チェコの国民的作家・劇作家であるカレル・チャペック。一度は名前を聞いたことがあるかもしれません。そんな彼の代表作で、SF戯曲の金字塔とも呼ばれる『ロボット』が、2024年に日本で上演されることになりました。今回の記事では、実はあまり知られていないカレル・チャペックと「ロボット」という単語の関係から、気になるあらすじ、豪華なスタッフ・キャストのご紹介まで、たっぷりお届けしていきます。

「ロボット」という言葉の生みの親

1890年、カレル・チャペックは、当時はオーストリア=ハンガリー帝国領だったボヘミアのマレー・スヴァトニョヴィツェで誕生しました。1911年、ベルリンの大学を修了後、兄ヨゼフが在籍していたパリのソルボンヌ大学へ留学し、造形芸術家集団に参加することになります。その活動の中で、彼は兄とともに戯曲『盗賊』を執筆しました。

その後、1914年には第一次世界大戦が勃発しますが、チャペックは鼻骨の怪我により従軍を免れます。2年後、チャペック兄弟として正式にデビュー。当初は、フランス詩の翻訳や国民新聞に論説文を書く仕事に取り組んでいたそうです。

1920年、プラハのヴィノフラディ劇場の演劇人としても活動していたチャペックは『R.U.R.』を書き上げます。このとき、チャペックは「労働」を意味するチェコ語「robota(ロボタ)」から、「ロボット」という言葉を生み出したと言われています。

そんなチャペックと縁の深い言葉がタイトルになっている『ロボット』、どんな作品なのでしょうか?

人類抹殺計画を企てるロボットたち

『ロボット』のあらすじは次の通りです。

舞台は人造人間(ロボット)の製造販売を一手にまかなう工場。ロボットの進化により人間は労働から解放され、労働せずとも生活していけるようになった。やがて人間たちは全てをロボットに任せるようになり、自分からは動かないまでに退化してしまった。やがてロボットたちは団結して反乱を起こし、人類抹殺の計画を始める。

戯曲『ロボット』が発表されたのは、今から約100年前の1920年。今でこそロボットの存在は身近になっていますが、100年前に人間とロボットの関係をこんなにブラックに描写していた人がいたなんて驚きですよね。

「何をもって人間というのか。ロボットは我々に何をもたらすのか。」「ロボットと人間の共存が始まりつつある2024年に生きる人々に向けて、シニカルかつ不条理なドラマとして転換し、現代の物語としてお届けいたします。」公式サイトにはこんな単語が並んでいます。怖そうなのに何だか気になってしまう、そんな強くて不思議な力を、この作品から感じてしまいます。

「今が最後のチャンスなのかもしれない」

今回『ロボット』の演出を手掛けるのは、卓越した発想力とユーモアで、独特の奇想天外な世界観を描き出す作風に定評のあるノゾエ征爾さん。大学在学中の1995年から演劇活動を開始し、俳優・劇作家・演出家として活躍しています。日本インターネット演劇大賞・最優秀新人男優賞(2000年)、第56回岸田國士戯曲賞(2012年)の受賞経験もあり、今後が見逃せない人物です。

ノゾエさんは本作について、「もしかしたら今が、ロボットが『ロボットらしい』うちに公演できる最後のチャンスなのかもしれない」と、とても興味深いコメントをされています。彼が演出する唯一無二の世界観に浸るのが今から楽しみになってきますね。

ここからは、豪華キャスト陣についてご紹介したいと思います。

作品の舞台となるロッサム・ユニヴァーサル・ロボット社の社長ドミンを演じるのは、渡辺いっけいさん。『住所まちがい』(2022年)以来の世田谷パブリックシアター主催公演出演となります。

元宝塚歌劇団トップスターの朝夏まなとさんは、世田谷パブリックシアター主催公演初登場!ドミン社長の妻にして、人権同盟代表としてロボットの地位の向上を訴えるヘレナを演じます。個人的に大注目な登場人物です。

ロボットの反乱後、ただ1人残される人間であるロボット研究者アルキストを演じるのは、ストレートプレイとミュージカルの両輪で数多くの舞台や映像作品に出演してきた実力派の水田航生さん。これまでも『お勢登場』、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』、現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』の世田谷パブリックシアター主催公演に出演してきました。

その他に、菅原永二さん、加治将樹さん、坂田聡さん、山本圭祐さん、小林きな子さん、内田健司さん、柴田鷹雄さん、根本大介さんが揃いました。魅力的なキャスト陣はどんな物語を奏でるのでしょうか?

100年後の世界を予見したかのようなチャペックの世界を、 ノゾエさんの演出によって11人のキャストが「遠すぎない未来の世界」として2024年の日本に立ち上げる今作。人間とロボットの関係が変化していく様子を、ぜひ生で体感してみませんか?

舞台『ロボット』は、2024年11月16日(土)~12月1日(日)に東京のシアタートラムで、12月14日(土)~15日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演されます。詳しい情報は『ロボット』公式サイトをご覧ください。

さよ

約100年前にこんな未来予知的作品を書いた人がいたなんて、私は今まで知らずにいました...。あらすじは何だか怖そうなのですが、ものすごく気になってしまいます。ノゾエさんが手掛けるシニカルさ・不条理さの表現にも要注目です!