人種差別に性差別、セクハラ、パワハラ、モラハラ…。これまで当たり前に使っていた言葉が差別になることもあり、言葉を発するにも気を遣う近頃。もちろんお互いを思いやることは必要だけれど、みんなそれぞれ自分は“少し差別主義者”なんだ、と認め合うことで生きやすくなるのかも?そんな風に思わせてくれるミュージカル『アベニューQ』をご紹介します!
禁句の連続?!気楽に今を生きよう
舞台は、ニューヨークの街「アベニューQ」。ニューヨークではアルファベットが下がっていくと低所得層になっていくというイメージがあり、アベニューQでは無職や問題を抱えている人々とパペット達が暮らす街。(Qは実在しません)
様々な差別や問題に関して、みんなが“少し差別主義者”をキーワードに、ズバズバと禁句を言いまくるという大胆なコメディミュージカルです。相手を蔑むのではなく、自身が差別主義者な部分があることを認める。お互いにディスりながら気楽に生きる。だって「Everything in life is only for now」、良いことも悪いことも、人生の全ては今だけなんだから。死ぬことと税金の支払い以外は。
あの教育番組を彷彿とさせるパペットたちが人間と共に共存する独特な世界観も作品の魅力の一つ。可愛らしいパペットが毒舌を吐くのはギャップでもあり、作品の尖を緩和させる要素でもあります。
私が「real Japanese」よ!生きてて良かったと思えた役
作中には日本人の「クリスマスイブ」役があり、実は私もアメリカの舞台でその役を演じたことがあります。アメリカに来たものの、元々「私なんて」と自信がなかった私。しかしこの作品を日本人としてどうしても演じたい!そんな思いで、オーディションで「I am real Japanese!」とアピール。日本人の私に日本人役をやらせて!と主張したのです。もちろん人種差別的な意味合いでの発言ではありません。自分の殻を破り、作品の真意を汲み取った一言がウケたのか、私は無事クリスマスイブ役を演じることができました。
「私は夢を抱いてアメリカにやって来た」と歌う場面は、まさに自分の境遇にぴったり。この作品に、そしてこの役に出会えて、生きてて良かった。そう思えた作品でした。
2010年には日本上陸も果たした『アベニューQ』。ブロードウェイでは2019年に上演が終了してしまいましたが、公演の一部をYouTubeで見ることができます。ぜひその世界観を楽しんでみてください。