7月15日に、東京芸術劇場シアターイーストにて幕を開ける『スローターハウス』。2016年に起きた障がい者施設での殺人事件にショックを受けたという、劇作家・演出家の詩森ろばさんによる書き下ろしの新作戯曲です。
演劇ユニット serial number
serial numberは劇作家・演出家の詩森ろばさんと俳優の田島亮さんからなる演劇ユニットです。座付作家の詩森さんの脚本による創作劇や既成戯曲の上演を行っており、すべての演出も詩森さんが担っています。現代とリンクするテーマを、綿密な取材で骨太なドラマに変換した作劇が魅力です。
詩森さんは、2013年に『国語の時間』の演出で読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。2016年には、『残花』『insider』で紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。2018年、『アトムが来た日』で岸田國士戯曲賞最終候補に残りました。また、2020年に映画『新聞記者』の脚本で、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞しています。
障害者を殺した青年と子どもを殺された母との葛藤の対話劇『スローターハウス』
詩森ろばさんの新作『スローターハウス』は、日本中を震撼させた、2016年に神奈川で起きた障がい者施設での殺人事件をモデルとした物語。この事件は、長い間、知的障がいのある子どもたちのボランティアをやっていたという詩森さんに多大なショックを与えました。
詩森さんは「言葉を持たない子どもたちは、ノンバーバルなコミュニケーションがこの世にあり、それはとても難しく、でも大切で愛しいものだということを教えてくれた」と言います。
そして、「同時に彼らに対しての社会の無理解も我がこととして知りました。だからこそ、やまゆり園での事件はほんとうにショックで、その後、導かれるようにして現地にも足を運びました。わたしにとって向き合うべき問題と向き合う時間がようやく始まります。“逃げない”それしかできることはありません。大切に作りたいと思っています」とコメントしています。
『スローターハウス』は、障がい者施設で障害者を殺した青年と、障がい児を殺された母との葛藤を対話劇として描いた意欲作。
過酷な環境の中で育った少年は、障がい者をこの世に必要ないものという考えを持ち、殺人という許されざる犯罪を犯します。犯行当時未成年だった青年は、現在は20代後半。刑務所を出て、孤独に暮らしています。そこに、かつて彼が殺した障がいを持つ子供の母親が訪ねてきて…。
主役の青年役には、『hedge1-2-3』で詩森さんとタッグを組み、高い評価を受けた原嘉孝さん。
高い演技力でミュージカル『Endless SHOCK』や、舞台『ダディ』『罠』『家政夫のミタゾノ THE STAGE 〜お寺座の怪人〜』などミュージカルからストレートプレイまで多くの舞台に出演しています。
彼と対峙する母親役に、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞している那須佐代子さん。近年の出演作品に、舞台『ザ・ウェルキン』『レオポルトシュタット』、『エンジェルス・イン・アメリカ』などがあります。
語り手の施設職員に、椿組野外劇『GS近松商店』や、イキウメ『狂想のユニオン』などに出演している、モダンスイマーズの津村知与支さん。そして殺された息子役を演劇企画集団THE・ガジラの作品などに出演している新垣亘平さんが演じます。
serial number09『スローターハウス』は、7月15日(土)〜7月23日(日)に東京芸術劇場シアターイーストにて上演です。公式HPはこちら。
あの事件からもう約7年の月日が経とうとしています。考え続けなくてはいけない社会問題と向き合うことが出来るのが演劇がある意味の1つだと思います。