シェイクスピア作品のなかで有名な「歴史劇」として知られる『リチャード三世』。中世のイギリスを舞台に、野心に燃えるリチャード・オブ・グロスター(のちのリチャード三世)が、王位に就くまでの人間ドラマを描いています。日本でも過去に何度も上演されてきたこの名作が、今回小田島創志さんによる新訳によって、新宿シアタートップスにて上演されることが決定しました。
義庵×小笠原響×小田島創志が手がける、新たな『リチャード三世』
2020年に一人芝居『審判』の上演のために立ち上げられたプロデュースユニット「義庵」。主宰を務めるのは、俳優の加藤義宗さんで、今回の『リチャード三世』では主役のリチャードを演じます。
義庵のモットーとして「自身が読み、または観て必ずいい作品になると自信を持てる作品のみを上演致します」とのこと。上質な演劇作品への並々ならぬ情熱がうかがえます。
本公演で演出を務めるのは、2018年、2024年の読売演劇大賞で、優秀演出家賞を受賞した小笠原響さん。
小笠原さんは、劇団俳優座や文学座など、さまざまな劇団で舞台監督や演出助手として活躍されたのち、フリーの演出家として多くの舞台公演を演出してきました。また、現在は東京都・調布市にある「せんがわ劇場」の芸術監督を務めるなど、地域の演劇活動にも貢献されています。
過去には『子どものためのシェイクスピア』など、多くの観客にシェイクスピア作品を届けた経験もお持ちです。今回の『リチャード三世』では、どんな世界観を提供してくれるのでしょうか。
そして、本公演で新たに『リチャード三世』の翻訳を手掛けるのは、1991年生まれの翻訳家・小田島創志さんです。過去の翻訳作品には、2023年にPARCO劇場で上演された『ラビット・ホール』や、読売演劇大賞で優秀作品賞を受賞した『白衛軍 The White Guard』などがあります。
小田島さんの祖父・小田島雄志氏についても触れておきましょう。小田島雄志氏といえば、シェイクスピア翻訳の大家として知られ、シェイクスピアの全作品を翻訳したという偉業を成し遂げた人物です。
偉大な翻訳家のルーツを持つ小田島創志さんは、令和の世にどんな『リチャード三世』を生み出すのでしょうか。
『リチャード三世』あらすじと本公演の見どころは?
本作は、実際に中世のイギリスで起こった「薔薇戦争」を題材とした作品です。これは「ヨーク家」と「ランカスター家」の対立が生んだ戦争で、主人公のリチャードは「ヨーク家」に所属しています。主人公のグロスター公リチャードは、非常に権力欲が強い人物として描かれています。
容姿には恵まれず、障がいを持っている彼は、家族の中でも疎外感を感じており、兄(エドワード4世)がイギリス王に即位したことを妬んでいます。
本作は、リチャードが血なまぐさい権力争いの末に王位を手に入れ、やがて没落していく様子が描かれています。シェイクスピア作品のなかでも非常に人間の恐ろしさが描かれた今作は、単なるドロドロしたストーリーというだけではなく、歴史ドラマやホラー的な側面を持つ作品です。
本公演の会場である新宿シアタートップスの客席数は約150席です。この大作を間近で観劇することにより、出演者の息遣いや迫力をより魅力的に感じられるのではないでしょうか。
さらに注目すべきは、今回の『リチャード三世』では、わずか11名の出演者で戯曲に登場するすべての登場人物を演じること。劇中には殺陣のシーンもあるそうで、少人数でこの迫力ある舞台がどのように展開されるのか、興味が尽きません。
義庵 5th ACT『リチャード三世』は、2025年6月15(日)~6月22日(日)まで、東京・新宿シアタートップスにて公演します。公式ホームページはこちらです。

個人的には、小田島創志さんによる「新訳」に大注目しています!ドロドロした血なまぐさい、しかし普遍的な人間の感情を、どう表現し直してくれるのでしょうか?