2025年6月6日(金)から8(日)まで、KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにてShake&Speare!! Stage 宮川彬良×木村龍之介『ナツユメ』が上演されます。古典喜劇の代表格ともいえる、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を基に、なんと「AI」が登場するという本作。一体どんな舞台になるのでしょうか。本記事では、その見どころを紹介します。
シェイクスピア、AI、アバター。押さえておきたい3つのポイント
①『ナツユメ』の原作、シェイクスピアの『夏の夜の夢』とは?
『夏の夜の夢』は、シェイクスピアの全37作品のなかでも、特に多くの人に愛されている喜劇です。
舞台は大昔のアテネ。ハーミアとライサンダーはお互いに愛し合っていますが、ハーミアの父は、娘に自分の選んだ青年ディミートリアス(デメトリアスとも)と結婚することを迫ります。
国の法律では親の意向に背くことが禁じられているため、ハーミアとライサンダーは秘密の駆け落ちを決意します。一方、ディミートリアスに思いを寄せるヘレナは、ふたりの計画を彼に密告し、自らも森へと姿を消した三人を追うのでした。
さらに、侯爵の結婚式や、その余興のために劇の練習をする職人たちのエピソードが同時進行していきます。それだけではなく、妖精の王オーベロンとその妻ティターニア(タイターニアとも)の壮大な夫婦喧嘩も始まって、複数のドラマが絡み合います。息もつかせぬ展開が魅力的な喜劇です。
②恋とAI、『ナツユメ』はどう描く?
『ナツユメ』では、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を基に、シェイクスピアが400年前に見たであろう世界とこれから訪れるであろう未来の世界を、最新のAI技術を用いて表現することが明かされています。
もはやAIは、私たちの生活のなかに組み込まれるほど身近な存在ですが、それがシェイクスピアの作品世界とどう混ざり合っていくのか、注目したいのは原作に込められたテーマです。
『夏の夜の夢』のテーマのひとつに「恋」があげられます。誰かを思って胸をときめかせたり、苦しんだりする感覚は、人間特有のものかもしれません。
ある意味では最も人間らしい感情が描かれたこの『夏の夜の夢』と、最新技術であるAIがどのように融合され、表現されるのか非常に楽しみです。
③白石加代子がAIアバターに?革新的な演出に要注目
『ナツユメ』の特筆すべきポイントとして、女優の白石加代子さんが「AIアバター」として舞台に参加される点を挙げましょう。
白石さんは早稲田小劇場(現SCOT)へ入団後、鈴木忠志氏や蜷川幸雄氏、野田秀樹氏など、一流の演出家が手掛ける数多くの舞台へ出演してきました。その唯一無二の存在感、迫力の演技力は、世界的演出家のピーター・ブルックに「火を噴くドラゴン」と称されたほどです。
日本を代表する大女優の白石さんが、アバターとして登場する。これは圧倒的、かつ衝撃的な演劇体験となるのではないでしょうか。実際に舞台でどんな役割を担うのか、どのように表現されるのか注目が高まります。
『マツケンサンバ』生みの親、宮川彬良が手がける舞台音楽
作中の音楽を担当するのは、作曲家・舞台音楽家の宮川彬良さんです。
劇団四季を始め、数多くのミュージカルや舞台音楽を手掛けてきた宮川さん。
特に1996年に上演された舞台『身毒丸』の音楽で知られるほか、2004年には、松平健さんのショーのために作曲した『マツケンサンバ』が大ヒットしました。これは舞台音楽からヒットソングを送り出したという快挙であり、まさに舞台音楽界の第一人者と言える存在ではないでしょうか。
そんな宮川さんは、2005年に『ハムレット』、そして2021年祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』の舞台音楽で第12回読売演劇大賞・優秀スタッフ賞を受賞しています。
先述の『身毒丸』も含めると、同賞を3回受賞されており、そのうち2回がシェイクスピア作品であることも興味深いポイントです。
シェイクスピア作品の世界を彩るさまざまな音楽を作り出し、多くの観客から高い評価を受けている宮川さん。今回の『ナツユメ』では、どんな音楽が誕生するのでしょうか。上演中には、ご本人による生演奏が聴けるのも楽しみです。
カクシンハン主宰・木村龍之介が新たなシェイクスピアを生み出す
脚本と演出を務めるのは、シアターカンパニー「カクシンハン」を主宰する演出家の木村龍之介さんです。
木村さんは東京大学在学時にシェイクスピアを研究し、卒業後には文学座付属演劇研究所、蜷川スタジオ、シェイクスピアシアターなど多くの劇団で演出を学びました。以降もシェイクスピア作品の演出を中心に活動されており、ご自身の著書として『14歳のシェイクスピア』(大和書房)を刊行されています。
過去には複数回にわたり『夏の夜の夢』を演出されている木村さん。2022年にはKURITA×KIMURA SHAKESPEARE Vol.0として、『リア王〜スマホVSリア王〜』など、シェイクスピアの有名作品に、現代社会のツールを掛け合わせた画期的な作品も精力的に上演されています。
シェイクスピア作品のプロフェッショナルと言っても過言ではない木村さんが、『ナツユメ』では人間の俳優だけではなくAIにどう向き合うのか、AIをどう演出するのか興味が高まります。
〈イントロダクション〉
人類という一夜の幻を、AIの少女は夢に見た
ロボットは、夢を見てはならない。
恋に堕ちてはならない。
芝居をしてはならない。
―――それでも、AIの少女は夢を見た。
恋に惑い、芝居に酔い、魔法にかけられた、ひとりの「少女」の物語。
シェイクスピアを演じるロボットが生まれたとき、人間も、妖精も、ロボットも踊り出す!―――
テクノロジーと幻想の魔法が交差する、新たな『夏の夜の夢』。
シェイクスピア×AIが織りなす、『ナツユメ』、開幕。
この体験に、あなたは何を夢見る?
Shake&Speare!! Stage 宮川彬良×木村龍之介『ナツユメ』は、2025年6月6日(金)から8(日)までKAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演。公式ホームページはこちらです。

「ついに演劇にも『AI』と交わる時代がやってきた!」と、ドキドキワクワクが止まりません。400年前のシェイクスピアは、はるか未来にこんな時代がやってくると思っていたでしょうか?人間の想像力と最新テクノロジーが融合する『ナツユメ』で、新たな演劇体験の扉が開かれるかもしれません。