ワタナベエンターテインメントによる「Diverse Theater」プロジェクトの第二弾として、“トー横”の問題を題材にした舞台『Too Young』が2025年9月に開幕します。

演劇プロジェクトの第二弾はトー横キッズを巡る物語

「Diverse Theater」とは、ワタナベエンターテインメントが演劇の可能性を拡げるために立ち上げた実験的プロジェクトです。「Diverse」が意味する「多様さ」をコンセプトに掲げ、個性豊かなクリエイターやプロデューサーとコラボレーション。既存概念に囚われない表現を探求し、新しい演劇を生み出すことに挑戦しています。

第一弾では、俳優であり脚本家・演出家でもあるノゾエ征爾さんを上演台本・演出に迎え、舞台『物理学者たち』を2021年9月に上演しました。

そして、第二弾の舞台『Too Young』を製作するにあたってコラボしたのが、劇団チョコレートケーキの古川健さんと日澤雄介さん。劇団では主に古川さんが劇作を、日澤さんが演出を担当しており、社会的な事象をモチーフにした人間ドラマに定評があります。2023年には“日本の戦争”に焦点を当てた2022年の連作舞台『生き残った子孫たちへ 戦争六篇』の成果が評価され、第30回読売演劇大賞の大賞を受賞しました。

劇団チョコレートには、第二次世界大戦をはじめ大逆事件やあさま山荘事件など、歴史上の出来事を題材に扱ってきた実績があります。

しかし今回、物語の舞台となるのは、一転して現代の新宿・歌舞伎町。近年、トー横と称される新宿東宝ビル付近に居場所のない少年少女が集まるようになり、深刻なトラブルや事件に巻き込まれる事例も少なくありません。そうしたなか、本作ではいわゆるトー横キッズの社会問題に焦点を当て、「生きる」とはどういうことなのかを観客一人ひとりに問いかけます。

<あらすじ>
若者たちがたむろし“界隈”を形成している新宿・歌舞伎町の一角、トー横。
ある時、トー横キッズの一人であった少女が雑居ビルの屋上から飛び降りた。しかしその死はすぐに過去の出来事になってしまう。
一方、しがない興信所の調査員である本郷のもとに奇妙な依頼が飛び込んできた。それは、「娘の生きた痕跡を辿って欲しい」という、死んだ少女の母親からの要望だった。戸惑いながらもトー横を訪れる本郷。調査の途上、その“界隈”の顔役であるジャックと関りを持つようになり、「死んだ少女が未だ歌舞伎町にいる」というおかしな噂も耳に入る。
本郷は調査を通し、トー横に居座る人間の心の内側に深く潜り込んでいくことになる。そして…

劇団チョコレートの劇作・演出コンビが参加!

『Too Young』の脚本を手掛ける古川さんは、2002年に劇団チョコレートケーキに入団。第2回公演以降の全作品に参加し、2009年の『a day』からは劇作も担当しています。2011年の『一九一一』で佐藤佐吉賞の優秀脚本賞を獲得したのを皮切りに、数々の賞を受賞。

2025年には劇団チョコレートケーキ公演の『白き山』『つきかげ』が第28回鶴屋南北戯曲賞に選ばれており、緻密な調査に基づいて人間模様を描き出す作風は高く評価されています。

一方で、演出担当の日澤さんは2000年に劇団チョコレートケーキを旗揚げ。2010年の『サウイフモノニ…』から現在に至るまで作品の演出を担い、2022年に『帰還不能点』で第29回読売演劇大賞の優秀演出家賞を受賞しました。飾らないストレートな演出によって人間らしさの宿るキャラクターを動かし、舞台上にリアリティのある世界観を立ち上げます。

7名のキャストが織り成すドラマに注目

本作にて調査員の本郷役で主演を務めるのは、数々の舞台作品で実力を発揮している俳優の宮崎秋人さんです。2022年に古川さん脚本、日澤さん演出の作品である『アルキメデスの大戦』に出演しており、その際に見せた演技力や佇まいで2人から期待と信頼を得ています。トー横の外から中へ、観客に近い視点で入り込んでいく人物をどう演じるのかが大きな見どころです。

またトー横の顔役であるジャックを演じるのは、2025年12月に映画「WIND BREAKER」の公開を控え、勢いに乗る綱啓永さん。男性キャスト6人による不条理劇で話題となった2024年の舞台『う蝕』での経験も糧に、キーパーソンとして物語を動かしていきます。

さらに、トー横で亡くなった少女の母親役に、朝海ひかるさんがキャスティング。元宝塚歌劇団の雪組トップスターで退団後は舞台を中心に活躍している朝海さんは、2022年の舞台『M. バタフライ』で日澤さんの演出を経験しています。娘に対する複雑な思いを演技で表現することで、観客にトー横の現実と向き合うきっかけを与えてくれるでしょう。

このほか、4名のキャストが登場します。

俳優の玉置孝匡さんは、2004年より倉持裕さん主宰の劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」に参加。舞台『天保十二年のシェイクスピア』や大河ドラマ『光る君へ』など、幅広いジャンルの作品にて脇をしっかり固める実力派です。

また、伊礼姫奈さんは4歳よりスタートした女優活動において、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」や映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」などさまざまな映像作品に出演してきたキャリアを武器に、本作で舞台デビューを果たします。

同じく舞台初挑戦となるのが、岡島遼太郎さん。ドラマ・映画・CMを中心に活動し、直近では2025年5月に公開された映画『か「」く「」し「」ご「」と「』に出演しました。

さらに、期待の次世代俳優として注目を集める大石愛陽さんも加わり、フレッシュなエネルギーで舞台を支えます。

舞台「Too Young」は、2025年11月13日(木)から24日(月・祝)まで東京の紀伊國屋書店新宿本店4Fにある紀伊國屋ホールにて上演されます。なお22日(土)の18:30公演終了後には、朝海ひかるさんらキャストによるアフタートークも開催予定。公演に関する詳細は、公式HPをご確認ください。

もこ

この作品には、「トー横」は決して別世界ではなく、どうしてそこに行き着く人たちがいるのかということを私たちこそがきちんと考えなければならないというメッセージが込められているように思います。