「ハルキ・ムラカミ」として世界中のファンから人気を集める作家・村上春樹さん。数多くの有名作を執筆しており、舞台や映画などのメディアミックスが実現した作品も少なくありません。そんな彼の作品『品川猿』『品川猿の告白』を原作とした舞台『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』が、2024年秋にKAAT神奈川芸術劇場で上演されます。

多層的なテーマを内包したコミック・ミステリー

村上春樹さんは1949年に京都府で生まれました。『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞し、1979年にデビュー。1987年に発表された『ノルウェイの森』がベストセラーとなり、村上春樹ブームを巻き起こしました。その他の代表作に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』『1Q84』『街とその不確かな壁』などがあります。

今回の舞台『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』は、短編集『品川猿』『品川猿の告白』を原作としたコミック・ミステリーです。簡単にあらすじをご紹介しましょう。

<あらすじ>
ある旅行者が日本の山奥にある寂れた旅館で、温泉の番をしている猿と出会い驚愕する。そして猿が人の言葉を話すと、さらに驚いた。背中を洗ってもらいながら会話が始まり、猿は品川猿と名乗る。その後、ホテルの客室に戻りビールとスナックを楽しみながら、猿がどのようにして「人間の言葉」を習得し、ブルックナーやリヒャルト・シュトラウスの音楽を鑑賞するようになったかを語る。そして今、品川猿は、衝撃的な告白をしようとしているのだった。一方、東京では、若い女性が自分の名前を忘れ、深刻なアイデンティティの危機に陥っている。そして2つの物語が絡み合う。

舞台『品川猿の告白』は、人間の女性に恋し、思いを遂げるために、その名前を盗んでしまう品川猿の叶わぬ恋の物語をベースに、他者への強制、罪と救済、記憶、そしてアイデンティティといった多層的なテーマを内包している作品とのこと。村上春樹作品の魅力であるストーリーの難解さを感じられる舞台となっています。

2021年から育んできた日英チームの協働

『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』は、KAAT 神奈川芸術劇場初の本格的な日英国際共同制作公演になっています。パートナーは、スコットランドのグラスゴーを拠点として国際的に活動し、「英国で最もユニークな劇団のひとつ」と高い評価を受けている劇団ヴァニシング・ポイントです。

2021年、日英チームの協働はスタートしました。「劇場が常に考える場、豊かな発想を生み出す場となることを目指し、クリエーションのアイディアをカイハツ」していくというコンセプトである「カイハツ」プロジェクトの一環です。チームで議論を重ね、2022年からは横浜とグラスゴーでワークショップを行ってきました。

当初は作品づくりの具体的なことは決まっていなかったものの、2023年のグラスゴーにおけるワークショップで『品川猿の告白』を原作とすることになったそうです。実は、原案・構成・演出を担当する、劇団ヴァニシング・ポイントの創設者兼芸術監督であるマシュー・レントンさんは、村上作品の大ファンなんだそうです!

日英国際共同制作で実現する世界観

今回出演する日本人キャスト4名(那須凜さん、伊達暁さん、田中佑弥さん、家納ジュンコさん)は、カイハツプロジェクトのワークショップやプレリハーサルからクリエイションに参加してきた方々となっています。

個人的に大注目なのは那須凜さんです!那須さんは、高畑淳子さんらが所属する劇団青年座の若手ホープとして、様々な舞台で大活躍されています。2022年には『アルビオン』『春の終わりに』『ザ・ドクター』の演技で、第29回読売演劇大賞杉村春子賞を受賞し、その勢いはとどまることを知りません。

また、劇団ヴァニシング・ポイントからは、劇団でクリエイティブ・アシスタントも務めるサンディ・グライアソンさんをはじめ、エリシア・ダリさん、サム・ストップフォードさん、アイシャ・グッドマンさん、人形遣いとしてエイリー・コーエンさんの5人が出演します。

実力あるスタッフが集結した今回のドリームチームは、『品川猿の告白』を、日本語と英語が飛び交うダイアローグと独特な視覚的言語を用いて描き出します。そして、空間造形の中に字幕を組み込み、多言語での上演を可能にした新たなスタイルで、観客を物語の世界へ誘います。あなたも、夢のような村上春樹ワールドを五感で体感してみませんか?

『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』は、2024年11月28日(木)〜12月8日(日)に、KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオで上演されます。詳細は公式ホームページをご覧ください。

さよ

「国際共同制作」ものが大好きな私。『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』では2か国語が使われるとのことで、とても気になります!