2024年7月27日(土)にオープニング公演が開幕し、8月2日(金)から東京本公演が開幕するミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』。日本で3度目の上演を迎える本作のプレスコールと取材会の様子をお届けします。

『ビリー・エリオット』を象徴する5シーンを披露

1980年代のイギリス北部の炭鉱の町を舞台に、バレエと出会ったひとりの少年と彼を取り巻く大人たちの姿を描いた映画「BILLY ELLIOT」(邦題「リトル・ダンサー」)。2005年にエルトン・ジョンなど世界最高峰のクリエイターによってミュージカル化され、世界中で大成功を収めました。

日本では2017年に初演を迎え、菊田一夫演劇賞大賞や読売演劇賞選考委員特別賞など数多くの演劇賞を受賞。2020年にはコロナ禍の苦境を乗り越えての再演となりました。

そして3度目の上演となる今年、約1年にわたる育成型オーディションを勝ち抜き1375 人の中から選ばれた、浅田良舞さん、石黒瑛土さん、井上宇一郎さん、春山嘉夢一さんの4人が主人公のビリー・エリオットを演じます。11歳前後の少年にしか演じられないビリー役は、彼等にとっても人生一度きりの挑戦となります。

プレスコールでは各キャストにより、本作を象徴する5つのシーンが披露されました。まず本作のオープニングナンバーである「The Stars Look Down 星たちが見ている」を、ビリー役:春山嘉夢一さん、お父さん役:鶴見辰吾さん、トニー役:西川大貴さんで。遊び回る無邪気な子どもたちと、炭鉱ストライキを決意した大人たちが対照的に描かれ、一気に本作の世界観に惹きつけられます。

続いて、ビリーが初めてバレエに出会う「Shine 輝け、今!」を、ビリー役:春山嘉夢一さん、ウィルキンソン先生役:濱田めぐみさんで披露。バレエガールズたちとウィルキンソン先生の勢いに圧倒されながらも、華やかなバレエの魅力が伝わる楽しいナンバーです。

3シーン目は、ビリー(石黒瑛土さん)と親友マイケル(渡邉隼人さん)による「Expressing Yourself 自分を表現しよう」。バレエを続けるべきか悩むビリーに対して、マイケルは自分の個性を出すことを躊躇いません。母親のドレスを身につけながら、「ワンピースを着て何が悪いのか」「自分を出して何が悪い!」とパワフルに歌い踊ります。2人のリズミカルなタップでどんどん盛り上がっていくシーンであり、本作の根幹のメッセージの1つでもある、「自分を表現する」ことが大切に描かれています。

4シーン目は、本作の大きな見どころの1つである「Angry Dance 怒りのダンス」。プレスコールでは浅田良舞さんが演じ、イギリスの名門ロイヤル・バレエスクールの受験を父親に反対されたビリーの怒り、フラストレーションを力強いタップで表現していきます。

最後に披露されたのは、「Solidarity 団結を永遠に」。バレエに魅了され、上達していくビリーと、炭鉱ストライキで団結を深めていく大人たち、それぞれのコミュニティが交差して描かれるナンバーです。

演出補のエド・バーンサイドさんは、ビリー役について「国際的に見てもミュージカル・演劇界において実に演じ難い難しい役です。高いバレエ技術だけでなく、タップダンス、演技、歌、縄跳び、アクロバット、そしてある場面ではフライングもこなさなければいけません。あまりに難役なため、(演出の)スティーヴン・ダルドリーが“マラソンをしながらハムレットをやるようなもの”と例えたほどです」といかに難しい役かを解説。

さらに本作がミュージカル化された経緯について、カンヌ映画祭で映画を観たエルトン・ジョンが、自らの子ども時代を鮮明に思い出したと深く感動し、ミュージカル化を提案したことを語りました。

「親としてすぐそばで見ている時の幸せといったら…」

プレスコール後の取材会には、ビリー役の浅田良舞さん・石黒瑛土さん・井上宇一郎さん・春山嘉夢一さん、ビリーのお父さん役の益岡徹さん・鶴見辰吾さん、ウィルキンソン先生役の安蘭けいさん・濱田めぐみさんが登壇しました。

すでにオープニング公演にて観客の拍手を浴びた4人のビリー。浅田さんは「お客様にたくさんの拍手をたくさんの拍手をもらえてとても嬉しかったので、もっとお客様を感動させられるように頑張りたいです」と意気込みます。

石黒さんは「今までにない歓声を受けて幸せでした。これからも努力してお客様に感動してもらえるように頑張ります」、井上さんは「初日は凄い拍手をもらえて楽しくて嬉しかったんですけれど、今後もどんどんレベルアップしていけるように頑張っていこうと思います」、春山さんは「お客様のたくさんの温かい拍手がもらえて嬉しかったです。これからも、もっと拍手がもらえるように頑張っていきたいと思います」とそれぞれ挨拶しました。

ウィルキンソン先生役の安蘭けいさんは、本作の見どころについて「ビリーのために炭鉱夫のみんながお金を渡すシーンで、胸が締め付けられるように熱くなって感動するんです。子どもに対する大人たちの愛情、次に託していく大人たちの心情が凄く伝わって、本当に大好き」と熱く語ります。

撮影:山本春花

お父さん役の益岡徹さんも、「ビリーのためにかなりまとまった額を大人たちが使ってくれて、ロンドンまでバスで何日かかけて行って、慣れない都会で過ごすんです。そして受験の最後に審査員に“踊っている時はどんな気持ちなの”と問われたビリーがそれに答えるように踊る姿を、親としてすぐそばで見ている時の幸せといったら…あれは芝居で見ているのか。怪我してくれるなよ、お前そんなに上手くなったのか、と色々な気持ちがないまぜになって、今まで味わったことのないシーンです」と噛み締めるように語られました。

ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』は8月2日(金)から10月26日(土)まで東京建物 Brillia HALL、11月9日(土)から24日(日)まで大阪・SkyシアターMBSにて上演されます。公式HPはこちら

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Yurika

『ビリー・エリオット』と聞くと少年がバレエに挑戦する物語、と思いがちですが、本作には時代の変化や価値観の変化に悩みながらも前に進んで行こうとする大人たちの姿も印象的に描かれています。珠玉の名曲たちと、大人にこそ観てほしいメッセージが詰まった作品です。