ミュージカル界のレジェンド・市村正親さんと俳優の大竹しのぶさんのコンビで幾度となく上演されてきたミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』。同コンビ4度目の上演となった2016年から8年の時を経て、2024年3月に帰ってきます。
最悪にして最恐のソンドハイム代表作
舞台は18世紀末のロンドン・フリート街。寂れたパイ屋の2階で理髪店を営むスウィーニー・トッドは、ある決意の元に「剃刀」を握っていました。「スウィーニー・トッド」というのは偽名で、トッドは15年前、「ベンジャミン・バーカー」という名で妻と娘と仲むつまじく暮らしていました。しかしある日、妻に思いを抱く判事のターピンによって無実の罪を着せられ、流刑になってしまいます。
その後長い年月を経て監獄を脱したバーカーは、水夫のアンソニーに助けられ15年ぶりに理髪店を営んでいた場所を訪れます。するとそこは昔なじみのミセス・ラヴェットが営むパイ屋に変わっていました。バーカーはラヴェットからターピンによって妻が死に、娘が軟禁されていると聞き、激怒。「スウィーニー・トッド」と名を変え、パイ屋の2階で理髪店を再開すると、ラヴェットとともにターピンへの復讐を計画しはじめます。
ミュージカル『スウィーニー・トッド』は、数々の名作を手がけてきたスティーヴン・ソンドハイムの代表作の1つ。1979年3月に初演が上演され、その年のトニー賞では8部門を受賞しました。
日本初演は1981年。松本白鸚(上演時は市川染五郎)さんと鳳蘭さんがトッドとラヴェットを演じました。その後、2007年に宮本亞門さん演出、市村さんと大竹さんがトッドとラヴェットを演じるバージョンが上演。以降そのバージョンで上演が重ねられ、今回5度目の上演となります。キャストは一部を除いて、2007年からほぼ変わらずに上演が続けられています。
今作で初のWキャスト制導入 山崎大輝、上原理生らが初出演
復讐に燃え、殺人鬼と化すスウィーニー・トッドと、その手助けを行いながらもトッドに思いを寄せるミセス・ラヴェットは市村さん、大竹さんが続投します。
トッドの前に現われては意味不明なことを口走る乞食女役は、数々のミュージカル作品で鮮烈な印象を残すマルシアさん。
監獄を抜け出したトッドを救い、フリート街へと送り届けた若い水夫・アンソニーを山崎大輝さんと糸川耀士郎さん、トッドの娘でターピンに軟禁されながらも、窓辺で出会ったアンソニーと恋に落ちるジョアンナを唯月ふうかさん、熊谷彩春さんがWキャストで演じます。唯月さんは前回公演からの続投、そのほかの方々は今回が初出演となります。
諸悪の根源ともいえる悪徳検事のターピンを演じるのは、今回が4度目の出演となる安崎求さんと、同作は初出演となる重厚感のあるお芝居と圧倒的な歌唱力をほこる上原理生さん。
ほかにも、ターピンの腰巾着的存在の役人・ビードルをミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』での名演が話題になったお笑い芸人のこがけんさんが演じ、あることをきっかけにラヴェットに引き取られる孤児・トバイアスを2007年版から出演している武田真治さん、同作初出演となる個性的で強烈な印象が持ち味の加藤諒さんがWキャストで演じます。
ミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は、3月9日から30日まで、東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて上演予定。その後ツアー公演として、4月12日〜14日には東京エレクトロンホール宮城にて仙台公演、19日〜21日にはウェスタ川越 大ホールにて埼玉公演、27日〜29日には梅田芸術劇場メインホールにて大阪公演が予定されています。チケットの詳細はこちら。
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は、個人的に日本で上演されるミュージカル作品の中でもレジェンド的な立ち位置にいると思っている作品です。 最悪で最恐の復讐劇を描いた本作ですが、トッドの家族に対しての愛、ラヴェットがトッドに向ける愛、アンソニーとジョアンナの間に生まれる愛などさまざまな「愛」を描いた作品でもあります。愛と復讐にまみれたトッドたちが迎える衝撃の結末は必見です。