青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』にて11代目ピーター・パンを務める山﨑玲奈さん。1981年に日本初演を迎えた本作は、記念すべき45年目を迎えます。3年目の出演となる本作への意気込みと想いを伺いました。

改めて『ピーター・パン』の台本や原作と向き合う3年目に

−ピーター・パン役として3年目の出演が決まっていかがですか。
「ピーター・パンはずっと目標の作品であり役だったので、3年目も出演できるのが本当に嬉しいです。1年目は初めてということで挑戦の年として、ワクワクしながらやらせて頂いて、2年目はさらにそのワクワクをグレードアップさせたいという気持ちだったのですが、3年目となると、進化は続けながらも、初心に帰ると言いますか、改めて『ピーター・パン』の台本や原作と向き合い、1から作っていけたらなと思っています」

−目標の作品だったということは、『ピーター・パン』を幼少期からご覧になられていたのでしょうか。
「小学校低学年の頃に、唯月ふうかさんのピーター・パン、中学生の頃に吉柳咲良さんのピーター・パンを拝見しました。ピーター・パン役が変わると全く印象が変わりますし、最初に観た時はただただ楽しかった記憶があって、自分の中でも思い出深い作品です。中学生の時は初めて『ピーター・パン』を観て涙ぐんで、こんなにも切なくなる作品だったんだと気がつき、年代によって受け止め方が違う作品なんだなと思いました」

−出演してみて作品への印象は変わりましたか。
「そうですね。ディズニーアニメーションの『ピーター・パン』も大好きで、かっこいい冒険の物語という印象があったのですが、出演してみるともちろん楽しい作品でありながらも、ピーターが抱える孤独や切なさがより見えてくるようになりました」

−『ピーター・パン』で好きなシーンや台詞はたくさんあると思うのですが、1つご紹介して頂くとしたら何でしょうか。
「やはり「アイム・フライング」は好きなシーンですね。ピーター・パンがウェンディ、ジョン、マイケルに飛び方を教えるシーンなのですが、何回やっても楽しいですし、新鮮な気持ちでフライングできるので好きです。好きな台詞は、フック船長と戦っている時に「貴様は一体何者だ」と改めて聞かれて、「俺?俺は…若さ、喜び、自由!」と言うシーンがあるんですけれど、それまでにも何度もこの言葉を口にしているのに、このシーンでは毎回気持ちが変わるし、ジーンと来るんです。アドレナリンが溢れ出ている時もあれば、「俺は何者なんだ」と問う時もあれば、ギリギリの戦いを経て捨て台詞のようになる時もあります。凄く色々な気持ちになる不思議な台詞です」

−山﨑さんのピーターパンを1年目、2年目と拝見して、ヤンチャさ溢れるピーターパンが印象的でした。演じる上で大事にされていることはありますか。
「両親からは特に、ピーターパンは私の“素のままだね”と言われるんです。家では凄くうるさくてはしゃいでしまうタイプなので、いかに自分の素をさらけ出すかを大事にしています。もちろん少年らしさを出すためには性別も変わりますし、座り方や歩き方、喋り方も気をつけなければならないのですが、明るさやはしゃぐ部分は自分が持っている部分だったので、それをいかに活かせるかを考えながらやっていました」

−そうだったんですね!ピーターパンには共感できることが多かったですか?
「多いですね。ただピーターパンは親を知らずに育っているので、そこは計り知れない孤独感があると思います。そこにいかに歩み寄れるかは考えました。また現実離れした作品ではあるので、いかにファンタジーの世界に飛び込めるか、ネバーランドの空気感を作れるかが大変でした」

−ネバーランドの世界に飛び込むためにやったことはありますか。
「ロストボーイズと過ごすことが多いので、一緒に時間をかけてロストボーイズとの関係性を築くことから始めました。また長谷川寧さんの作る舞台セットがとても個性的なので、そのセットに慣れることが『ピーター・パン』の日常に近づく一歩なのかなと思い、セットに馴染めるようにと意識しました」

フライングは「鳥になったような気持ちで毎日が楽しい」

−現在の長谷川寧さん演出の『ピーター・パン』はパルクールを取り入れたことでも話題です。パルクールに挑戦してみていかがでしたか。
「パルクールもアクションも初めてで、もちろんフライングも初めてだったので、1年目は慣れるのに時間がかかりましたし、さらにそれを自分のものにするのが大変でした。2年目もより進化させようということで動きが変わったので、また慣れるところから始まって、まだまだ上手くなりたいという気持ちです」

−フライングは作品を象徴するシーンですが、飛んでみた気持ちは?
「めちゃくちゃ楽しいです!ジェットコースターに乗っているような、自分が鳥になったような気持ちで、毎日が楽しかったです。技も色々とあって難しいのですが、飛ぶのを楽しんでいます。最後は魔法の粉を客席の皆さんに振りかけるので、皆さんが満面の笑顔で喜んでくださっている様子が見えたり、手を伸ばしてくださっているのが見えたりして、“今日はどんな方がいるかな?”と私もワクワクします」

−お子さんからの声援が飛ぶシーンもありますよね。
「ミュージカルでは静かに観劇する作品が多い中で、お子さんの声援をもらったり、一緒にダンスを踊ったりするのは『ピーター・パン』ならではですし、元気をもらえます。お子さんのパワーは偉大だなと思いながらやっています」

−昨年の稽古場取材に参加したこども記者の皆さんの中には、山﨑さんの『ピーター・パン』を観てミュージカルを習い始めたという子もいました。
「覚えています!本当に嬉しいですし、『ピーター・パン』をやっていて良かったなと思う瞬間でした。私たちの『ピーター・パン』を観て『ピーター・パン』に出たいと思ったというお声を頂くこともあるのですが、私だけでなく、カンパニー一同、とても嬉しいですし、もっともっと素敵なネバーランドにしようと思います」

個性溢れるキャストと新たなネバーランドを

−今年は新キャストも多いです。
「そうですね。アンサンブルキャストの皆さんも新しく加わってくださる方が多いので、また全然違う魅力が出てくると思います。先日ビジュアル撮影をさせて頂いて、個性溢れるキャストの皆さんとお会いしたので、どんなネバーランドになるのかワクワクしています」

−フック船長は石井一孝さんが務められます。ビジュアル撮影の印象もまた変わりましたよね。
「昨年まで小野田龍之介さんがやられていたフック船長は貴族のような雰囲気だったのですが、今回はより怖さが増して、海賊感の強いフック船長だなと思いました。ビジュアルが怖かったので石井さんも怖い方なのかなと思ったら、とっても優しく接してくださって、そのギャップに付いていけなかったくらい(笑)。温かく見守ってくださる方なので、稽古場でも色々とチャレンジできそうで楽しみです」

−ウェンディ役の山口乃々華さんの印象はいかがですか。
「凄くふんわりした雰囲気をお持ちの方で、ウェンディにぴったりの方だなと感じました。可愛いウェンディに会えるんだろうなとワクワクしています」

どんな方でも楽しめる『ピーター・パン』に

−今年は、山﨑さんご自身は18歳の成人を迎えられての『ピーター・パン』となります。感じ方は変わりそうですか?
「成人と言っても気持ちは変わらないですし、ピーターパンをまだまだ演じられる!という気持ちはあります。でも年齢を重ねていくごとに、自分の考え方や作品の受け止め方が変わっていっている感覚もあります。1年目は、ピーターパンはやっぱりかっこいいヒーローだなと思いましたが、2年目はこんなに悲しい境遇の子どもがいるなんて、という気持ちにもなりました。3年目もきっと違う受け止め方があるんだろうなと思います」

−山﨑さんは現在、オリジナルキャラクターの役で昭和から令和までの楽曲を歌い継ぐメディアミックス音楽プロジェクト「ウタヒメドリーム」でもご活躍中です。声優としての活動や、ポップスソングを歌うことで役者としても変化はありますか。
「ミュージカルとは発声法や歌唱法が違って、マイクに素敵な音を届けるために細かい表現が必要だったり、歌の雰囲気によっても歌い方が変わるので、自分の歌い方の幅がちょっと広がった気がします」

−他にも様々な作品に出演された2024年でしたね。
「そうですね。私は結構役を引きずるタイプで、特に『ピーター・パン』は私の中にありすぎるので、他の作品の稽古が始まってもたまにピーターパンが出てきてしまうんです。自分の心にピーターパンがいることは嬉しいものの、役は変わらなければいけないので、いかに引きずらないようにするかはこの2年で考えるようになりました」

撮影:山本春花

−ミュージカル『ピーター・パン』は7月28日に東京国際フォーラム ホールCで開幕し、群馬・大阪・福岡の全国ツアーが行われます。どのように楽しんでもらいたいですか。
「『ピーター・パン』の一番の魅力は、どんな方でも楽しめることだと感じています。これまでも様々な地域で公演をやらせて頂く中で、ミュージカルを初めて観るという方も多くいらっしゃいました。そういった方にも“ミュージカルってこんなに素敵なんだ”と思って頂けるよう、もっともっと素敵な作品を作っていきたいです。また何度も観に来てくださっている方にも、“やっぱりいいな、面白いな”と思って頂けるよう、物語の素晴らしさをお伝えしたいと思います。お子さんは掛け声や一緒に踊って楽しんでほしいですし、大人の方にはピーターパンの孤独さや切なさを伝えて、作品の素晴らしさを届けられたらと思います。今年は手話付きの鑑賞サポートを実施する回もあり、よりたくさんの方に『ピーター・パン』を楽しんで頂けるのが楽しみです」

青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』は2025年7月28日(月)から8月6日(水)まで東京国際フォーラム ホールCにて上演。8月10日(日)11日(月)に群馬公演(高崎芸術劇場 大劇場)、8月17日(日)に大阪公演(梅田芸術劇場メインホール)、8月22日(金)から24日(日)まで福岡公演(博多座)が行われます。公式HPはこちら

Yurika

まだ18歳とは思えない落ち着きと、伸びやかな歌声、ピーターを演じると垣間見えるヤンチャさが魅力の山﨑さん。撮影中も多彩な表情を見せてくださり、撮影スタッフ一同メロメロでした。3年目はどんな『ピーター・パン』になるのか楽しみです。