シェイクスピア作品の『ヴェニスの商人』が、草彅剛さん主演で舞台化。2024年12月から2025年1月にかけて、東京・京都・愛知で上演されます。古典の名作を現代でどのように生まれ変わらせるのか、その見どころに迫ります。
人間の本質を問うシェイクスピア作品の魅力
劇作家であり詩人でもある、ウィリアム・シェイクスピア。『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』など、彼の作品は400年以上前に書かれたにもかかわらず、今なお世界中で愛されています。
シェイクスピア作品では、生と死、罪と罰といった、人間の本質を問うようなテーマが取り上げられています。登場人物が喜んだり悲しんだり、あるいは誰かを愛したり憎んだり。リアルな感情の動きを自分と重ねて、共感する人も多いのではないでしょうか。だからこそ、時代と国境を越え、人々の心に響くのでしょう。
また、シェイクスピアの文章には独特の言い回しや言葉遊びが用いられていて、解釈の幅が広いところも特徴のひとつ。芝居だけでなく、小説から映像作品、絵画、音楽に至るまで、多彩な手段で表現できる題材だといえます。
悲劇か喜劇か。不朽の名作『ヴェニスの商人』
そんなシェイクスピア作品の中で、最高傑作のひとつとされているのが『ヴェニスの商人』です。
舞台はイタリアのヴェニス。若き商人のアントーニオには、バサーニオという親友がいます。富豪のポーシャに求婚する資金が必要なバサーニオのために、アントーニオは高利貸しのシャイロックからお金を借りることに。ただ、その条件は「貸した金を返せなかったら、あんたの体から、きっかり1ポンド、切り取らせてもらおうか」という恐ろしいものでした。
アントーニオのおかげで、バサーニオの恋は順調に進むかに見えます。しかし、シャイロックの娘・ジェシカがバサーニオらの友人・ロレンゾーと駆け落ちしたことで、シャイロックが激怒。さらにアントーニオの財産を積んだ船が沈没し、借金を返済するあてを失ってしまいます。シャイロックと交わした「肉1ポンド」の契約によって追いつめられるアントーニオの運命は。
友人思いのアントーニオや聡明で行動力のあるポーシャに対し、冷酷さが際立つシャイロック。登場人物をわかりやすく対比させながら深い観察眼で紡がれる人間ドラマに、目が離せなくなります。また、アントーニオ側からすれば“喜劇”となる痛快なラストには、シャイロックでなくても「やられた!」と声を上げたくなるのでは。
実力あるキャストと演出家が古典の名作に挑む!
舞台『ヴェニスの商人』では、草彅剛さんがシャイロック役として主演を務めます。舞台やドラマ、映画など幅広いジャンルで確かな存在感を放つ草彅さんですが、シェイクスピア作品への出演は今回が初めて。しかも悪役のシャイロックを演じるとあって、今までにない一面が見られるのではないでしょうか。
商人・アントーニオ役には、忍成修吾さんがキャスティング。ドラマや映画、バラエティで積み重ねた経験を糧に、初のシェイクスピア作品に臨みます。
そして、2012年の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で注目を浴びて以来、映画やドラマで活躍する野村周平さんがバサーニオ役に。そのバサーニオが恋するポーシャ役を、佐久間由衣さんが演じます。
また、ポーシャの侍女・ネリッサ役で長井短(みじか)さん、彼女と恋仲になるグラシアーノ役で大鶴佐助さん、ジェシカ役で華優希さん、ロレンゾー役で小澤竜心さんが出演します。
演出を担当するのは、森新太郎さん。第21回読売演劇大賞・最優秀演出家賞を受賞し、演出家としての実力を評価されています。これまで古典から現代劇までジャンルに縛られずに活動し、ミュージカルにも挑戦。また、女性キャストだけの布陣で古代ローマの闘争を描いた『ジュリアス・シーザー』や、四大悲劇のひとつである『ハムレット』の物語を凝縮した『ハムレットQ1(キュー・ワン)』など、シェイクスピア作品の演出も手掛けています。
さらに、脚本の訳担当である松岡和子さんも、シェイクスピアに造詣が深い方です。松岡さんは28年の歳月をかけ、シェイクスピアの全戯曲37作を完訳。日本国内で3人目となる偉業を達成しました。
多彩な経歴を持つキャスト陣と、シェイクスピアに縁のある演出サイドが一丸となり、新しい『ヴェニスの商人』の物語を作り上げます。
舞台『ヴェニスの商人』は、東京の日本青年館ホールにて2024年12月6日(金)から22日(日)まで上演。その後、12月26日(木)から29日(日)に京都劇場で京都公演、2025年1月6日(月)から10日(金)に御園座で愛知公演が行われます。詳細は公式HPをご確認ください。
筆者は昔『ヴェニスの商人』を読んだことがあり、結末も知っています。それでも。個性的なキャストの面々や演出陣の経歴を見ていると、今回の舞台が気になって仕方ありません!