演劇鑑賞と聞いて、みなさんはどんな楽しみ方を想像しますか?ソロ活、友だちとの推し活……様々ですよね。そのなかには、家族と一緒に楽しむという方法もあるでしょう。実は、「家族でも観られるエンターテインメント演劇」というコンセプトで活動している劇団が存在します。その名は「演劇集団キャラメルボックス」。そこで今回は、2024年のクリスマスに演劇集団キャラメルボックスがお届けする『ミスター・ムーンライト』についてご紹介します。
テーマは「人が人を想う気持ち」
1985年6月30日、演劇集団キャラメルボックスは、早稲田大学の演劇サークル出身で脚本・演出家の成井豊さんを中心に創立されました。「エンターテイメント・ファンタジー」「人が人を思う気持ち」を基調に、「家族でも観られるエンターテインメント演劇」を上演しています。
主な代表作は、『銀河旋律』『広くてすてきな宇宙じゃないか』『また逢おうと竜馬は言った』『サンタクロースが歌ってくれた』など。なかでもSF作品の評価が高く、2011年には海外SFの名作である、ロバート・A・ハインライン『夏への扉』を世界初舞台化しています。
そのほかにも、北村薫さん、東野圭吾さん、伊坂幸太郎さんをはじめとする国内作品の舞台化にも、長年挑戦し続けています。2015年の結成30周年には、筒井康隆さん『時をかける少女』の世界初舞台化を手掛けました。
また、演劇集団キャラメルボックスは、SF作品、時代劇作品、ハーフタイムシアター作品(上演時間が通常の半分のもの)、クリスマスを題材にした作品など、幅広いジャンルを扱っているのが特徴です。まさに、お菓子の詰め合わせのようにワクワクが膨らむ劇団なんです!
死を描いているが、生こそがテーマ
『ミスター・ムーンライト』は、次のようなあらすじで展開されます。
鹿島は図書館で司書をしているが、本当は作家志望。徹夜で小説を書いたせいで、風邪を引いてしまい、館長に早退を命じられる。鹿島は自宅のアパートで床につく。 ところがその一時間後、鹿島は大学時代の友人・結城の家に姿を現す。迎えに出た結城の妻・都に、自分は半年前に交通事故で亡くなった、結城の妹のかすみだと名乗る。かすみは鹿島の体を借りて、結城に会いに来たのだった……。
そして実はこの演目、初演は2001年7月。つまり今回が23年ぶりの再演となるんです。脚本・演出を手掛ける成井豊さんは、このようにコメントしています。
「1999年11月、38歳になったばかりの私は、たまたま行った人間ドックで胃に8つの潰瘍が見つかり、医師から「最悪の場合、胃ガンの可能性もある」と言われました。その日は本番初日の3週間前で、まだ新作脚本を執筆中だったのですが、直ちに演目を旧作の再演に変更。キャスト・スタッフ・お客さんたちに多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
結局、数日後の精密検査で、ガンではなく、「多発性胃潰瘍」と診断されたのですが、あの時ほど死を意識したことはありません。おかげでその後数年は、死をテーマにした脚本ばかり書いていました。『クローズ・ユア・アイズ』『ミスター・ムーンライト』『アンフォゲッタブル』などがそれに当たります。とても苦しい時代で、その頃の脚本はどうしても再演する気になれませんでした。
が、昨年の2023年が関東大震災の100年目に当たったことから、勇気を出して、『クローズ・ユア・アイズ』を再演してみたところ、思わぬ発見がありました。それは、確かに死を描いているが、それはけっしてテーマではない、主人公は死を目の前にして、それでも必死に生きようとしている、むしろ、生こそがテーマなのだ、ということ。
そこで今回は『ミスター・ムーンライト』に挑戦することにしたのです。
主人公の鹿島は作家志望の平凡な男ですが、親友・結城の妹で、半年前に事故で亡くなった大学生・かすみのために必死で闘います。彼の奮闘ぶりを楽しんでいただけたら、そして応援していただけたら、とてもうれしいです」。
死と生は背中合わせ。そのことを実感した人が「今、届けたい」と願いを込める作品。今年の冬はぜひ、大切な人と一緒に、演劇を観てみませんか?
思い出の作品で主役に抜擢!
最後に、『ミスター・ムーンライト』の世界観を築き上げるキャストのみなさんをご紹介します。
まず、主人公・鹿島を関根翔太さんが演じます。『ミスター・ムーンライト』は、関根さんが劇団を知ったきっかけの作品とのこと。思い出の作品で、「女子大生に憑依される男性」という難易度の高い役をどう演じるのか、目が離せません!
そして鹿島を取り巻く人々として、阿部丈二さん、鍛治本大樹さん、林貴子さん、山本沙羅さん、生田麻里菜さん、石森美咲さん、石川寛美さん、田中のぶとさん、三浦剛さん、南澤さくらさん、中尾彩絵さん、辻合直澄さん、齋藤雄大さん、近江谷太朗さんが出演されます。
演劇集団キャラメルボックス 2024 クリスマスツアー『ミスター・ムーンライト』は、2024年12月20日(金)から25日(水)まで、東京のサンシャイン劇場で上演されます。詳しい情報は公式サイトをご確認ください。
わたしの大好きな俳優さんの出身劇団ということもあり、演劇集団キャラメルボックスには以前から注目してきました。今回は、死と生を繰り返す世界の1人として、『ミスター・ムーンライト』の醸し出す雰囲気に惹かれています。