秋の訪れとともに、赤坂サカスに再び「紫テント」が帰ってきます。2025年10月5日から26日まで開催される「赤坂芸術祭2025」は、演劇やパフォーマンスを軸に、多様な人々と表現が交わるフェスティバルです。非日常の空間で、赤坂がどのように芸術と人々をつなぐ場所へと変わるのか、ご紹介していきます。

「赤坂芸術祭2025」とは?

赤坂サカス広場に建てられた紫テント(赤坂舞台芸術祭2024より)

2025年10月5日(日)から26日(日)まで、東京・赤坂サカス広場に設けられた象徴的な「紫テント」を舞台に、「赤坂芸術祭2025」が開催されます。ちなみに紫テントとは、アングラ演劇の旗手である新宿梁山泊の公演会場です。

このイベントは、昨年スタートした「赤坂舞台芸術祭」の名称から改められ、多様なアートや演劇、芸能を横断的に発信する芸術祭として、華やかにリニューアルを果たしました。主催は一般社団法人銀座舞台芸術祭で、実行委員長には石本千明さんが就任し、赤坂が文化の交差点となる想いを背負って運営が進められます。

メイン公演として寺山修司の初期戯曲『血は立ったまま眠っている』が据えられ、10月5日(日)から16日(木)まで上演。演劇作品としての深みと歴史性が、紫テントという非日常空間で新たに息を吹き返します。

また、演劇界の未来を担う中堅・若手団体が日替わりで登壇する「crossing公演」(10月20日〜26日)、6団体によるオムニバス形式の「challenge公演」(10月19日)といった多彩なプログラムも準備されており、公募による参加も行われます。芸術に触れる機会が誰にとっても開かれた芸術祭として注目です!

“Crossing”が生み出す出会いと表現

昨年に続いて掲げられる「Crossing」というテーマは、この芸術祭の核となる理念です。語義には「横断」「交差点」「異種交配」など多面的な意味が込められ、その先に期待されるのは日本と海外、ベテランと若手、演劇人と観客、東京と地方…といった異なる境界を超えた出会いです。まさに、舞台上だけでなく人と人、人と文化が交わる場を創出する試みとなっています。

この精神はプログラム構成にも反映されています。新たな創造力や視点を引き出す「challenge公演」では、若手6団体が日替わりでテント芝居に挑戦。一方で「crossing公演」は、中堅団体が世代やジャンルを超えた上演形態に挑む場です。これらはいずれも、演劇というジャンルに留まらず、多様な表現の可能性を開く場となるでしょう。

さらに、「赤坂舞台芸術祭」から「赤坂芸術祭」への名称変更は、演劇以外の芸術・芸能も含むホスピタリティを強める意図を示しており、「Crossing」の輪がより広がっていくビジョンを象徴しています。街に溶け込む文化祭として、新たな交流と創造の渦を巻き起こす期待が高まりますね。

注目プログラム『血は立ったまま眠っている』

芸術祭のメインを飾るのは、寺山修司による初期の戯曲『血は立ったまま眠っている』。安保闘争(※)の時代を舞台に、兄弟のように寄り添う若きテロリスト2人を軸として、若者たちの葛藤や怒りを描いた作品です。「一本の木にも流れている血がある そこでは血は立ったまま眠っている」という寺山の詩から生まれました。

※安保闘争:1959~60年と1970年の2度にわたり、日本で日米安全保障条約の改定に反対して起きた大規模な反政府・反米運動で、国会議員や労働者、学生、市民、左翼・新左翼の活動家らが参加したデモや抗議行動の総称です。

1960年に発表された本作は、中屋敷法仁さんの演出により、紫テントという空間で蘇ります。演劇の原点と野心が交錯する作品が、演劇ファンだけでなく、演劇の奥底に触れてみたいすべての観客に、強烈なインパクトを与えるはずです。

上演期間は10月5日(日)から16日(木)までの11日間。紫テントならではの親密で臨場感に満ちた空間は、観る者の心に残る忘れがたい舞台体験を提供することでしょう。作品自体が持つ詩的かつ挑戦的な世界観と、演出家の視点が融合し、ここでしか味わえない出会いが待っています。

「赤坂芸術祭2025」は、2025年10月5日(日)から26日(日)まで、東京・赤坂サカス広場で開催予定です。詳細は公式Xなどをご確認ください。

さよ

紫テントの下に集う人々を想像すると、演劇を「観る」だけでなく「共有する」体験として楽しめそうと感じます。普段は劇場に足を運ばない方でも、街の中でふと出会う演劇が日常を少し豊かにしてくれるのではないでしょうか。