2026年1月2月、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAを皮切りに大阪・愛知・福岡にて『サド侯爵夫人』の上演が決定しました。三島由紀夫の名作を、演出・宮本亞門さん、主演・成宮寛貴さん、オールメール(全員男性)キャストにて描きます。

「破壊からこそ生まれる美の昂奮を」

宮本亞門さんが演出を務めた『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』で初舞台を踏み、芸能界デビューをした成宮寛貴さん。2人が25年ぶりの再タッグで挑むのは、世界中で愛される日本文学を代表する作家、三島由紀夫の名作『サド侯爵夫人』。

サド侯爵自身は姿を見せず、その周りを取り巻く女性たちの会話劇で進む物語を、オールメール(全員男性)キャストで描きます。

18世紀フランスを舞台に、悪徳の限りを尽くしたサド侯爵を待ち続ける、貞淑な妻・ルネ/サド侯爵夫人役に成宮寛貴さん、サン・フォン伯爵夫人役に東出昌大さん、ルネの妹・アンヌ役に三浦涼介さん、ルネの友人・シミアーヌ男爵夫人役に大鶴佐助さん、女中・シャルロット役に首藤康之さん、そしてルネの母・モントルイユ役を加藤雅也さん。

実力派俳優が集結し、愛や忠誠、道徳、人間の欲望と倫理の対立を炙り出します。

<宮本亞門コメント>
念願であった日本演劇界の頂点とも言える、三島由紀夫氏の『サド侯爵夫人』を新たに創り出す喜びに胸が震えています。
成宮君をはじめとする個性あふれる俳優たちと共に、危殆と破壊の縁に立ち上がる高揚を、かつてない舞台として結晶させお見せします。
来年一月――破壊からこそ生まれる美の昂奮を、どうぞご期待ください。

<成宮寛貴コメント>
再び舞台という“生”の場所に立てることに、静かな高揚を感じています。
『サド侯爵夫人』という極限まで研ぎ澄まされた世界の中で、人間の愛と狂気、そして内面に潜む声を辿っていく時間になると思います。
今回、12年ぶりに舞台に挑戦します。
三島由紀夫の戯曲に向き合うことは、俳優にとって大きな試練であり喜びでもあります。
鋭く精緻な言葉に呑み込まれるのではなく、自分の身体と声を通してどう響かせられるか──その覚悟をもって臨みたいと思います。
そして演出を務めてくださるのは、僕が俳優デビューした舞台でもご一緒した宮本亞門さん。
あのときから年月を重ね、25年ぶりに再びこのタイミングでタッグを組めることに、運命的な巡り合わせを感じています。
俳優という仕事に再び身を委ねるなかで、今の自分だからこそ触れられる感情や言葉があると信じています。
劇場という濃密な空間で、観客の皆さんと同じ時間を生きられることを心から楽しみにしています。

<ストーリー>
第1幕 1772年秋。パリのモントルイユ夫人邸のサロン。
サド侯爵の妻ルネの母親であるモントルイユ夫人は、娘婿であるアルフォンス(サド侯爵)の無罪を勝ち取るため、二人の女性を邸宅に招く。
一人は敬虔なクリスチャンのシミアーヌ男爵夫人、もう一人は性的に奔放なサン・フォン伯爵夫人。
アルフォンスは数々の乱行と娼婦虐待により当局に追われており、モントルイユ夫人は彼女たちの力を借りて裏工作をしようとする。そこにルネ(サド侯爵夫人)が現れる。
モントルイユ夫人は娘に離婚を勧めるが、ルネはそれを拒否し、寝室へ退室してしまう。
その後、ルネの妹アンヌがイタリア旅行から帰宅。
アンヌは、イタリアでアルフォンスと性的関係を持ったこと、そして姉ルネもその事実を知っていることをモントルイユ夫人に告白する。
この告白に激怒したモントルイユ夫人は、態度を豹変。
シミアーヌとサン・フォンに依頼した裏工作を取り消す手紙を家政婦シャルロットに託し、自らは国王にアルフォンスの居場所を密告し、逮捕と投獄を嘆願する手紙を届けに行くことを決意する。

第2幕 6年後の1778年9月、パリのモントルイユ夫人邸のサロン。
ルネは、妹アンヌから夫アルフォンス(サド侯爵)の犯罪が罰金刑で済むという再審結果を聞き、歓喜する。実はルネは5年前、アルフォンスの脱獄を成功させ、有罪判決の破棄に奔走していた。
しかし、モントルイユ夫人の策略により、アルフォンスは再逮捕されていた。
ところが、喜びもつかの間、再審で釈放が決まった直後、アルフォンスは王家の警官に捕らえられ、より厳重な牢獄へ送られてしまう。
サン・フォン伯爵夫人から、これが全てモントルイユ夫人の策略だと知らされたルネ夫人は、母に激しく詰め寄る。二人の間では激しい言葉の応酬が繰り広げられる。
モントルイユ夫人は、夫を牢獄に入れておけばルネ夫人は嫉妬せずに済むはずなのに、なぜ自由を願うのかと問う。ルネは「貞淑」という母の教えに従っていると答えるが、モントルイユ夫人は納得しない。
モントルイユ夫人は密偵からの報告で、アルフォンスが脱獄していた時、ルネが彼と不貞行為に及んでいたことを知っていたのだ。それをルネに告げるが、彼女は動じない。
ルネは母モントルイユ夫人に対して「あなた方夫婦は偽善としきたりの愛で道徳や正常さと共に生きている」と批判し、「アルフォンスは私だったのです」と衝撃的な告白をする。

第3幕 フランス革命勃発から9ヶ月後のパリ、1790年4月。モントルイユ夫人邸のサロン
革命の混乱の中、貴族たちは身の危険を感じていた。
モントルイユ夫人は、牢獄に繋がれたサド侯爵(アルフォンス)を身内に持つことで、免罪符となり安全が確保できると計算していた。
かつてサド侯爵を激しく嫌悪していた彼女だが、革命という時代の変化の中で、彼の出所を待ち望むようになっていた。
一方、ルネ夫人は、夫の釈放が近づく中、修道院に入ることを決意する。
彼女は、夫が獄中で書いた小説『ジュスティーヌ』を読み、自らの認識が誤っていたことに気づく。
『ジュスティーヌ』は、悪徳を貫く姉が幸福を掴み、美徳を守る妹が不幸に見舞われる物語である。
ルネは、かつて夫を「悪の象徴」と捉えていたが、実際には自らが「美徳の象徴」であるジュスティーヌであったと悟る。
サド侯爵は、もはや悪行を超え、悪の掟そのものを追求する存在となっていた。 彼はあらゆる悪をかき集め、天国への裏階段を自分の欲望のままに築き、「永遠」に手を伸ばそうとしている。ルネは、自分たちが生きる世界が、サド侯爵が創造した世界であることに気づき、彼が神の領域にまで達したと悟る。
モントルイユ夫人が神の裁きを恐れる中、ルネ夫人は、神がサド侯爵にその役割を与えたのかもしれないと考え、修道院で神意を問う決意を固める。
そして、物乞いのように変わり果てたサド侯爵が訪ねてきた時、ルネ夫人は会うことを拒否し、「侯爵夫人とは二度と会うことはないだろう」と告げるのだった。

『サド侯爵夫人』は2026年1月8日(木)から2月1日(日)まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、2月5日(木)から8日(日)まで森ノ宮ピロティホール、2月13日(金)・14日(土)にとよはし芸術劇場、2月17日(火)・18日(水) に福岡市民ホール中ホールにて上演されます。公式HPはこちら

SHEIN