池田亮さん率いるゆうめいは、結成10周年を記念して代表作『養生』の全国ツアー公演を開催。2025年11月1日(土)から12月28日(日)にかけて、京都・三重・福島・北海道・高知・神奈川の6都市を巡演中です。
10周年の集大成は進化した代表作の全国ツアー公演
舞台作品・美術・映像を制作する団体として、2015年に設立された「ゆうめい」。名前の由来は漢字の「夕」と「明」で、「暗くなることから明るくなるまでのこと」を意味するといいます。メンバー自身の体験や周囲の人々からの「自分のことを話したい」という声を出発点とし、多種多様に展開していく環境と可能性をリアルに描き出すところが特徴。表現と発表を繰り返す中で生じる他者との共鳴、あるいは反発から、現実に新たな視点を見つけようとしています。
代表を務めるのは、劇作家・演出家・脚本家に加えて造形作家の顔も持つ池田亮さんです。ゆうめいを立ち上げて以来、全作品において作・演出のみならず、多くの美術も手掛けています。近年は、2023年上演の舞台「ハートランド」で第68回岸田國士戯曲賞を受賞。
そして、2024年に第34回下北沢演劇祭参加作品として下北沢 ザ・スズナリで初演された『養生』が大きな反響を呼び、2025年の第32回読売演劇大賞で優秀演出家賞を獲得しました。本作では、ゆうめいの原体験をもとに百貨店やショッピングモールの夜勤現場が舞台となっています。過去と現在を交錯させながら、ユーモアを交えつつそこで働く人々のままならない人生を鋭く捉えるストーリーで、観客の感情を揺さぶりました。
今回、ゆうめい結成10周年の集大成として、池田さんが代表作『養生』の戯曲・演出・美術をバージョンアップ。なんと、カンパニー初となる全国6都市でのツアー公演を行います。
この事業を進めるにあたって、ゆうめいでは経験したことや創作過程の資料をアーカイブとして残す予定。巡演する各土地や会場にあわせて、創作手法を模索するという方針もユニークです。また、公演終了後には映像配信を実施し、より多くの人に鑑賞する機会を提供するとのこと。
<あらすじ>
美大生の橋本(本橋龍)と、大学生の阿部(丙次)はショッピングモールや百貨店の内装を行う夜勤バイトで出会った。正社員のことをネタに「卒業したら絶対ああならない」と陰で笑い合う。
数年後、二人はその夜勤の正社員になっていた。
阿部は家庭を持ち、辞めそうな新入社員の清水(黒澤多生)を教育する。作家を目指していた橋本は、著名作家となった同期が百貨店の人気ギャラリーで個展を開くことを知り、その広告設営を担う。
夕方から明け方の夜勤劇。
キャストは初演より続投!
2025年版「ゆうめい」には、初演と同じキャスト3名が出演します。
かつて美大生だった橋本を演じるのは、演劇集団・ウンゲツィーファを主宰する演劇作家の本橋 龍さんです。独自の作風で演劇の可能性を探求するウンゲツィーファは2024年に10周年を迎え、記念公演の「8hのメビウス」が話題を呼びました。本橋さんが登場人物の抱える葛藤とどう向き合い、表現するのか注目です。
橋本と同じく夜勤バイトから正社員となった阿部役には、ゆうめいの一員である丙次(へいじ)さんが続投します。大学時代に俳優活動を始め、2024年に田中祐希に改名。池田さんとともに旗揚げしたゆうめいでは、数多くの作品で主要な役柄を務めてきました。一方で、劇団・ハイバイや演劇ユニット・玉田企画、テアトロコントなど外部公演での経験も重ねています。
さらに、青年団に所属する俳優の黒澤多生さんも引き続き参加。黒澤さんはゆうめいとウンゲツィーファ双方の作品における常連でもあります。お互いを知っている仲だからこそ、演出の意図を汲み取りながら自らの解釈をより深めて演じてくれるでしょう。
そして、初演から関わるスタッフも今回の全国ツアー公演を支えます。
照明担当の阿部将之さんは、舞台や演劇の照明デザインを主軸に活動する合同会社LICHT-ER(リヒター)の代表。これまでに庭劇団ペニノの作品や“黒”の可能性に着目した音楽朗読劇「READING HIGH noir」など、こだわりの強いビジュアル演出に応えてきた手腕を発揮します。また、音響を担当する今里愛さんは、舞台音響家の佐藤こうじさんが設立したSugar Soundに所属。内面のリアルな情感を表す音の使い方にも耳を澄ませてみたいところです。
ゆうめい10周年全国ツアー公演『養生』は11月1日(土)より開幕。すでに京都・三重での公演を終え、11月29日(土)・30日(日)にいわき芸術文化交流館アリオス GSユアサいわき小劇場での福島公演を控えています。その後は12月6日(土)・7日(日)に札幌市民交流プラザ3階のクリエイティブスタジオで北海道公演を、12月12日(金)・13日(土)に高知県立県民文化ホール オレンジホールで高知公演を実施予定。最後を飾る神奈川公演は、12月19日(金)から28日(日)まで、KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演されます。なお上演後に池田さんと出演者、ゲストによるアフタートークを開催する回もあるので気になる方はチェックしてみてくださいね。そのほか詳細は公式HPをご確認ください。
作り手の実体験がベースとなった物語だけに、観客にとって自身と重なる部分も多々あるのでは。そこで何をどう感じたのか、内側を見つめてみることが演劇の醍醐味なのかもしれません。


















