1年も終盤に差し掛かり、心の疲れが溜まってきている方も多いと思います。そこでおすすめしたいのが「笑いながら生きる勇気をもらえる」作品です。今回は、笑いとスリル、そして「生きることの煌めき」を届けてくれる、舞台『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』をご紹介します。
舞台『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』のあらすじ
刑務所の雑居房で知り合った戸並健次らは、出所するや誘拐の下調べにかかる。狙うは紀州随一の大富豪、柳川家の当主とし子刀自(※)。齢82を重ねてなお矍鑠と周りを魅了する女丈夫であるという。実は健次は柳川家が支援する孤児園の出身で、とし子との忘れられない思い出があった。
さて、ある夏の日、健次率いる若者グループにとし子が誘拐される。誘拐の報に、とし子を生涯最大の恩人と敬う、凄腕警察本部長、井狩大五郎(風間杜夫)が捜査に乗り出す。一方、誘拐犯が要求しようとしていた身代金が五千万と知ったとし子は激昂、百億にしろと言い放ち、3人を従え、自ら身代金強奪の指揮をとり始める。まずは、柳川家の家政婦として仕えていたとし子を慕うくーちゃん宅に押し寄せ、アジトにしてしまう。かくして4人の役者は揃い、前代未聞の大誘拐劇が繰り広げられる。
さて、とし子刀自の本当の狙いとはいったい何なのか。
この誘拐劇の結末やいかに?!
※刀自:敬愛を込めて年輩の女性を呼ぶ称。名前の後に付けて、敬称としても用いられる。
ドタバタ劇の綱渡り感を味わう体験
原作は、天藤真の推理小説『大誘拐』(1978年)。82歳の小柄な老婆とし子が、国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を奪うという痛快なストーリーです。1991年には『大誘拐 RAINBOW KIDS』のタイトルで映画化されました。
これを大胆に舞台化した『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』は、2024年の初演で、累計14,000人の観客を魅了しました。原作ファンからも「期待以上の思いもよらない演出に、ワクワクが止まりませんでした」といった感想が飛び出したほどです。
そうした初演の好評を受けて、早くも2025年の再演が決定しました!前回に引き続き、中山優馬さん、柴田理恵さん、風間杜夫さん、白石加代子さんが出演します。世代も個性も異なる4人が、笑いとスリルの渦を巻き起こしてくれるのが楽しみです。
作品の魅力は、まさに「ドタバタ劇の綱渡り感」にあります。主人公・戸並健次は、誘拐を企てる若者グループのリーダーです。しかし、誘拐された82歳のとし子が主導権を握り、身代金を百億円に引き上げるという前代未聞の展開が繰り広げられます。きっと観客は、あっという間に物語へ引き込まれてしまうでしょう。
インタビューで中山さんは「キャストが4人しかいないので、自分の持ち場が崩れたら大変なことになるんですよ。その綱渡り感があります」と語ります。また、白石さんの圧倒的な存在感、柴田さんのキャラクター変化、風間さんの自由でスリリングな芝居が絡み合うことで、「まるでアトラクションに乗っているようなスピード感」が生まれます。(リリース資料より)
名優たちによるドタバタ劇は、「生の演劇の面白さ」をたっぷり味わせてくれます。息もつかせぬ綱渡りの中で、観客は抱腹絶倒しながら「未来への希望」を受け取り、じんわり胸を揺さぶられるはずです。
生きることの煌めきに満ちた舞台
舞台『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』は、笑いの奥に「生きることの煌めき」を感じさせる作品だと感じています。
物語の中心にいるのは、誘拐されたはずの老婦人・とし子。82歳ながら誰よりも強く、人生の酸いも甘いも知る「女丈夫」として、犯人たちを導いていきます。その存在感を体現する白石さんについては、中山さんが「人生が一言一言に込められていて、一瞬で飲み込まれてしまうような圧倒的なパワーを感じました」と語るほど。稽古で身につけられるものではない、長年培った人生経験と信念が、舞台全体を包み込みます。
一方、柴田さんは物語の緩急を支える要です。複数のキャラクターを自在に切り替え、喜怒哀楽を行き来する様はまさに職人技。本人は「不器用」と語りますが、愚直に稽古を重ね、探究心と演劇愛に満ちた姿勢は、共演者から「まるで少女のよう」と評されているそうです。
風間さんは、脚本に縛られすぎず、その瞬間の感情と空気を捉えるスタイルで、緊張と解放のバランスを自在に操ります。「役と自分の間で共存する場所を見つけるのが役者の遊び方」と語る彼の演技は、常にスリリングで、共演者をもワクワクさせます。
そして、中山さんが演じる戸並健次は、罪を犯しながらもどこか憎めない、人間味あふれる男。愛に飢えながらも愛を知り、やがて誘拐された相手に心を動かされていく姿を通して、「人は何歳になっても変わり、輝ける」というメッセージが見えてきます。中山さんも「生きることはこんなにも煌めきのあることなんだということを受け取れる舞台」と話しました。
4人が紡ぐ笑いと感動は、ただの喜劇を超えて、人生の豊かさを描き出します。抱腹絶倒の中に、観客がふと自分の人生を重ねてしまうような時間になることでしょう。
舞台『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』は現在全国ツアー公演中。11月7日(金)8日(土)には大阪・サンケイホールブリーゼ、11月9日(日)愛知・安城市民会館 サルビアホール、11月29日(土)30日(日)には神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて上演されます。詳しい情報は公式サイトをご確認ください。
2025年の最後、劇場で目撃する「大誘拐」は、生きることの面白さを再確認させてくれるはずです。役者の生の芝居が生み出すパワーを、ぜひ全身で受け止めてほしいと思います!


















