素敵な若手の演出家だと聞いていて、もしオファーが来たらご一緒したいと思っていました。ご一緒してみると、想像以上に素晴らしい演出家でした。コラボレーション精神に溢れていて、我々のアイデアをたくさん取り入れてくれて、今回ザックを舞台上に残すアイデアについても稽古中に一緒に探らせてもらいました。変化に対してオープンで、役者として凄く素敵な経験をさせていただいた。イギリスで今一番忙しい演出家ですし、世界でいちばん忙しい演出家と言っても過言ではないと思います。近年では『ビリー・エリオット』や『エビータ』の新演出も素晴らしく、既存の作品に新しい命を与える素晴らしい演出家だと思います」と絶賛しました。
アダム・クーパー始め、世界トップクラスのキャストが集結

ダンサーたちとの深夜の録音セッションから得た実際の証言を基に、マイケル・ベネットが製作した『コーラスライン』。舞台は1975年のニューヨーク市。新しいブロードウェイミュージカルのオーディションに挑む17人のパフォーマーと、演出家ザックの姿が描かれていきます。

何としても合格したい、という1人1人の想いがひしめく中、ザックは役を演じるのではなく、自身について語るように促します。そこで語られるのは家庭で感じた孤独やセクシャリティに関する悩み、そしてエンターテイメントに救われてきた日々。

新演出では、これまで天の声的に存在していた演出家ザックが舞台上に出現し、言い争ったり、悩んだり姿が見えることで人間味あふれるキャラクター像に。ザックはなぜ、ダンサーたちに自分自身のことを語らせたのか。そこから何を見たのか。ザックの視点でも楽しむことができる新演出です。

キャストには世界中で活躍するメンバーが集結しており、ウエストエンドで『四月は君の嘘』宮園かをり役を演じた小林美亜さん、『ミス・サイゴン』のジジ役で東京・ウエストエンド公演に出演した中野加奈子さんの姿も。

本作は、それぞれの想いをのせた楽曲たちが美しく絵画的に描かれていきます。バレエに魅了された人生を歌う「At the Ballet」や、ザックにもし踊れなくなったらどうするか問われ想いを語る「What I Did for Love」、最後に歌う「One」。名曲をたっぷりと英語詞で味わえるのも嬉しいポイント。

英語の台詞・歌詞を聞くと「Job」というキーワードが多く登場することに気が付きます。エンターテイメントという華やかな世界と、仕事を得て生きていかねばならないという現実。その両者が描かれるからこそ、最後の「One」が圧倒的に美しく感じるのかもしれません。

ミュージカル『コーラスライン』は2025年9月8日(月)から9月22日(月)まで東京建物 Brillia HALLで上演。9月27日(土)から9月28日(日)まで仙台サンプラザホール、10月2日(木)から10月6日(月)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演。10月10日(金)から10月19日(日)までシアターHにて東京凱旋公演が行われます。公式HPはこちら

最後に華やかな「One」を観て、「これが観たかったんだ!」となりました。圧巻のパフォーマンスをお見逃しなく!