『エリザベート』『モーツァルト!』『マリー・アントワネット』など日本のミュージカル界の中でも絶大な支持を集める作品を手がけてきた、ミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさんのゴールデンコンビ。なんと構想10年以上の歳月を費やして制作した新作『ベートーヴェン』が12月、日本にやってきます。

名曲と<ゴースト>の存在で描き出す、ベートーヴェンの愛の物語

「エリーゼのために」「月光」「悲愴」「運命」「第九」…クラシックに親しくなくとも、世界中の誰もが一度は耳にしたことがあるであろうベートヴェンの音楽。「楽聖」と称され、輝かしい栄光を勝ち得た一方で、アルコール依存症の父親からの暴力や年と共に悪化していった難聴など、苦悩も多かった彼の人生はこれまでも多くの作品として描かれてきました。

今回日生劇場12月公演として上演されるのは、『エリザベート』『モーツァルト!』『マリー・アントワネット』などで知られる音楽コンビ ミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさんが、10年以上の構想期間を経て制作したもの。ベートーヴェンの「愛」をテーマに、【父からの虐待】、【弟との確執】、【貴族からの独立】、【幻聴による強迫観念】そして【叶わぬ恋】といったエピソードを描いていきます。

2人はベートーヴェンの全曲を聴き、各シーンに合わせて選んだ楽曲に歌詞をつけ、旋律を再構築。その作業に12年もの時間がかかったのだと語っており、シルヴェスター・リーヴァイさんが「ロックオペラと呼んでほしい」とコメントしていることからも、ロック要素を加えた音楽に仕上がっていることが伺えます。

そうして完成した本作は、『エリザベート』におけるトート(黄泉の帝王、死の象徴)や『モーツァルト!』のアマデ(奇跡の子と呼ばれた頃の姿、才能の化身)のように、現実には存在しない象徴的なキャラクター<ゴースト>が登場するのだそう。ベートーヴェンの人生が困難な時に、「勇気づけたり、元気付けたりする登場人物として存在」すると明かされています。

トートやアマデはもちろんのこと、『マリー・アントワネット』においてもマリー・アントワネットと対照的な“MA”、マルグリット・アルノーという架空の人物を作り上げることで、作品を悲劇的かつ情緒的に作り上げたM.クンツェ&S.リーヴァイ。今回の<ゴースト>も作品において大きな役割を果たすことになりそうです。

井上芳雄が新たなベートーヴェンに挑む

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを演じるのは、2000年にミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビューを果たし、『エリザベート』トート役や『モーツァルト!』モーツァルト役も務めてきた井上芳雄さん。2023年は6月〜8月に『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』、9月に『ラグタイム』への出演が既に発表されていますが、更なるビッグタイトルへの出演決定となりました。

ベートーヴェンの想い人であるアントニー・ブレンターノ(トニ)を演じるのは、ミュージカル『エリザベート』エリザベート役、『マリー・アントワネット』マリー・アントワネット役を演じ、M.クンツェ&S.リーヴァイ作品の日本上演において欠かせない存在である花總まりさんです。アントニー・ブレンターノは、ベートーヴェンの死後に見つかった手紙「不滅の恋人」の宛先の人物ではないかとされており、2人の秘密の恋が本作の鍵となっています。

ベートーヴェンの弟、カスパール・ヴァン・ベートーヴェンを演じるのは、実写版映画『リトル・マーメイド』吹替版への出演も話題の海宝直人さんと、『マリー・アントワネット』ではオルレアン公を演じた小野田龍之介さんのWキャスト。

さらにトニの義理の妹ベッティーナ・ブレンターノ役に木下晴香さん、野心家の弁護士バプティスト・フィッツオーク役に渡辺大輔さん、カスパールの妻ヨハンナ・ベートーヴェン役に実咲凜音さん、ベートーヴェンのパトロンの1人であるフェルディナント・キンスキー公役に吉野圭吾さん。銀行家でありトニの夫であるフランツ・ブレンダーノ役は佐藤隆紀さん(LE VELVETS)と坂元健児さんのWキャストとなっています。

ミュージカル『ベートーヴェン』は2023年1月に韓国で世界初演、5月15日に終演。12月に日生劇場にて、日本初演の幕が開きます。公式HPはこちら

Yurika

情緒的な世界観から生み出される圧倒的な没入体験が魅力のM.クンツェ&S.リーヴァイ。ベートーヴェンの心揺さぶる音楽と合わさった時、新たな化学反応が生まれることでしょう。ゴーストがどのようなキャラクターなのかも期待が高まります。