1996年にブロードウェイで幕を開けた名作ミュージカル『RENT』。ピュリツァー賞やトニー賞などに輝いた、ロック・ミュージカルの金字塔です。ブロードウェイでは12年にわたってロングラン上演を行い、計5124公演を記録。日本では1998年に初めて日本語上演版が行われて以降、来日公演も幾度となく開催されてきました。そして、2024年夏、初の日米合同のキャストで上演される『RENT』が誕生します。そこで今回は、『RENT』のあらすじや楽曲、キャストの魅力をご紹介していきます。
若者たちの生きる姿を笑いあり涙ありで讃える
『RENT』の舞台は、 20世紀末のニューヨーク、イースト・ヴィレッジ。
荒廃したアパートで暮らし、家賃(レント)も払えず貧しい生活を送るマークとロジャー。映像作家を目指すマークは、女性弁護士ジョアンと付き合い始めた元恋人のパフォーミング・アーティスト、モーリーンに今も振り回されている様子……。
一方、シンガーソングライターを目指すロジャーは、曲が書けず悶々とした日々を過ごしていたところ、ナイトクラブダンサーのミミと出会い、互いに愛し合うものの、心はすれ違います。
また、ストリートドラマーのエンジェルと、ロジャーの元ルームメイトであるコリンズは、共にHIVポジティブでしたが、永遠の別れを迎えることに。
するとある日、行方不明になっていたミミが手遅れの状態で発見されます。そんな中、真っ直ぐな気持ちでミミに向き合うロジャーが、やっと書き上げたラブソングを捧げると……。
ここまでのあらすじを読むと、「すごく重たいストーリーなのでは……?」と思われるかもしれません。しかし、実際には、イースト・ヴィレッジの若者コミュニティを笑いあり涙ありで讃えた内容となっているため、彼らの生き様から、明日への勇気や希望を得られること間違いなしです。
ジョナサン・ラーソンが残した名曲の数々を愛でる
『RENT』の作詞・作曲・脚本は全て、7年の歳月をかけて、ジョナサン・ラーソンによって手掛けられました。しかし、彼は1996年、オフ・ブロードウェイプレビュー公演初日の前夜、大動脈解離により、35 歳の若さでこの世を去ってしまいました。
彼の全身全霊の叫びを詰め込んだ『RENT』は、名曲の宝庫としても知られています。
中でも代表曲といえば『Seasons of Love』。冒頭の”Five hundred twenty-five thousand six hundred minutes”から、曲の世界観にぐんと引き込まれます。「52万5600分。あなたは1年をどう数える?」という内容の短い曲ですが、この曲抜きに『RENT』は語れないでしょう。
また『Another Day』も人気のある曲です。”No day but today”「今日という日は今日しかない」というワンフレーズが特徴的で、とにかく毎日もがきながら生きるしかない若者たちの姿を浮かび上がらせています。ちなみに個人的には、”Forget regret or life is yours to miss”「悲嘆するのは止めて、人生が逃げて行ってしまうから」という歌詞が大好きです。
世界中の人々を魅了し続ける、ジョナサン・ラーソンの想いが詰まったメッセージと名曲の数々。ぜひ劇場に足を運び、五感全てで受け取ってみてください。
26年ぶりに山本耕史ver.マークが帰ってくる!
今回の日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』では、主人公のマークを山本耕史さんが演じます。山本さんは1998年、同作品の初の日本語上演版でもマークを演じました。「いつかまたRENTのステージに立ちたい」と強く願い続けてきたそうで、26年の時を経て、ついにその瞬間がやってきます!
山本さんにとって『RENT』は原点となった作品だそう。初めてマークとしてスポットライトを浴びた瞬間、役者として、これまでに感じたことのない何かが弾ける感覚に衝撃を受けたと言います。日本語版で山本さん演じるマークを見たアメリカのプロデューサーからは、「本場ブロードウェイでの『RENT』出演に挑戦してみたら?」と助言を受け、アメリカでレッスンを受けたこともあったとか。
その後、ジョナサン・ラーソンの人生を描いたミュージカル『tick, tick…BOOM!』で主演・演出を務めたことで、より一層『RENT』への思いは高まります。そしてこの夏、日米合作『RENT』の上演が決定し、山本さんはマーク役をオファーされたのでした。
また、ロジャー役は、最近ブロードウェイで『ディア・エヴァン・ハンセン』に出演したアレックス・ボニエロさんが演じます。モーリーン役はCrystal Kay(クリスタル ケイ)さん、エンジェル役にはジョーダン・ドブソンさん、ジョアン役にはミュージカル『SIX』ブロードウェイ公演ほかブロードウェイで活躍するナシア・トーマスさんなど、実力あるキャストが勢揃いする予定です。
⻑年、願い続けてきた作品に再び挑戦する山本さん。彼の新たな出発点にもなり得るステージを、ぜひ一緒に見届けませんか?
日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』は、2024年8月21日(水)~9月8日(日)まで渋谷の東急シアターオーブで、9月11日(水)~15日(日)まで大阪のSkyシアターMBSで上演される予定です。なお、本公演は全編英語での上演となります。詳しくは公式HPをご覧ください。
私が初めて『RENT』に触れたのは大学3年生の頃。大学の課題として2006年公開の映画版を観たのですが、そのメッセージ性と曲の素晴らしさに圧倒され、忘れられぬ作品となりました。そんな思い出の作品が、日本で、しかも日米合同キャストで観られるなんて!観劇するのが今から楽しみです。