ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』が2026年12月に埼玉にて開幕し、茨城・愛知・大阪・東京の5都市でツアー公演を行います。5年の時を経た再演では新しいメンバーも加わり、衝撃的な物語がより進化して帰ってきます。
愛と欲望、狂気が交錯する―“切り裂きジャック”を描く衝撃のミュージカル
“切り裂きジャック”と聞くと、19世紀末のイギリス・ロンドンで起こった連続殺人事件の犯人に思い当たる方も多いのではないでしょうか。一連の事件の犯人は現代に至るまで特定されておらず、小説やドラマなどさまざまなジャンルの作品で取り上げられてきました。
そんな世界的に有名な未解決事件を題材にしたミュージカルが『ジャック・ザ・リッパー』です。本作はもともとイヴァン・ヘジャさんの脚本、バッソ・パテールさんの作曲、エデュアルド・クレツマルさんの作詞によりチェコ共和国で創作されました。2009年に韓国でアレンジ版が上演されると、ロングランヒットを記録。その評判は日本にも及び、過去には韓国キャストによる日本公演が開催されて大盛況となりました。
2021年には白井晃さんによる演出のもと、日本版の初演が実現。霧に包まれたロンドンを舞台に展開するストーリーは先が読めず、美しくドラマチックな音楽とともに観客を圧倒し、魅了しました。
そして今回、5年ぶりの再演を果たします。凶行を繰り返す殺人犯の存在、事件を追う刑事が抱える葛藤と苦悩、スクープを渇望するマスコミの暴走。そんな混迷のなか、若き外科医と過酷な運命に抗う娼婦の純愛が事件と交錯し、物語は衝撃の結末へと加速していきます。
愛と欲望が幾重にも重なり合い、浮かび上がる「ジャック・ザ・リッパー」の真実とは。単なるミステリーに留まらない、濃密な人間ドラマが観る者の心を震わせます。
<あらすじ>
1888年、霧深いロンドン。そこには、娼婦だけを狙う残忍な殺人鬼 ジャック・ザ・リッパー(加藤和樹/堂珍嘉邦)の影が蠢いていた。捜査官アンダーソン(加藤和樹/松下優也)は非公開での捜査を試みるも、スクープに飢えたロンドンタイムズ紙の記者モンロー(田代万里生)の執拗な追及に遭う。麻薬に溺れ金に困窮していたアンダーソンは、ついに情報の切り売りという禁断の取引に応じてしまう。そんな中、アンダーソンの前に犯人を告発しに現れたのは、アメリカ帰りの若き外科医ダニエル(木村達成/平間壮一)だった。彼と元娼婦のグロリア(熊谷彩春)を繋ぐ、ジャックとの忌まわしき因縁。事件が混迷を極めるなか、アンダーソンは一か八かのおとり捜査を計画するが、新聞の1面にはあろうことか「ジャック・ザ・リッパー」の殺人予告が掲載される。かつての恋人ポリー(花乃まりあ)をも巻き込み、惨劇は加速していく。果たして、闇に潜む「ジャック」の正体とは?そして、その凶行に隠された真の目的とは――。
5年の時を経て、白井晃が再び暴き出す人間の恐れと欲望
2026年の再演で演出を担うのは、日本版の初演を創り上げた演出家・俳優の白井晃さんです。1983年から2002年まで「遊⦿機械/全自動シアター」を主宰。以降も演出家として、ストレートプレイから音楽劇、ミュージカル、オペラまで幅広く手掛けています。
その手腕が高く評価されていることは、第9・10回読売演劇大賞の優秀演出家賞や第10回佐川吉男音楽賞、第11回小田島雄志・翻訳戯曲賞など数々の受賞歴からもうかがえます。
また2022年4月より東京・世田谷パブリックシアターの芸術監督に就任。2024年の舞台『セツアンの善人』や2025年の舞台『シッダールタ』、2026年6月に上演された舞台『レディエント・バーミン Radiant Vermin』など同劇場主催の公演で数多く演出に携わっています。
白井さんは本作について、人間の内面における葛藤や社会の歪みを描いた深いメッセージが潜んでいると語っています。19世紀のロンドンという舞台設定は地理的にも時間的にも遠く離れているように感じられますが、ジャック・ザ・リッパーの存在が暴き出す恐れや欲望は、今を生きる私たちにも無縁ではありません。同時に、生々しい感情に翻弄されながらも懸命に生きる登場人物の姿から見出せる希望もあるはず、と信じたくなります。
再演にあたっては新たな視点も取り入れ、より一層深い感情とエネルギーを持って取り組みたいという白井さん。緻密に物語を読み解き、どのような演出で世界観を打ち出すのか、ぜひ自身の目で確かめてみてください。
5年を経て再び役と向き合う続投組、新たな風を吹き込む初参加キャスト
本作では、外科医のダニエルと刑事のアンダーソン、殺人鬼・ジャックがそれぞれWキャストとなっています。
ダニエル役を演じる1人は、初演と同じく木村達成さんです。2012年のデビュー以来、舞台やミュージカル、映像作品と多岐にわたって活動。2020年には白井さんが演出した音楽劇『銀河鉄道の夜』でストレートプレイに初挑戦し、その後も幅広い作品で存在感を示してきました。直近では、2026年2月に泉鏡花の長編小説をもとにした主演舞台『黒百合』にて、表と裏の顔を持つ美青年を演じた姿も記憶に新しいところ。ミュージカルへの参加は久しぶりですが、5年の時を経て、ダニエルという人物をどのように深化させるのかにも注目です。
もう1人のダニエル役には、新たに平間壮一さんが選ばれました。幼少期より培ったダンススキルを身体表現に活かし、数々の舞台やミュージカルに出演。近年は2021年と2024年にミュージカル『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』で、2024年と2026年には『無伴奏ソナタ-The Musical-』で連続して主役を任されるなど、ミュージカル俳優として確かな存在感を示しています。2027年4月には韓国の大ヒットミュージカル『メアリ・シェリー』への出演が決定。豊かな感性で捉える、平間さんならではのダニエル像に期待せずにはいられません。
アンダーソン役のWキャストには、加藤和樹さんと松下優也さんが続投。
加藤さんは、俳優のみならず歌手や声優としてもマルチな才能を発揮しています。ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、これまで『1789 -バスティーユの恋人たち-』や『フランケンシュタイン』『マタハリ』といった数々の人気作で主要な役を演じてきました。2021年にはミュージカル『ローマの休日』と『BARNUM』での演技が評価され、第46回菊田一夫演劇賞の演劇賞を受賞。今回、初演と同様に回替わりでジャック役も務めるとあって、それぞれの人物に対する解釈と演技にも注目です。
松下さんはソロアーティストとして活動する一方で、2009年に俳優デビュー。卓越した歌唱力と柔軟な表現力を武器に、ミュージカルを中心に活躍が光ります。2025年のミュージカル『キンキーブーツ』ではWキャストとなったローラ役を射止め、2026年5月には『Boop! The Musical』のドウェイン役でポップな世界観を盛り上げました。さらに2026年10月からは再演を望む声が多かった主演舞台『THE ALUCARD SHOW』が開幕。ミュージカル俳優としてますます活躍の幅を広げる松下さんが、本作に再び挑みます。
ジャック役のWキャストも初演からの続投となっていて、そのうち1人は先述の通り加藤さんが担います。
もう1人は歌手・俳優の堂珍嘉邦さんです。ボーカル・デュオ「CHEMISTRY」として人気を博し、2012年からは本格的にソロアーティスト活動も開始。また、2011年の音楽劇『醒めながら見る夢』で初舞台を踏んでからはミュージカル『RENT』や『アナスタシア』などに出演し、俳優としてのキャリアも築いています。今回のジャック役への再登板では、より深みを増した演技が見られるのではないでしょうか。
そして記者のモンロー役についても、引き続き田代万里生さんが演じます。声楽を学んで磨き抜かれた圧倒的な歌唱力に、繊細な表現力を併せ持つ実力派俳優。近年の主な出演作には2024年の『モダン・ミリー』、2025年の『ラブ・ネバー・ダイ』『エリザベート』など、名作や話題作が並びます。スクープを追い求めるあまり暴走していく記者・モンローを、どのような熱量で体現するのかにも注目です。
さらに今回、新たにカンパニーに加わるのが熊谷彩春さんと花乃まりあさんです。
元娼婦のグロリア役には、熊谷彩春さんがキャスティング。熊谷さんは2019年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のコゼット役に史上最年少で抜擢され、鮮烈なデビューを飾りました。以降、ミュージカルを中心に出演経験を積み、2025年のミュージカル『キンキーブーツ』や2026年の『破果』など多彩な作品に挑戦。2026年10月25日まで舞台『スクラップアンドコーラス』-君が灯したメロディー-に出演中です。
アンダーソンの元恋人であるポリー役は、花乃まりあさん。宝塚歌劇団花組のトップ娘役を務め、退団後も舞台やミュージカルを中心に活躍しています。2026年8月に大千秋楽を迎えたミュージカル『愛の不時着』では、日本版の初代ヒロイン役を好演。また11月には、東京・国立劇場の芸術監督に就任する上村聡史さんによるシーズンオープニング作品『巨匠とマルガリータ』への出演が控えています。
ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は、2026年12月17日(木)から21日(月)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演。その後は12月26日(土)・27日(日)に茨城・水戸市民会館 グロービスホール、2027年1月16日(土)・17日(日)に愛知・一宮市民会館 大ホール、1月22日(金)から24日(日)まで大阪・フェニーチェ堺 大ホールでツアー公演を実施。1月29日(金)から2月7日(日)まで東京・新宿文化センター 大ホールにて上演されます。公式HPはこちら
犯人不明で未解決という、なんともミステリアスな切り裂きジャック事件。そこに愛や欲望、狂気を絡めることで人間の内面をあぶり出そうとする本作に、筆者も大いに興味を引かれています!



















