チョ・グァンジン氏の原作を基に、6月9日(月)に世界初演を迎えたミュージカル『梨泰院クラス』。開幕を前に劇中から数シーンを披露したプレスコールと囲み取材が行われ、小瀧望さん、和希そらさん、saraさん、梅澤美波さん、川口ゆりなさんが登壇しました。

プレスコールではオープニングと1幕ラストを披露

2016年から2018年まで韓国のカカオウェブトゥーンで連載された漫画で、ドラマ化され世界中で人気を博した『梨泰院クラス』。

脚本に坂口理子さん、歌詞と構成にイ・ヒジュンさん、音楽にヘレン・パークさん、演出に小山ゆうなさん、振付にカイル・ハナガミさんを迎え、世界初演ミュージカルに挑みます。

主人公パク・セロイを演じるのは、『DEATH TAKES A HOLIDAY』での好演が記憶に新しい小瀧望さん。チョ・イソ役に和希そらさん・saraさん、オ・スア役に梅澤美波さん・川口ゆりなさん。

さらに新原泰佑さん、土井ケイトさん、吉田広大さん、秋沢健太朗さん、浅野雅博さん、佐戸井けん太さんら実力派俳優たちが集結しました。

プレスコールではまず、オープニングから、セロイが同級生グンウォンへの土下座を拒否し退学になる象徴的なシーンまでを披露。オープニングナンバー「梨泰院フリーダム」では多国籍で多文化な街・梨泰院で生きる若者たちがエネルギッシュなダンスで表現され、本作の世界観に惹き込まれます。

そしてセロイの原点となる、転校先の学校でのシーンへ。国内最大手飲食チェーン「長家」の御曹司グンウォンがクラスメイトをいじめているのを、誰もが見て見ぬふりをする中、同級生スアの静止を振り切って止めに入るセロイ。グンウォンの傍若無人な態度を前に思わず殴ってしまい、父であるチャン会長からグンウォンに土下座をして謝るよう迫られます。

しかしセロイは父から教わった「信念を持って生きる」という決意を胸に、土下座を拒否。その結果、「長家」グループに勤めていた父も会社を辞めることになってしまいます。

ここまでの展開をスピーディに描きながら、セロイの信念は大切に、繊細かつ力強く歌われます。小瀧さんは権力に動じない芯の強さを感じさせつつも、まだ10代のあどけなさも感じられるセロイに。

続いて1幕ラストのシーン、梨泰院でセロイが開いた店「クルバム」が成功し、法人化を決めて仲間たちと歌うナンバー「始まり」が披露されました。

グンウォンの乗っていたバイクに父が轢かれて亡くなり、怒りを止められずにまたグンウォンに暴力を振るい、刑務所に収容されたセロイ。出所から7年かけて資金を貯め、梨泰院で新たなスタートを切ったセロイの「生きていればその日は来る」という期待感が描かれます。

活気溢れる彼らを、ダンスやダイナミックなセット転換で描いていく楽しいナンバー。プレスコールでは夢に向かって成長していくエネルギッシュなセロイが描かれましたが、小瀧さんが復讐に燃えるセロイをどう演じていくかも楽しみです。

「梨泰院のフリーダムさを楽しめる」「今を生きる私たちの話」

囲み会見には小瀧望さん、和希そらさん、saraさん、梅澤美波さん、川口ゆりなさんが登壇しました。

パク・セロイを演じる小瀧さんは「ギリギリまで改善・変更があり、初演の大変さを痛感した2ヶ月」と稽古期間を振り返りながら、役作りについて「とにかく原作を読み込みました。ドラマではパク・ソジュンさんが演じていますが、僕はミュージカル版のセロイなので、僕なりのセロイ像や自分のやり方でやってみようと思ってから、少し役に向き合うことに対して気持ちが楽になりました。世界的なヒット作品なのでもちろんプレッシャーはあるんですけれど、信頼できるスタッフの方と仲間と一緒に、自分といかに毎日向き合っていくかだけを考えました」と語ります。

また「上演時間は休憩を含め2時間45分くらいだと思うんですけれど、舞台上で描かれる年数は本当に長いんですよ。17〜8年ぐらいやるので、(登場人物たちの)成長する姿を感じて欲しいですし、色々なジャンルの音楽があり、聞き心地の良いメロディーばかりで本当に素晴らしいです。またカイルさんの生命力とエネルギー溢れる振付が詰め込まれているので、オープニングから心を鷲掴みにしたい」と意気込みました。

和希そらさんは本作の魅力について、「歌詞にも出てくる梨泰院のフリーダムさを、視覚でも聴覚でも心でもお楽しみいただける作品になっていますので、実際に韓国の梨泰院に来たぞという気持ちで観劇していただければ」とアピール。

Wキャストでイソを演じるsaraさんは「今を生きる私たちの話だと思います。時代設定もそうですし、舞台になることで登場人物が本当にこの場に生きていて。会話して、悩んで、戦っていくということがここで行われて、お客様も同じ時間を過ごしていく。『梨泰院クラス』は友情や成長、恋愛、そしてどう生きていくか、何を信じて生きていくかという一生悩み続けるようなテーマが入っているので、お客様も一緒に豊かさや苦しさを共有できる時間になるんじゃないかと思います」と舞台版ならではの魅力を語りました。

オ・スア役の梅澤美波さんは作品について「人間くささのオンパレード」と表現。「みんな自分の正義や信念を持って生きているんですけれど、時に間違ってしまったり、綺麗な生き方をしていなくて、色々なものと葛藤しながら生きているのが凄く愛おしくて。悪く見えるところも憎めない、愛おしい瞬間を1人1人から感じられると思うし、エネルギーももらえると思います。1人1人に感情移入して見てもらえたら」とキャラクターの魅力を力強く語ります。

スア役はドラマで「推しだった」という川口ゆりなさん。本作について「梨泰院の多国籍・自由さが色鮮やかに表現されている作品だと思いますし、登場人物全員が本当に個性豊かで、それぞれが自分の中の生き方を真っ直ぐに生き抜いているキャラクターたちなので、そこを楽しんでいただきたいですし、音楽でエネルギーや迫力を届けられると思う」と語ります。

稽古は和やかな雰囲気で進んだそうで、梅澤さんは座長の小瀧さんについて「凄く自然体でフラットに稽古場にいてくださったんですけれど、凄く顔が赤くなるんですよ。もちろんセロイなので稽古場でも注目を浴びるし、褒められると耳まで真っ赤になって。そのピュアさが“めっちゃセロイだな”と印象的に感じていました」と明かします。

さらにsaraさんが「楽曲数も多く、物語の中心としてずっとこの作品を担っている中でそれでも疲れを見せず、私達がその大変さを忘れてしまうぐらい自然体で真ん中にいてくださった」と称賛すると「ジーン」と噛み締める小瀧さんでした。

川口ゆりなさんは初舞台・初ミュージカルということで「稽古場がどんな空気感になるのか未知数でドキドキしていたんですけれど、稽古に入る前に小瀧さんがみんなでコミュニケーションを取る場を作ってくれて、稽古に繋がる温かい空気を作ってくださいました。私は年齢がカンパニーで下から2番目くらいなのですが、みんなで芝居や作品に対して対等に意見を交換できるような環境を作ってくださって、とっても助かりました」と小瀧さんの現場作りについてお話。

小瀧さんは「楽しく真剣にというのが僕のモットーで、稽古場に来るのが楽しみであってほしいという思いがあるんです。稽古場は凄く神聖な場所ですけれど、楽しいから生み出されるものもきっとあると思うし、楽しく真剣に向き合う現場にしたいなと思って、早い段階で皆さんとコミュニケーションを取るようにしました。食事会もありましたし、稽古場でもそうしました」と思いを語りました。

また韓国やニューヨークで活躍するクリエイティブスタッフが集結した本作での稽古場は、「多文化で多様性溢れる梨泰院のような現場だった」と梅澤さん。日本語・英語・韓国語が飛び交う多言語な現場だったそうですが、saraさんは「言語の壁は不思議なくらい感じなかったです。みんなが自由でありながら情熱的で、同じ方向を向いていたので、言語や文化を超えてみんなで走ってこられた感覚があります」と稽古期間を振り返ります。

和希さんも「1場面1場面、トライ&エラーを繰り返しながらギリギリまで、今日の今日までこうしようか、ああしようか、とセッションがあり、それぞれの役割を全うして模索する稽古でした」とカンパニーの様子を明かしました。

最後に小瀧さんから「世界初演が本日から開幕します。ついにこの日が来たかという思いでいっぱいですし、今日からこの舞台で、信頼できるカンパニーと共にスタートを切ることを、本当に幸せに思います。このミュージカルは、どこか“ここにしかない良さ”みたいなものがたくさん詰まっていると思いますし、ダイナミックでドラマチックで、時間があっという間に過ぎると思います。皆さんに楽しんでいただけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします」とメッセージが贈られ、会見が締め括られました。

撮影:蓮見徹

ミュージカル『梨泰院クラス』は2025年6月9日(日)から6月30日(月)まで東京建物Brillia HALLにて上演。7月6日(日)から11日(金)は大阪・東京建物 Brillia HALL 箕面 大ホール(箕面市立文化芸能劇場)、7月18日(金)から21日(月祝)は愛知・アイプラザ豊橋にて上演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

小瀧さんがお話しされた通り、エネルギッシュなオープニングナンバーが本作の世界観、そしてセロイの生き様を体現しているように感じました。