5月に大阪・SkyシアターMBS、6月に東京・シアターHにて上演される劇団☆新感線45周年興行・初夏公演いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』。昨年5月に宝塚歌劇団を退団し、演劇としては今作が退団後初舞台となる元花組トップスター柚香 光さんを主演に迎え、新感線流お伽噺を繰り広げます。本作の製作発表の様子をお届けします。

「民話や昔話独特の生々しさや怖さが出せたら」

劇団☆新感線45周年興行・初夏公演いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』製作発表には、脚本を務める青木豪さん、演出のいのうえひでのりさん、本作に出演する柚香 光さん、早乙女友貴さん、喜矢武 豊さん、一ノ瀬 颯さん、樋口日奈さん、粟根まことさん、千葉哲也さん、鈴木拡樹さんが登壇しました。

『紅鬼物語』は「昔々あるところに…から始まるような、伝承で語られるような物語をやりたい」といういのうえひでのりさんの発案から始まった作品。青木豪さんも6年ほど前に「鬼の話を書いてみたいなと思ったことがありまして、その頃ちょうど『鬼滅の刃』が流行り始めた頃だったので、今やって乗っかったみたいに思われるのは良くないなと思い、やめにしたんですけれど。いのうえさんからご提案頂いて、ずっと温めていた鬼の物語を、昔話を再度調べたりして書こうということになりました」と経緯を明かします。

いのうえさんは「鬼をモチーフにした作品は劇団☆新感線でもあるんですけれど、征服者や敵国のメタファーであることが多くて、鬼そのものの存在を扱っている昔話みたいなものは実はやっていなくて。民話・伝承を由来にするような話を一回やってみたいなと思っていたところ、今回柚香光さんが来てくださるということで、これは良い機会だ、新しいことに挑戦しようと思いこの作品の方向性になりました。今までの新感線の作品より、民話や昔話独特の生々しさや怖さが出せたらと思っているので、いつもとは少しトーンが違うと思います。あとは若手俳優さんたちがずらりと出演してくださるので、イケメン祭りということでお客さんも大喜びではないかと(笑)」と作品への想いを語りました。

柚香さんは、宝塚歌劇団を退団後、演劇としては今作が初舞台。既に本読みが行われたそうですが、男性がいる本読みの現場自体が初めてということで、「何もかもが新鮮で刺激的でした」と振り返ります。

新感線には6度目の登場で、準劇団員とも言える早乙女友貴さんは、鬼の栃ノ木役を演じる本作について「4年ぶりに人ではなく鬼になります。4年前に『狐晴明九尾狩』という作品で狐役をやらせて頂いて、耳や尻尾を手動で動かす小ネタがいっぱいあったので、今回はどういうビジュアルになり、どういう小ネタが増えるのか楽しみにしていただけたら」と新感線ならではの見どころを語ります。

早乙女さんと交流があり、劇団☆新感線への出演は憧れだったという喜矢武豊さんは「大好きで憧れの新感線に出演できるなんて、なんで呼んでもらえたのか…事務所が賄賂を送ったのかなと思って…」と出演がまだ信じられないご様子。「出していただけるからには、120%の力で頑張りたいと思いますし、もし足を引っ張ったらギャラを返金したい。そのぐらいで頑張ります」と意気込みます。

本読みではかなり緊張されていたようで、早乙女さんは「本読みの第一声が震えていて、僕は声が出そうなくらい笑いを堪えたんですよ」と暴露。「そんなことはない!」と必死に否定する喜矢武さんですが、早乙女さんが「稽古場デカくないですかとも言ってきた」とさらに明かすと、「デカいんですよ!新感線の規模感が凄くて、弁当も豪華!」と興奮気味に語りました。

一ノ瀬颯さんは本作が初舞台。「とにかく必死に食らいつきたい」と意気込みます。劇団☆新感線で昨年上演された『バサラオ』を観劇し、「世界観に凄く惹き込まれましたし、自分が出演できることが嬉しく、頑張らなきゃと思いました。殺陣や歌も新感線の大きな魅力ですし、僕も常々挑戦したいと思っていたことなので、素敵な機会を頂いて全力で頑張りたい」と語ります。一ノ瀬さんは歌がお好きで、ご自宅ではよく歌っているそう。「いつかお仕事で出来たら嬉しいとずっと思っていた」と言い、様々な念願が叶う作品となりそうです。

樋口日奈さんは劇団☆新感線をこれまでも観劇してきており、「終演後も世界に陶酔してしまうような魅力に圧倒されました。45周年記念イヤーの舞台に立たせてもらえるということを聞いたときはもう嬉しさと高揚感から本当に夢が叶ったような心地でした」と語ります。

劇団員の粟根まことさんは「鬼や武士がたくさん出る舞台の中で、村の村長として、庶民代表として頑張りたいと思います。イケメン祭りの一角を担いたい」とチャーミングに挨拶され、会場を沸かせます。

千葉哲也さんは「イケメン祭りでも若者チームでもないですが…このカンパニーのキャストの中では一番年上になると思うので、皆さんの足を引っ張らないように頑張ります」と謙虚にご挨拶を。

鈴木拡樹さんは『髑髏城の七人~Season月《下弦の月》』以来、7年ぶりの劇団☆新感線出演。「劇団員の皆様、劇団のファンの皆様に、“本当に45周年おめでとうございます”という気持ちを背負って、舞台に立ちたいと思います。次の50周年を迎えてもらうために、良いスタートにしたい」と意気込みます。

「1,000本ノックだけは勘弁していただきたい」と語る鈴木さんに、いのうえさんはニヤリ。「柚香さんには包み込むような母性と、鬼なんだけれど鬼であることを抑え込んで生きている女性なので、儚さや弱さがあって、これまでの男役とは真逆のものが要求されると思います。夫役の拡樹はそれを大きな愛を持って受け止める必要があるので、前回の『髑髏城』とは全然違うことが求められるので…1,000本ノックがあるかもしれません」と語り、鈴木さんも覚悟を決めて「頑張ります!」と意気込みました。

青木豪さん書き下ろしとなる本作は、各キャストへのあてがきとなっており、「柚香さんは宝塚の公演を拝見していたので、毅然とした立ち姿と、宝塚時代にはない部分を入れられたらと思いました。今回初めてお会いする方は、YouTubeなどを拝見して。作品だと出来上がっているものなので、作品ではなく普段の語っている姿を見て、意識して書いています」と語りました。

早乙女さんは、台本のト書きに「飛んで帰る」と書いてあったことを明かし、「僕、高いところ苦手なんですよ。フライングが嫌いなのを知っているのかなと思いながら、いのうえさんのところにすぐに行って、“これ僕フライングですよね?”って話して。以前、『薔薇とサムライ』でフライングをさせて頂いて、その時本当にやりたくないですと言っていたんですが、大先輩の天海祐希さんが高いところ苦手だけれどやると仰ったので、断れなくて(笑)。でも本当に怖かったので、今回はどうなるのか…ト書きを呼んでびっくりしたというのは覚えています」と語ります。本作でどうなるかはまだ明かせないとのことですが、一体どんなシーンになるのでしょうか。

撮影:鈴木文彦

柚香さんは鬼の紅子を演じるにあたり、「紅には魔除けや情熱、生命力という意味があります。私はこの紅に、血潮が燃えるという意味を込めて、自分にしかできない役作りをしていきたい」と力強く語ります。

いのうえさんは「いつものいのうえ歌舞伎とは一味違う、生々しいファンタジーのお芝居です。劇場もいつも使っている劇場より一回り小さいので、客席を全部使って走り回るような、会場全体で身近に出演者が感じられるような舞台になるのではないかと。年末の秋冬公演がOGOB会のようなキャスティングで、それに比べるとフレッシュな若い方々が中心の舞台になると思うので、そこも楽しんでいただけたら」と語り、会見が締め括られました。

<ものがたり>
昔々、そのまた昔。都には鬼が現れ、人々を襲っていた。貴族である源蒼(鈴木拡樹)の家臣、坂上金之助(喜矢武豊)も鬼に襲われるが、反撃して片腕を斬り落とすと、鬼は捨て台詞を吐いて飛び去った。これを蒼に報せると、それを聞いた同じく家臣の碓井四万(千葉哲也)は、蒼の奥方が神隠しに遭ったのも、鬼の仕業ではないかと言い出した。10年前のある朝、奥方の紅子(柚香光)と娘の藤(樋口日奈)は忽然と姿を消した。庭には鬼らしき足跡が一対、残されていたという。それから紅子たちの行方は杳として知れない。それでも「紅子と藤は生きている」と信じる蒼は、鬼の根城を探し出し、二人を取り戻そうと心に決めて、金之助、四万、そして桃千代(一ノ瀬颯)らと陰陽師の阿部辺丁迷のもとへ。だが、そこに金之助を襲った鬼の栃ノ木(早乙女友貴)がやってきて、桃千代を連れ去ってしまう。栃ノ木を追いかけ、蒼たちはシノナシ国へ向かった。その頃、紅子と藤、紅子の両親は、シノナシ国の小さな村に身を寄せていた。紅子と藤の舞の見事さに村長の八十八(粟根まこと)は感心するばかり。そして八十八に尋ねられた紅子は、村を訪れた経緯を語り始めるが……。ともに生きるか、ともに死ぬか−−。血の宿命に引き裂かれた二人の、哀しきお伽噺が今、幕を上げる。

2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』は、2025年5月13日(火)から6月1日(日)までSkyシアターMBS、6月24日(火)から7月17日(木)までシアターHにて上演。公式HPはこちら

Yurika

45周年の記念イヤー、劇団☆新感線の新境地となる作品になりそうです!