ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、ブロードウェイでロングランを記録し、日本でも半世紀にわたって何度も再演されてきた作品です。今回、2025年3月より明治座で上演され、その後全国公演が行われる予定。人生について問いかけるストーリーや新しい顔ぶれの加わったキャスト陣など、見どころをご紹介します。
世界中で愛される不朽の名作ミュージカル
ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、帝政ロシアの時代に生きたユダヤ人家族を描いた物語です。原作は、ショラム・アレイヘムの短編小説『牛乳屋テヴィエ』。演出家のハロルド・プリンスが製作を担当し、ジェローム・ロビンスがオリジナル・プロダクションの演出と振付を手掛けました。ちなみにこの2人は、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の演出と振付でもコンビを組んでいます。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』は1964年にブロードウェイで初演されると、トニー賞のミュージカル部門において最優秀作品賞や脚本賞、作曲賞など7つの賞を獲得。ブロードウェイでの上演は8年間も続き、当時としては記録的といえる3,242回のロングランを達成しました。また、1971年には映画化もされています。
1967年には、日本でも帝国劇場で初めて上演されることに。オリジナル・プロダクションを基にした日本版では、森繁久彌さんが主人公・テヴィエを、また越路吹雪さんが妻・ゴールデを演じました。森繁さんは1986年の公演まで、なんと通算900回も主役を務めています。続いて1994年から2001年にかけては、西田敏行さんがテヴィエ役で登場。その間に、記念すべき1000回公演を迎えました。
2004年以降、新演出による“21世紀版”でテヴィエ役を引き継いできたのは、市村正親さんです。そして2025年3月、日本初演から半世紀以上も愛され続けている作品が、明治座にて再び幕を開けます。
ある家族の愛と絆を描いたストーリー
舞台は1905年の帝政ロシア、アナテフカという寒村。酪農業を営むテヴィエは、ユダヤのしきたりを守りながら、妻のゴールデと5人の娘と一緒に暮らしていました。娘たちの中でも長女のツァイテル、次女のホーデル、三女のチャヴァは、結婚を意識する年頃を迎えています。一方で、ユダヤ教には、両親の祝福がなければ結婚が許されないという厳格な決まりがありました。
ある日、テヴィエは肉屋で金持ちのラザールから長女ツァイテルを後妻に迎えたいと申し込まれ、酔った勢いで同意してしまいます。しかし、ツァイテルにはすでに仕立屋のモーテルという恋人がいました。2人の深い愛に心打たれたテヴィエは、結婚を祝福。その結果、同時に2つの結婚を認めることに。
また、次女ホーデルは革命を志してシベリア送りとなった学生のパーチックを追い、村を離れます。さらに、ロシア人の青年フョートカと恋に落ちた三女のチャヴァは、結婚を反対されたために家を飛び出して駆け落ち。
そして第一次ロシア革命へと突き進む時代のうねりが、テヴィエ一家にも暗い影を落としていくのです。
名コンビによる夫婦役や新キャストに注目
『屋根の上のヴァイオリン弾き』では、子どもたちが親の意向に従うのではなく、自らの意思で結婚相手を選び、それぞれの人生を歩んでいきます。その姿に、結婚や家族、親子関係に対する価値観を揺さぶられる方もいるのではないでしょうか。軽快な音楽とダンスシーンを交えながらも、“生きること”について深く考えさせられるストーリーとなっています。
2025年版では、市村正親さんが2004年から引き続き、テヴィエ役として主演。鳳蘭さんは、本公演で5回目となる妻のゴールデ役に。2009年からタッグを組む2人が、困難に直面しても懸命に生きようとする夫婦を演じます。
今回、宝塚歌劇団出身で現在は舞台を中心に活躍する美弥るりかさんが、長女・ツァイテル役に初挑戦。次女・ホーデル役は2021年公演と同じく唯月ふうかさんで、直近ではミュージカル『SPY×FAMILY』でのヨル役が好評でした。三女・チャヴァ役は、子役時代から数々のミュージカル作品に出演している大森未来衣さんが務めます。
そして、長女の恋人であるモーテル役には、上口耕平さんが2021年から続投。次女と恋仲になるパーチック役は、ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』『レ・ミゼラブル』など話題作に出演する内藤大希さんに決定しました。三女と駆け落ちするフョートカ役は、2017年と2021年に続いて3回目の同役となる神田恭兵さん。ミュージカル『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などで経験を積んだ実力派です。
さらに、長女との結婚を望むラザール役は今井清隆さんで、2017年以来の出演となります。
これまでの舞台を知る面々に新しいメンバーが加わることで、また違った表現や解釈を見られるのかと思うと楽しみですね。
ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、2025年3月7日(金)から29日(土)まで東京の明治座にて上演されます。チケットの一般販売は、2024年12月21日(土)より開始。なお、3月14日(金)の13時開演回、3月19日(水)の13時開演回では、終演後にキャスト2名と「踊る指揮者」こと塩田明弘さんによるトークショーが開催される予定です。その後、富山公演を皮切りに、愛知県・静岡県・大阪府・広島県・福岡県・宮城県・埼玉県の全国各地を4月から6月にかけて巡演します。詳細は公式サイトをご確認ください。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』の物語は、改めて自分や大切な人との関わり方を考えるきっかけにもなるのでは、と感じました。4年ぶりに観劇できるチャンスなので、お近くの劇場に足を運んでみてください!