3ヶ月連続で3作品を上演する企画『conSept2026:シーズンReBORN』の第1弾として、ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち 2026』が2026年2月に上演されます。初演から4年を経てブラッシュアップされ、新しいバージョンで展開する物語に注目です。
“君にはどんな世界が見えてるの?”ニューヨークでも反響を呼んだ物語
『SERI〜ひとつのいのち』は、舞台や映像コンテンツの企画プロデュースに携わるconSeptが『いつか~one fine day』『GREY』に続いて制作したオリジナルミュージカル。
原作は倉本美香さんの著書『未完の贈り物』で、目も鼻もない状態で生まれた娘の千璃(せり)さんと異国の地で奮闘した8年間が綴られています。この手記をミュージカル化するにあたり、物語の視点を母である美香さんから娘・千璃さんへと切り替えました。千璃さんが感じたであろう喜怒哀楽を想像し、両親との言葉を介さない対話を演劇と音楽の力で表現しようと試みたのです。
多様性から生じるさまざまな「違い」の中にも、誰にとっても「同じ」と思えるものがあるのではないか。暗闇でこそ輝く光を探してひとつのいのちと向き合った本作は、2022年に初演されると大きな反響を呼びました。続く2023年にはニューヨークで上映会が開かれ、200人の現地観客から「いつかブロードウェイでも上演して欲しい」との声が寄せられるほど好評を得ました。
そして今回、脚本と音楽の一部を改訂し、2026年版としてミュージカル『SERI〜ひとつのいのち 2026』が再び上演されます。
<あらすじ>
ニューヨークで暮らす美香と丈晴は子供を授かった。千璃と名付けられた女の子。初めての子供に未来への希望と夢に膨らむ二人だったが生まれた子供には両眼ともに眼球がなく、知的障害も抱えていた。絶望し途方にくれる夫婦。特に母である美香は自身を責め、周りの目を気にし、そして意思疎通がままならない我が娘に困惑し疲弊していく。ある日、思い詰めた美香はマンションの屋上から千璃とともに身を投げようとするが、そのとき屋上から見下ろしたマンハッタンのある情景を耳にした千璃が笑う。初めて目にした娘の笑顔に触れ、“この子と生きていこう”と強く誓う美香。しかし、その決心の先には終わりが見えない千璃の手術、夫婦のすれ違い、周囲の非難、法廷闘争・・・など想像を絶する難題が幾重にも待ち受けていた。
高橋亜子×桑原まこ×下司尚実、3人のクリエイターが再集結
ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち 2026』では、初演と同じ3人のクリエイターがコラボし、愛と祝福の物語を再び紡ぎ出します。
脚本・作詞を手掛ける高橋亜子さんは、もともとミュージカル劇団フォーリーズの俳優からキャリアをスタート。在籍中にスタッフに転向してオリジナル脚本を書き始め、その後はフリーランスで活動しています。訳詞家としては、2026年3月より開幕する人気ミュージカル『メリー・ポピンズ』をはじめ『ジャージー・ボーイズ』『ビリー・エリオット』といった有名な作品を担当。2021年にBROADWAY MUSICAL『GLORY DAYS グローリー・デイズ』とミュージカル『ダブル・トラブル』で第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞を、2024年にMusical Awards TOKYOにてミュージカル『tick, tick…BOOM!』『カム フロム アウェイ』で翻訳賞を受賞しました。また、近年は2023年のミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』や2024年のミュージカル『You Know Me ~あなたとの旅~』など、オリジナル作品における脚本・作詞にも注力。2026年3月に上演されるミュージカル『スキップとローファー』でも脚本・作詞に携わり、注目を集めています。
観客はもちろん、目の見えない千璃にも届くようにと音楽を作曲および監督するのは、作編曲家であり指揮者・演奏家でもある桑原まこさんです。映画やアニメ、舞台などジャンルを問わず音楽に携わり、conSeptのオリジナルミュージカル『いつか〜one fine day』の作曲・演奏により第27回読売演劇大賞上半期スタッフ賞に選出されました。
そして、物語に寄り添う自然な身体表現に定評のある振付家・演出家・ダンサーの下司尚実さんが演出・振付を担います。自由形ユニット「泥棒対策ライト」を主宰する一方、劇団イキウメの『人魂を届けに』やconSeptの『いつか〜one fine day』など数々の作品に振付・ステージングとして参加。さらに、2020年の東京パラリンピック閉会式ではAFTER THE GAMESパートを担当しました。実は『SERI〜ひとつのいのち』がミュージカルの演出に初挑戦した作品だといい、2026年版では表現の方法にどんな進化が見られるのか楽しみです。
山口乃々華ら続投キャストと新たなメンバーで贈るストーリー
主人公の千璃役は、初演から引き続き山口乃々華さんが務めます。ダンス&ボーカルグループ「E-girls」のパフォーマーとして活動していた山口さんは2021年より本格的に俳優業を開始し、2022年のミュージカル『SERI~ひとつのいのち』で初主演を果たしました。その後も舞台やミュージカル、朗読劇など多岐にわたって出演しています。本作では目が見えず話すこともできないという難しい役柄に体当たりで挑み、千璃が感じている世界を表現します。
母親の美香役には、韓国のミュージカル俳優であるジェイミンさんがキャスティング。韓国内では優れた歌唱力で高く評価され、『ジーザス・クライスト=スーパースター』のマリア役や『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』のイツァーク役などで知られています。日本のミュージカル作品に参加するのも母親を演じるのも初めてながら、本作にかける熱意を糧に、言葉の壁を越えて伝えられるものがあると体現してくれるでしょう。
父親の丈晴役を演じるのは、俳優だけでなく声優やシンガーソングライターの顔も持つ坂田隆一郎さん。父親の役はこれまで経験していないからこそ、初めて子どもを授かる丈晴に共鳴しながら夫婦や親子の複雑な関係と向き合います。
そして、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん主宰の劇団「ナイロン100℃」に所属する廣川三憲さんが、美香と対立する産婦人科医のオオヤマ役で続投します。廣川さんは『Don’t freak out』をはじめ劇団公演に出演する一方、ゾノノキカクの『Crash』や鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』など、多彩なジャンルの外部公演に参加。今回の脚本ではオオヤマの人物像がより掘り下げられており、彼の言動に込められた思いも想像してみてほしいポイントです。
同じく初演から続投するのが、オオヤマの弁護士であるジョーンズ役の小林タカ鹿さん。1997年より「ナイロン100℃」に参加して以降すべての作品に出演し、2000年の退団後は劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」へ。シリアスからコメディまで柔軟にこなす演技力を活かし、ストーリー展開を支えます。
また、美香からオオヤマの告訴について相談される弁護士のミラー役で岡村さやかさんが登場。2007年の『レ・ミゼラブル』で初舞台を踏んでから現在に至るまで、芯の強い演技を持ち味として活躍しています。
このほか、オーディションを通じてカンパニーに加わる新メンバーは以下の4名です。
オオヤマと美香に事情聴取を行う書記官役には、金子大介さん。2017年の『レ・ミゼラブル』や2018年の『マタ・ハリ』、2020年の『デスノート THE MUSICAL』などミュージカルを中心に活動しています。
千璃に整形手術を進める形成外科医役の今森愛夏さんは、吉本興業がプロデュースする少女歌劇団ミモザーヌの1期生でした。卒業後は舞台だけでなくドラマやMVなど映像分野にも挑戦しています。
オオヤマと美香の示談交渉を仲介するメディエーター(仲介者)役は、東京藝術大学音楽学部声楽科出身で、海外発の作品から日本オリジナルまで幅広いジャンルのミュージカルに出演している尾川詩帆さん。
千璃が通う特殊学校の先生役である加賀谷真聡さんは、東宝ミュージカル『王様と私』で子役としてデビュー後、『ビリー・エリオット』『SPY×FAMILY』などのミュージカル作品に出演し、実績を重ねてきました。今後は2026年5月に上演予定のミュージカル『最強のふたり』でもキャストに名を連ねています。
ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち 2026』は2026年2月19日(木)から3月1日(日)まで、東京都のあうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)にて上演されます。公演に関する詳細は公式HPをご確認ください。
今回の上演を"2026年版”と位置づけ、難しいテーマに対してキャスト・スタッフが真正面から取り組んでいる姿勢に筆者は感銘を受けました。演劇だからできる表現、伝えられるメッセージがあると改めて信じたくなります。


















