帝劇クロージング公演 ミュージカル『レ・ミゼラブル』が12月16日(月)からのプレビュー公演を経て、20日(金)に本初日を迎えました。本番直前に行われた本初日会見の様子をお届けします。
作品を観て終わりではなく、行動してもらえるように
帝劇クロージング公演 ミュージカル『レ・ミゼラブル』本初日会見には、ジャン・バルジャン役の吉原光夫さん、佐藤隆紀さん、飯田洋輔さん、ジャベール役の伊礼彼方さん、小野田龍之介さん、石井一彰さん、ファンテーヌ役の昆夏美さん、生田絵梨花さん、木下晴香さんが登壇しました。
初日を迎えた心境を漢字1文字で、とリクエストされた吉原光夫さんは「真」を選び、「今回で14年目7回目のバルジャンなんですけれど、本当に紆余曲折、色々な状態の自分と出会いながらここまできたなという感じがあって、バルジャンが持つ光に引っ張られ、闇に引っ張られ、なんとか真ん中にいて正しくあろうとするということを、掴みたいし、掴もうとしているし、掴めるんじゃないかなと思うし、俳優としても芯を持って舞台上に立ち続けることができたらいいなと。気を引き締めて頑張っていきたい」と意気込みます。
またクロージング公演への出演にあたって、「(山口)祐一郎さんや別所(哲也)さん、今井清隆さん、鹿賀(丈史)さんなど素晴らしい方々に囲まれてジャン・バルジャンとして舞台に立たせて頂いて、叱咤激励を受けながら青二才な新人という感じだったのに、あっという間に大御所のようになって不思議な気持ちになります。帝国劇場は僕にとっては怖い場所なのですが、(クロージング公演という)節目に舞台上に居られると思うと温かい気持ちになるので、それをしっかりかみしめて、劇場と手を繋いで公演ができたら」と思いが語られました。
好きなシーンについて問われると、ファンテーヌの楽曲「夢やぶれて」での「木枯らしが吹き消し」後のメロディー・オーケストラの演奏を「何回聞いても鳥肌が立つ」と語り、「どうなんでしょう、皆さんもそうなっているのかな」と思いを馳せました。
佐藤隆紀さんが選んだ漢字は「熱」。「『レ・ミゼラブル』という作品は、お客様、そして僕たち役者も含め、本当に熱い思いでこの作品の公演を待っていますし、支えてくださるスタッフの皆様も公演を成功するために熱い思いを持って作品に携わる姿を見てきました。その熱い思いに応えられるように、そしてお客様に熱い舞台をお届けできるように、熱く千穐楽まで頑張っていきたい」と意気込みます。
そして帝国劇場については「学生の頃、いつかこの舞台に立ちたいなと、すごく熱い思いを持った劇場」と語り、好きなシーンとして冒頭の「司教によってバルジャンが生まれ変わる」シーンを挙げました。「司教様が温かい愛で包んだことで、バルジャンが変わっていくというのは現代でも学ぶことがたくさんあるし、凄く温かいシーン」だと語りました。
飯田洋輔さんは「響」という漢字を挙げ、「全編音楽で綴られる、その響きの中で行われるミュージカルということで。全国の各ホールの響きとも調和しながらやっていきたいと思うし、素敵な仲間たち・先輩方に囲まれて良い時間を過ごせたので、いつまでも響き合える仲間たちと、最後までこの作品をお届けできたら」と語ります。
好きなシーンについては「“命かけてコゼットを守り通す”とファンテーヌに歌いかけるシーンです。決意し、最後まで全うするバルジャンの意志の強さや不屈の精神の物語だと思うので、その言葉が大好き」と語りました。
伊礼彼方さんは「繋」を選び、3回目となるジャベール役について「1回目2回目は稽古場でも緊張して体が硬直していたのですが、3回目ということで緊張から少し解放されて、神や星との繋がりを感じられるようになって、自然に舞台に立てる自分を発見できました」と変化を体感したそう。クロージング公演への出演は「神様から頂いたギフト」だと語りました。
伊礼さんは若い頃、マリウスとコゼットのシーンについて「面白くないな、早く終わらないかな」と思っていたと明かし、ジャベールとして稽古場に入って初めて「バルジャンの抱いた憎しみが愛に変わり、それがコゼットに伝わり、マリウスとの出会いによって希望が次世代に伝わっていく」という作品のコンセプトを真に理解し、「なんて美しいんだろう」と涙したと言います。「自分の持っている闇の部分、汚れている部分が浄化されていくのを感じるシーン」と語りました。
小野田龍之介さんは「揺」を挙げ、アンジョルラスを演じていた頃からの変化を振り返ります。「バルジャンとジャベール以外は本役以外にたくさんの役を演じるのですが、今回初めて1つの人物の魂で3時間のドラマに生きることができて、1人の視点でこの作品を見たときに、改めてこの作品に登場する1人1人、民衆も含めて全ての人物が、なんて感動や希望や愛、色々なものに揺さぶられて生きているのだろうという感動を味わいました。そして作品の感動が客席に伝わった時、劇場全体が特別な空間に、まさに神と繋がったような空間になっていくのをプレビュー期間で感じ、改めて『レ・ミゼラブル』の力強さと恐ろしさを感じました」と思いを明かしました。
また「帝劇が一旦なくなるというのはシンプルに寂しい」と語り、「15歳か16歳の頃に初めて立たせて頂いて以降、本当に色々な俳優の方やスタッフの方を見て学ばせて頂き、作品も色々と出させて頂きました。大好きな先輩方が演じてこられたジャベール役に新たにトライしながら、舞台の神様に“ここからまた頑張れよ”とお尻を叩かれているような気持ち」と語ります。
石井一彰さんが選んだ漢字は「謝」。「16年ぶりに『レ・ミゼラブル』に関わることになり、プロデューサーの方や当時からいたスタッフの方が“おかえり”と温かく迎えてくれました。とても感動して、その気持ちをお返しできたら。プレビューを終えて、お客様からもたくさんの温かい拍手を頂いたので、それにも“謝”です」と語ります。
「俳優にもスタッフにもお客様にも愛された劇場で、その劇場のクロージング公演に出させていただけることは本当に光栄ですし、喜びを噛み締め、誠実に舞台に立ちたい」と意気込みました。
昆夏美さんは「幸」を選び、「2013年から2019年までエポニーヌとしてこの作品に携わらせて頂いて、エポニーヌから見る『レ・ミゼラブル』の景色をとても愛していたんですけれども、今回からファンテーヌとしてまた違う視点から物語を見られることが、稽古の時点から本当に楽しく、そして幸せでした。プレビュー公演でもお客様から本当に温かい拍手を頂いて、これを来年の6月までお届けできるなんてとても幸せなことだし、1回1回、この作品をお届けできることに幸せを感じます」と笑顔を見せます。
クロージング公演にあたっては「学生の頃からこの劇場に通って『レ・ミゼラブル』をずっと観ていて、初めて自分が帝国劇場に立たせて頂いたのもこの作品で、クロージング公演も『レ・ミゼラブル』で。帝国劇場と『レ・ミゼラブル』というのは私の人生の中で本当に特別な組み合わせ。覚悟を持ってお客様に1公演1公演をお届けしたい」と思いを語りました。
好きなシーンについては「エピローグでバルジャンをみんなで迎え入れて、前に歩んでいくシーン。お客様にこの作品のメッセージとエネルギーをお届けする、作品の醍醐味のようなシーンで、みんなで歩んでいく瞬間がとても好きで。個人的にエポニーヌはバルジャンの(昆さんから見て)左側にいたのが、今は右に立っていて、ファンテーヌをやっているんだなという気持ちになります」と明かしました。
生田絵梨花さんは「巡」を挙げ、「コゼット、エポニーヌとして出させて頂き、同じ作品に巡り巡ってファンテーヌとして携わることができるというのはすごく幸せだなと。稽古の時も感じていましたし、幕が開いてからも、緊張はするんですけれど、幸せをここからも噛み締めながら、ステージに立っていけたら」と意気込みます。
また「初めて帝国劇場に立たせて頂いたのが、『レ・ミゼラブル』のコゼット役でした。7年前なんですけれど、ちょうど同じこの場所での囲み取材で、当時ファンテーヌを演じられていた知念里奈さんが私に“いつかファンテーヌをやってほしい”という言葉をくださって。私も“頑張ります”と言って、いつかと思っていたので、今この瞬間にファンテーヌとして立てているというのが凄く感慨深い気持ちです。帝国劇場が閉館したらこの場所にはもう立てないので、本当に運命的なタイミングだった」と噛み締めるように語られました。
木下晴香さんは「闘」を選び、「作品に携わらせて頂いて改めて、それぞれのキャラクターが色々なものと闘い続けている、その命が凄く眩しい作品だと感じましたし、ファンテーヌとしても、コゼットのために命ある限り闘い続けるその姿を、見ていただけるように頑張りたい」と意気込みました。
帝国劇場については「初めて帝国劇場に立たせて頂いた時に、自分の中で初めて舞台に立つのが怖いと思った劇場だったんですけれど、製作発表の時に(吉原)光夫さんが“帝劇は宇宙みたいに真っ暗”とお話しされていたのを聞いて、光夫さんでもそう思うんだ、私だけじゃなかったんだと思いました。ここからも色々な経験をしながらの日々になると思うんですけれど、噛み締めながら、味わい尽くしながらやりたい」と語りました。
最後に吉原光夫さんから「この作品は、苦しい立場の人たち、貧しい立場の人たちが最後まで人と繋がろうとして、そして時代という風に抵抗した作品だと思います。まずそのメッセージ、作品の意図を俳優とスタッフが理解し、行動に移すことが務めだと思っています。それと同時に、最後に「民衆の歌」をお客さんに向かって歌うときはバルジャンとしてではなく、俳優としてメッセージを届けて、お客さんがそのメッセージを咀嚼してどうこの時代を生きるかという作品なんだと思います。ブームになってしまって『レ・ミゼラブル』を観て終わってしまうのではなく、作品を渡して、お客さんがどう捉えてこの時代にどう見つめていくか、響き渡らせていくかが大事になっていきます。ぜひ劇場に来て体感して、行動して頂けると、ユゴーが言うようにこれから先もどんどん続いていく作品になるんじゃないかと思いますので、帝劇クロージング公演だけではなく、旅公演も、そしてこの先まだ未来にある『レ・ミゼラブル』にも、ぜひご期待ください」と熱いメッセージが語られ、会見が締め括られました。
ミュージカル『レ・ミゼラブル』は2024年12月16日(月)から12月19日(木)までプレビュー公演、12月20日(金)から2025年2月7日(金)まで 帝国劇場で上演。その後、大阪・福岡・長野・北海道・群馬と全国ツアー公演が6月まで行われます。公式HPはこちら
ツアー公演での楽しみを聞かれると、木下晴香さんは「ここまでのロングラン公演は初めてなので、どのように作品と役が育っていくのか楽しみ」と語りつつ、「ファンテーヌの3人とも大変よく食べるので(笑)、食の楽しみもすごくある」と笑顔に。これには生田絵梨花さんも「前回はコロナ禍で本当に出歩けなかったので、満を持して食べたい!」と意気込み、お三方が各地のグルメを思いきり堪能する姿を想像して微笑ましい気持ちになりました。