7月6日より淡路島の劇場・波乗亭にて絶賛上演中のミュージカル『福来たる〜淡路ゑびす座狂詩曲(らぷそでぃ)〜』。笑いあり涙あり、アクロバットや客席との絡みもある盛りだくさんの内容で、夏の思い出におすすめの作品です。観れば観るほどクセになる今作について、7月12日と13日に観劇した筆者がレポートをお届けします!(*ネタバレ注意)

福を呼び込んだ主人公・夏男と芝居小屋「ゑびす座」の人々

舞台となるのは戦後数年経った淡路島。満州生まれの主人公・戎夏男(えびすなつお)は、遠い親戚にあたる森小夜のいる淡路島を訪れ人生をやり直そうとしていました。そんな時に偶然出会った売れない芝居小屋「ゑびす座」の座長、浜田虎次郎。彼が開演前に怪我をしたことにより、急遽夏男が主役のえびす様を演じることになります。存続の危機だったゑびす座は、不思議なことに夏男が来てから大繁盛!戎夏男…もしや彼は本当のえびすサマー?

芝居の経験がない夏男に主役を演じさせる虎次郎の無茶ぶりと、とぼけた表情で素人感丸出しの夏男のグダグダぶり。2人のやり取りと夏男の絶妙な表情はコントのようで序盤から笑いが止まりません。さらに夏男は苦手なお酒を飲んだことにより暴走、劇団員と共に歌って踊り出すというザ・コメディな展開へ。これがゑびす座のお客様にウケて大盛況となります。息の合ったダンスと客席から沸き起こる手拍子に、心の底からウキウキさせられる作品。波乗亭の客席がゑびす座の芝居小屋になったかのような感覚になるのも今作の魅力ではないでしょうか。

何も構えずに観てもわかりやすく、とにかく笑えるストーリー。家族を思って涙を誘う場面もあり、自分の故郷や人との出会い、好きなことへの情熱についても深く考えさせられます。

青海波の公式HP、波乗亭の公式X、Instagramでは『福来たる』に関するコラムが多数掲載されています。特にInstagramでは出演者の稽古中や舞台裏の動画も楽しめますので是非合わせてご覧ください。(https://awaji-seikaiha.com/news_cat/naminoritei

実力派キャストの歌声に酔いしれる!台本・演出を手がけるのは宝塚歌劇団出身の謝珠栄

ミュージカル『福来たる〜淡路ゑびす座狂詩曲〜』にて主人公の戎夏男を演じるのは坂元健児さん。劇団四季のミュージカル『ライオン・キング』で初代シンバを演じた頃から、圧巻の声量とパフォーマンスでファンを魅了し、ミュージカル『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』を始め現在も数々の作品に出演しています。

ゑびす座の座長・浜田虎次郎を演じるのは、坂元さんと同じく劇団四季出身で現在は一茶企画の副代表を務める近藤真行さん。近藤さんは2023年12月に波乗亭で上演され2024年4月~5月に再演されたミュージカル『Mr. American Melody』にも出演。12月からは帝国劇場にて上演のミュージカル『レ・ミゼラブル』にも出演が決まっています。

そして虎次郎の兄でグレてしまった浜田シゲルを演じるのは柳瀬亮輔さん。日本のオリジナルミュージカル作品の出演にこだわり音楽座、わらび座、坊っちゃん劇場、劇団四季などでメインキャストとして出演、現在はフリーで活動しています。2023年7月~8月に波乗亭で上演のミュージカル『淡路の月に誓う』に坂元さんと共に出演していました。

他にもストーリーの鍵となり、今作のステージを華やかに彩る劇団員として淡路島で活躍する魅力的なキャストの方々が出演されています。

今作の演出・ミュージカル台本を担当したのは、宝塚歌劇団に首席で入団し男役として活躍した謝珠栄さん。退団後はニューヨークに留学、帰国後には振り付け・演出家として現在まで多くの舞台作品を手がけており、菊田一夫演劇賞や読売演劇大賞を始めとする数々の賞を受賞しています。

人生の再スタート地に淡路島を選び、ゑびす座の人々の力になろうと情熱を注ぐ夏男。芝居が大好きで、周りの芝居小屋が映画館へと変わっていく中、どうにかゑびす座を続けられないかと悩む虎次郎。人と群れたがらないが寂しがり屋で不器用、確執がある弟の虎次郎に「芝居小屋をやめて映画館に変えろ」と訴えるシゲル。どのキャラクターも人間味に溢れて愛おしく感じられました。3人それぞれのソロ曲もあり、笑いを誘う場面で心がふっと緩んでいるところからの、歌唱シーンでの圧巻の歌声に一気に心が引き込まれます。

キャストとのコミュニケーションを感じられるアットホームな劇場・波乗亭

ミュージカル『福来たる』が上演されている青海波の波乗亭は、客席数191席の小さな劇場。最前列はステージに手が届きそうな距離で、あまりの近さに筆者は慣れるまで恥ずかしさがありました。今作で主演の夏男を演じる坂元さんは特にダンスシーンが多く、アクロバットやジャグリングを披露する場面も。目の前で繰り広げられるパフォーマンスと直に伝わる緊張感は、とても貴重な体験でした。

距離が近い分アットホームな雰囲気があり、ステージ上の役者とのコミュニケーションを感じられるのも魅力です。劇中で玉葱売りに扮した坂元さんが微妙に絡んできたり、カーテンコールではキャストの方々に振り付けを教わってうちわを使って踊ったりと楽しめるポイントがたくさん。さらにWカーテンコールは撮影OK!キャストの方々は歌いながら客席のいろんなところに目を配り、頷いたりうちわで指を差したりとファンサービス満点。まさに福をたくさんもらって、最高な夏の思い出となるのではないでしょうか。

キャストが売り子に!?開演前から盛り上がるうちわ購入タイム

ミュージカル『福来たる』の名物になっているのはカーテンコールだけではありません。開演前のうちわ購入タイムも好評です。今作のカーテンコールで必須の公式うちわを、開演前に孝役のWキャストの一人である堂元春近さん(本編には8/4~8/25出演)が売り子となって、客席内で販売。うちわが売れるたびに、堂元さんの「一本お買い上げいただきましたー!」の声が響き、客席からは大きな拍手が起こります。

うちわは一本100円とリーズナブル。リピーターの観客を覚えている堂元さんが、「こちらのお客さまは今日で4本目です!」といじる場面があったり、堂元さんが最初の説明を終える前にあえて観客が挙手して突っ込まれたりと、掛け合いが楽しくてつい公演のたびに購入してしまいます。筆者は2公演観劇してどちらも購入。もしまた観に行けるなら追加で購入してしまうことでしょう。

これから観劇に行かれる方は、是非開演前の客席で売り子販売の方からうちわを購入してみてくださいね。(売り子担当のキャストは、7/31現在の情報です)

観劇前後のお食事に!古酒の舎×福来たるのコラボメニュー

観劇前後のお食事は、波乗亭から徒歩20秒ほどの場所にある青海波『古酒の舎』がおすすめ。こちらではミュージカル『福来たる』とのコラボメニューが提供されています。筆者が注文したのは「虎次郎の訓練めし 塩豚の柔らかデミグラ丼」。美味しい温野菜、鶏ガラスープと香味野菜で煮込んだ箸で切れるほど柔らかい塩豚、デミグラソースが絡んだご飯は口の中が幸せになります。

2階のバーカウンター席からは美しい海を眺められ、リゾート気分が味わえる癒しの空間です。筆者はここでのお食事が今まで食べた料理の中で一番美味しいのではと感じたほどでした。是非観劇と合わせて、淡路島の海とコラボメニューを楽しんでみてください。

ミュージカル『福来たる〜淡路ゑびす座狂詩曲〜』は8月25日まで淡路島の波乗亭にて上演。基本は毎週金曜〜月曜のみの上演ですが、8月第3週のお盆期間は毎日上演!全て14時開演となっています。公演日、出演者、ワークショップやアフタートークなどイベントについての詳細は公式サイトをご覧ください。

かずちぃ

筆者は今作の観劇後、まるで福をもらったかのように楽しい出来事が続きました。公演は8月25日まで上演なのでまだ間に合います!是非お友達やご家族を誘ってゑびす座の方々に会いに行ってみてください。劇団員のキャストの中に推しを見つけるのも楽しいですよ!