イギリス演劇界の奇才、サイモン・スティーヴンスが描く衝撃作『スリー・キングダムス Three Kingdoms』が、ついに日本に上陸します。グローバリズムと資本主義の影、人間の尊厳といった問いを突きつけるこの作品は、観る者を容赦なく「現代社会の闇」へ引き込みます。初めて演劇に触れる人にとっても、伝統ある劇場で世界基準の問題作に立ち会う体験は、忘れられない記憶になることでしょう。

『スリー・キングダムス Three Kingdoms』とは?

『スリー・キングダムス Three Kingdoms』は、イギリス演劇界の奇才、サイモン・スティーヴンスによるサスペンス作品です。

ロンドンのテムズ川で発見された女性の他殺体。この殺人事件を追う2人のイギリス人刑事は、捜査を進めるうちに、ヨーロッパ全土に広がる国際的な人身売買組織の存在にたどり着きます。ドイツ、そしてエストニアへと舞台を移し、国境と言語の壁を越えながら、彼らは資本主義の裏に潜む人間の暗部と対峙していくことに……

イギリス、ドイツ、エストニアのクリエイターによる共同制作プロジェクトとして誕生した本作。イギリス初演時は、3ヵ国から俳優が集結し、3ヵ国語を用いながら、観客を現代社会の闇へと引き込みました。その挑戦的な内容が賛否両論を呼び、大きな話題となったそうです。

サイモン・スティーヴンスの衝撃作『スリー・キングダムス Three Kingdoms』は、単なるミステリーではなく、善と悪の曖昧さ、グローバリズムと資本主義がもたらす影、そして人間の尊厳を観客に問いかけます。客席のわたしたちに、現代社会への鋭い眼差しが何を見せてくれるのでしょうか?

日本初演の魅力を徹底解説!

『スリー・キングダムス Three Kingdoms』の日本初演を、新国立劇場演劇芸術参与の上村聡史さんが演出します。読売演劇大賞最優秀演出家賞(第22回・第29回)などを受賞してきた、非常に実力のある演出家です。

サイモン・スティーヴンスの戯曲を2度手掛け、その同時代性に深く共感している上村さん。彼の演出には「過去と今は地続きである」という軸を感じるので、本作でどう表現されるのか楽しみです!

デヴィッド・リンチ監督の映画『インランド・エンパイア』に影響を受けたことを踏まえ、上村さんは次のようにコメントしています。

顔のない死体が発見された事件から端を発していくこの物語は、サスペンスホラーの体裁を取りながら、どこか悪夢に導かれていくような様相を呈していきます。演劇の魅力のひとつでもある魔術的な陶酔を、演出でいかんなく醸し出していくとともに、ヨーロッパ、いわゆる先進国の闇を恐怖として感じてもらえるような、2025年の演劇界で、攻めた作品を披露できればと思います。

念願の日本初演で、わたしたちはきっと国際的なテーマに直面し、恐ろしさをリアルに体験するはずです。挑戦的サスペンスを、目で、耳で、肌で、ぜひ味わい尽くしてくださいね。

総勢12名のキャストが織りなす壮大なサスペンス

ここからは総勢12名のキャストをご紹介していきましょう。

物語の発端となる殺人事件を捜査する、主人公のイギリス人刑事、イグネイシアス役に伊礼彼方さん。新国立劇場の主催公演には、『あわれ彼女は娼婦』(2016年)以来の出演です。

幼少期から音楽活動を始め、舞台からライブコンサートまで、ジャンルを問わず活躍してきた伊礼さん。役柄が持つ弱さや本音、背景まで表現する演技が高く評価されています。イグネイシアスには暗い過去があるようなので、伊礼さんがどのように役柄を作り上げるのか、とても気になってしまいますね。

相棒の刑事、チャーリー役は浅野雅博さん。事件を追っていく先で出会うドイツ人刑事、シュテッフェンを伊達暁さんが演じます。

また、イグネイシアスのパートナー、キャロラインには夏子さん。観客と舞台をつなぐミステリアスな存在として音月桂が出演予定です。

ほかに佐藤祐基さん、竪山隼太さん、坂本慶介さん、森川由樹さん、鈴木勝大さん、八頭司悠友さん、近藤隼さんの出演も決定しました。3カ国にまたがる壮大なサスペンスを、実力あるキャストたちがどのように織りなすのか。期待がぐんぐん高まります!

上演が近づくなか、伊礼彼方さんは次のようにコメントしています。

12月には似つかわしくない内容かもしれませんが、ぜひ今年最後に「とんでもない」どんでん返しを味わいに来てください。
劇場でお待ちしております。

舞台『スリー・キングダムス Three Kingdoms』は、2025年12月2日(火)から14日(日)まで、新国立劇場 中劇場で上演予定です。暴力表現、性的表現、性差別、流血表現が含まれますので、苦手な方はご注意をお願いします。そのほか詳しい情報は公式サイトをご確認ください。

さよ

12月10日(水)にシアタートークが予定されているとのこと......!稽古場の様子や役柄など、普段は知ることのできない「演劇の生」が展開される企画です。満席時は入場制限があるそうなので、気になる方はぜひお早めに足をお運びくださいね。