「ミュージカルは突然歌いだすから苦手」…そんなことを思ったことはありますか?実はミュージカルは突然歌いだしているわけではないのです!今回はミュージカルの「歌い出し」についての解説をした上で、苦手な人向けの作品をご紹介します。
01 物語中に突然歌いだす「違和感」の理由とは?
ミュージカルが苦手と感じてしまう方。おそらく、「台詞の後に突然歌いだすと妙に変だ」など“物語中に突然歌いだす”ことに”違和感”を感じてしまうのではないでしょうか。同じく劇中に歌が登場するオペラには、突然歌いだすという印象はあまりないかと思います。これは、台詞を含め全て歌で表現される音楽形式だからです。反対にミュージカルは、歌・台詞・踊りなどを組み合わせた演劇形式。そのため、ミュージカルは”突然歌いだす”と感じるのかもしれません。
02 実は突然歌いだしてはいない!「感情」の高まりが歌に繋がる
ですが、予兆もなしに突然歌いだしている訳ではありません。ミュージカル俳優の中井智彦さんはこのように語られています。「ミュージカルだから歌う、踊るではなく、喜び、愛、孤独、悲しみなどの感情が高まり、表現者のイマジネーションが放出されたなかで歌われる歌や踊りは、心をわし掴みにされてグリグリと動かされる感覚になります。」
つまり、ミュージカルにおける歌は、登場人物の感情を観客へ伝える重要な役割を担っているのです。
ミュージカル俳優であり近年はドラマ等でも活躍されている山崎育三郎さんは、なぜ急に歌いだしたのかと思わせないよう、芝居から歌に導入していく部分を繊細に演じていると話されています。台詞から徐々に感情が高まり、自然と歌に移行されていく様子はまさにプロの成せる業です。
03 ミュージカルが苦手な方は「オペラ形式」のものがオススメ
それでも急に歌われるのは苦手…という方。台詞より歌の割合が比較的多い「オペラ形式(タイプ)」と呼ばれる演目はいかがでしょうか?代表例として『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』などの著名な演目もあるため、ここから入ると新たな発見があるかもしれません!(因みに「オペラ形式」は、小さなオペラと訳される「オペレッタ」に分類される場合もあります)
今年12月末には、ミュージカルの名作『ウエスト・サイド・ストーリー』が、スティーヴン・スピルバーグ監督によりリメイクされ公開になります!この作品も歌の比率が高く有名な楽曲が多く使用されていますので、ぜひ入門編として(少し先ですが)触れてみてはいかがでしょうか?
※参考
宮本直美『ミュージカルによる戯曲の解釈と表現 : 『老貴婦人の訪問Der Besuch der alten Dame』における音楽構造』『立命館文學 = The journal of cultural sciences / 立命館大学人文学会 編』 (2018, 655, p465-454)
榎本太麻子『オペラとミュージカルの違いを教えてください』(日本子ども支援学会, 2018)
『別所哲也が泣きながら観客に謝罪 ミュージカル『レ・ミゼラブル』でみせた「俳優力」』(J-WAVE NEWS, 2019.05.09)
『山崎育三郎先生のこれを見たら行きたくなる!ミュージカル講座』(日本テレビ 世界一受けたい授業, 2020.08.29)