劇作家、脚本家、映画監督、コメディアンと、デビュー以来八面六臂の活躍を見せる三谷幸喜。彼の手がけた多数の作品の中から、今回はおすすめの舞台作品をご紹介します。
独特のウィットと明るいユーモア。他の追随を許さない喜劇王
日本大学藝術学部の演劇学科に通っていた三谷は、早くも在学中に後の人気劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成。その後テレビドラマの脚本家としても注目を集め、『古畑任三郎』などの連続ドラマを次々と手がけます。90年代には映画監督デビュー、『THE 有頂天ホテル』など映画界でも大ヒットを飛ばして高い評価を得るなど、その活躍はとどまることを知りません。
魅力的な人物描写と、洗練されたユーモアにあふれた作風が三谷作品の特徴。風刺やグロテスクな描写が少なく、観ていて明るい気持ちになるものが多いのも、国民的な人気を獲得する理由の一つでしょう。
登場人物はたった二人。笑いの大切さに気付かされる『笑の大学』
1994年にラジオドラマ用に書き下ろされ、2年後には二人芝居として舞台化された『笑の大学』。設定は戦時下の日本、演劇などの娯楽が規制されていた時代。心から笑ったことのない検閲官と、なんとか台本の上演許可をもらいたい喜劇作家が取調室で連日顔を突き合わせます。
キャストは二人、場面も取調室のみというシンプルな舞台の上で繰り広げられる掛け合いと笑いの持つ力に観客は引き込まれ、そしてラストの展開に心打たれます。読売演劇大賞の最優秀賞を受賞したほか、ロシア語、英語などに翻訳されて海外でも上演された名舞台です。2004年には役所広司と稲垣吾郎主演で映画化されました。
三谷さんと言えば、2020年9月〜公開された香取慎吾さん主演のAmazon Originalドラマ『誰かが、見ている』も話題になりましたね。 三谷作品は映画は観たことがあるけれど舞台は知らなかった、という方も多いと思いますが、彼の出発点は劇団。狭い空間の中でこそ爆発的に発揮される笑いの才能を、ぜひとも体感してみては。