2026年1月8日(木)からSUPERNOVA KAWASAKIで上演されるミュージカル『白爪草』。2020年に全キャストVTuberで演じられた映画「白爪草」を原作に、屋比久知奈さん、唯月ふうかさんと実力派俳優2人を迎え、心理劇×スリラー×音楽が融合した新感覚の2人ミュージカルが誕生します。『レ・ミゼラブル』で共にエポニーヌ役を演じ、『屋根の上のヴァイオリン弾き』では姉妹役を演じるなど共演を重ね、親交も深いというお2人に本作への思いを伺いました。
“女性2人のミュージカルって良いじゃん!”という流れを作りたい

−原作映画を見て、また本作の脚本を読まれて、作品に対してどんな印象を持たれましたか。
屋比久「見た後に自分で色々と反芻して考えたくなるような作品だなというのが第一印象でした。これが2人ミュージカルになったらどうなるんだろうと純粋に興味が湧きましたし、ポップな台詞がありながらも、ピリッと張り詰めた空気感のまま物語が進んでいくので、この作品の空気をどう出していこうかと、今からドキドキしています」
唯月「双子の姉妹が、今どっちがどっちの状態なのか…凄く複雑な作品でした。しかも紅という役は今までに演じたことがない役柄なので、まず何から手をつけたら良いんだろうと、頭の中がハテナでいっぱいになったんです。でも、お客様に“なんだか凄く不気味だったね”と観終わった後に言ってもらえたら嬉しいなと想像して、凄く楽しみになりました」
−女性2人のミュージカル作品というのは日本では珍しいですよね。
屋比久「男性が主役の作品も多い中で、新作で、女性2人のミュージカルをやろうと思ってもらえたことが嬉しいです。だからこそ良いものを創りたいですし、“女性2人のミュージカルってめっちゃ良いじゃん!”という流れを作っていけたらと、勝手に気合いが凄く入っています!」
唯月「分かる!とても気合いが入りますし、オリジナルキャストとして選んでいただけたことがとても光栄だと思っています。私たち2人が“最強タッグ”だと思ってもらえるように、頑張りたいです」
−多くのミュージカルファンはそう思って期待感が高まっていると思います!
屋比久「そうだったら嬉しいですね。一緒にオリジナルミュージカルを創る相手がふうかで本当に良かったなと思いますし、2人で走っていけるという安心感があります。思いきり頼らせてもらいたいし、二人三脚で、そして他のスタッフの皆様と一緒に、頭を悩ませていきたいです」
唯月「私も同じ気持ちです。以前から仲良くさせてもらっているともちゃんだからこそ居心地も良いですし、最初に仲良くなる段階を飛ばして深く入っていくことができるので、お稽古が本当に楽しみです」
屋比久「最初の本読みとかワークショップって本当に緊張するよね。どんなにやっても毎回凄くドキドキするんです。でも今回は、ふうかの顔を見た瞬間に緊張がほぐれて、とにかく今できることをやったらふうかが応えてくれるからやってみよう、と思えました」
似た空気と“逆”に見えるイメージを活かした双子役に

−本作では双子を演じるお2人。今までも共演や交流のあるお2人が感じる共通点はありますか?
屋比久「育ってきた環境は沖縄と北海道と全く違う環境ではあるんですけれど(笑)、凄く似ている空気感というのを感じていて、だからこそ出会ってから打ち解けるまで早かったと思います。私の言っていることを分かってくれるという安心感があったので、そこを今回の役にも活かせるんじゃないかと思います」
唯月「流れる時間や、考えていることが凄く似ている気がします。例えば現場で何かが起こった時に、自分がどの役割で、どの立ち位置になれば良いんだろうと考えるところも似ているし。そういった部分を分かってくれているのは本当に心強いことですし、心が通じているなと分かるからこそ、安心して色々なことに取り組めると思うので、“私たち良いペアじゃん!”と勝手に思っています(笑)」
−演じる役柄についてもそれぞれ教えてください。
屋比久「私が演じる双子の妹・蒼はおとなしい性格なのですが、意外に独特の強さを持っている子だなと感じています。姉がいるからこそ、自分が良い子でいるということを意識してきたと思いますし、優等生で真面目で、みんなから脅威に思われないようにと、押し込めてきた部分もあるのかなと思います。私が今まで演じてきた役柄とは違うように思うので、内に秘めたエネルギーをどう表現していくのか、ふうかとやっていきながら見つけていきたいです」
唯月「逆に紅は虚勢を張っていて、ちょっと変な子ですね。でも内面は脆いように感じるので、そこが双子の正反対な部分だと思います。自分に自信がなく、憧れや妬みといった感情で作られているキャラクターで、自分の弱さや脆さを見せたくないが故に虚勢を張ってしまい、狂気的な行動に繋がっていくのだと思います。ともちゃんが演じる蒼とは逆の方向に作っていったら面白いのかなと思っています。私にとっても今まで演じたことのない役柄なので、今まで出会ったことのないキャラクターの人柄や考え方を知っていけるのも興味深いです」
屋比久「普段のイメージからすると、役が逆っぽいよね。私の方が年上なんですけれど、『屋根の上のヴァイオリン弾き』でも妹役でした。なんでだろう(笑)。でも逆っぽいからこそ、私たちが持っているものをお互いが活かして、面白いものを見せられるんじゃないかと思います」

−ヒグチアイさんが手がけられる音楽についてはいかがでしょうか。
屋比久「面白いし、難しい!凄く惹き込まれる音楽ですが、自分が歌うと思うと難しいです。ヒグチアイさんが作る世界観と、『白爪草』が持っている世界観が本当に合っていると思います。ポップス特有のリズムの取り方や歌い方と、ミュージカルとが掛け合わさることで、今まで皆さんが聴いてきたいわゆるミュージカルの楽曲とは違う空気感を持っているので、そこはきっと楽しんでいただけるんじゃないかと思います」
唯月「難しいです。他のミュージカル作品よりもお芝居としての歌という感じがするのですが、楽曲自体はポップスの美しい歌という感じもあるので、喋っているまま、いかに歌に違和感なく自然に入っていくかというのが課題になってくると思います。ヒグチアイさんの音楽が持つ悲しさや孤独さを表現していけたら良いなと思っています」
屋比久「翻訳ミュージカルだと音数を合わせるために情報量が少なくなってしまいがちですが、オリジナルミュージカルだからこそ、言葉数を多くできるという面白さを感じます。どこまで歌っぽくするべきか、語りっぽくした方が良いのか…バランスを見つけていくことも楽しみの1つであり、難しさの1つですね」
唯月「でも歌い上げる楽曲もあるので、ミュージカルらしさも感じていただけると思います」
−演出の元吉庸泰さんはどんな印象ですか。
屋比久「新作だからこそ、最初から固めすぎずに、私たちがやるから生まれてくるものを見てくださっているという印象があります。凄く話を聞いてくださるので、コミュニケーションを取りながら一緒に作品を創っていく空気を全体で作ってくださる方なんだなと感じました」
唯月「私も、演者と会話をしてくれて、私たちの思っていることを凄く取り入れようとしてくださる方だなと感じます。また元吉さんのお話がいつも端的で分かりやすいので、効率よくお稽古が進んでいくんだろうなと感じますし、時間を有効に使えるからこそ色々なことを密度濃く創っていけるのかなと思うので凄く楽しみです」
囲み舞台で2人の心をのぞく臨場感を
−これまでも共演され、共にミュージカル界でご活躍されてきたお2人。お互いの俳優としての印象はいかがですか?
屋比久「ふうかは本当にプロフェッショナルな人です。いつもニコニコ可愛いんですけれど、常に1本筋が通っていて、作品の中でどういう立場で、自分がどういう表現をしたいかというのを強く持っています。
でも固まりすぎていないから、演出家から言われたことも吸収できますし、周りとの空気感のバランスも見ることができるんだろうなと感じます。現場にいる時の人に対する向き合い方がとても素敵だなという印象がずっとあって、そこは結構真似させてもらっているところがあるんです。私は自分の世界に集中してしまうタイプなので、“それじゃいけないな、みんなで創っているんだな”と気づかせてもらいました。
また、役にはいつもふうかの個性が組み込まれていて、でもそれが押し付けがましくない。ふうかがその役をやる意味、この役をふうかがやっているからこその表現というのが常にどの役を見てもあるので、そこが素敵な俳優さんだなと思っています」
唯月「照れますね(笑)。私がともちゃんに伝えたいのは、客席から観た時に、上手いだけではなく、印象に残る人だなということです。それってやっている側からすると出したくても出せるものではないし、私がそこに行きたくてもなかなかたどり着くことができない。それをともちゃんはやっていて本当にかっこいいなと思いますし、憧れるところです。そういう人と一緒にお芝居をしたり、同じ作品に出られるというのは凄く刺激をもらえるし、感化されて自分も頑張る糧になるので、そういう力を持っている人だなと思います。場を支配する力やオーラを勉強させていただきたいです」
屋比久「いやあ、同じ言葉を返したいです。ふうかはいつもニコニコしているけれど、お芝居に入った時にグッと切り替わるのでその瞬間がかっこいいんです。
私は『レ・ミゼラブル』でご一緒した時にふうかにとても助けられ、たくさんのことを学ばせてもらいました。当時はどうしても同じ役をやっているキャストと自分を比べてしまって、誰かの真似をしようとしたり、悩んでしまう時期があったんです。
ふうかも悩んでいただろうし、私には分からない悩みや考えもあったと思うんですけれど、それでもふうかは凄くリスペクトを持って接してくれましたし、ふうかだけが持っている輝きで見せてくれたので、私が真似してもできるものではないし、比べるものではないのかもしれないと気づかせてもらいました。この経験は今でも大切にしていますし、印象に残っています」
唯月「そうなんだ。そう言ってもらえて嬉しいです!」

−最後に本作にかける意気込みとメッセージをお願いします。
屋比久「女性2人のミュージカルで、サイコスリラーという部分では観ている人たちが惑わされるような心理戦が繰り広げられる作品だと思います。オリジナル作品だからこそ試行錯誤する過程も楽しみながら創っていきたいと思いますし、セットや演出プランを聞いていて、劇場で体感してもらうのが一番の作品になるなと思うので、舞台ならでは、ミュージカルならではの空気を楽しみにしていただけたら嬉しいです」
唯月「蒼ちゃん視点で観るか、紅ちゃん視点で観るかによっても見え方が変わる作品になると思います。今日はどっちの視点で観ようかな?という楽しみ方もできると思いますし、囲み舞台で全方位にお客様がいらっしゃるので、私たちの頭の中や心の中をのぞいているような感覚になれると思います。私たちも全力でぶつかって、全力でこの作品をお届けするので、ぜひ皆さんにも全力で受け取ってもらえたらなと思いますし、楽しんでいただけたら幸せです」
新作ミュージカル『白爪草』は2026年1月8日(木)から1月22日(木)までSUPERNOVA KAWASAKIにて上演。公式HPはこちら
とっても仲良しなお2人ですが、互いにリスペクトし合い、プロフェッショナルな姿を感じられるインタビューとなりました。超実力派のお2人の歌声を存分に浴びれる機会になると思うので、とっても楽しみです!


















