1991年に出版されたブレット・イーストン・エリスの小説『アメリカン・サイコ』。犯罪物でありながら、痛烈なブラックコメディが魅力の作品で、海外では何度も舞台化されてきました。そんな『アメリカン・サイコ』が2025年、日本初演を迎えます。いったいどんな内容なのでしょうか?

アメリカの80年代テイストを2025年の日本へ

アメリカのジェネレーションX(1965年から1970年代に生まれた世代)を代表する作家、ブレット・イーストン・エリス。1991年に出版された代表作『アメリカン・サイコ』は、犯罪物であり、社会風刺と皮肉が色濃いブラックコメディです。2000年に映画化されたのち、2013年にはロンドンでミュージカル化され、2016年にブロードウェイに進出。オーストラリア(2019年・2020年)でも好評を博しました。

作詞・作曲を担当したのは、2007年に『春のめざめ』でトニー賞を受賞したダンカン・シーク。さらに、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「Hip To Be Square」などの大ヒットソングも盛り込まれ、当時のムードをまといながらも洗練された仕上がりとなっています。

期待の集まる日本初演の演出は、ブラックなエンターテインメント作品で高い評価を受けてきた河原雅彦さんが手掛けます。パルコ・プロデュース『万獣こわい』(2015年)の演出で第22回読売演劇大賞・優秀作品賞を受賞した実績もある河原さん。その手腕がどのように発揮されるのか、とても楽しみです!

<STORY>
1989年ニューヨーク。ウォール街の投資会社のエリート、パトリック・ベイトマンは、トム・クルーズと同じ高級アパートメントに住み、有名レストランでランチをとり、ジムやエステで美貌を磨く華麗な日々を送っている。投資会社の同僚の関心事は、レストランや女、そして名刺のデザインや誰が優良顧客を獲得するか。
パトリックの婚約者やその女友達も洋服や美容にしか興味がなく、望みは理想の結婚相手を見つけることだけ。しかしパトリックには裏の顔があった。夜は冷酷なシリアルキラー、猟奇的連続殺人犯に変身していたのだ。パトリックは、同僚のポール・オーウェンが自分より勝っている気がして、激しいジェラシーを抱く。そして遂に…

髙木雄也が2度目のミュージカルに挑戦

『アメリカン・サイコ』の日本初演を彩るのは、確かな実力を持つ16名の豪華俳優陣です。

まず、主人公パトリック・ベイトマンを、Hey! Say! JUMPの髙木雄也さんが演じます。『東京輪舞』(2024年)やミュージカル『ブロードウェイと銃弾』(2021年)など、舞台での存在感も年々増している髙木さんは、2つの顔を持つ危険な人物をどう表現するのでしょうか?

共演するのは、音月桂さんに石田ニコルさん、中河内雅貴さん、原田優一さん、玉置成実さん、秋本奈緒美さん、コング桑田さん、大貫勇輔さん。そして、高橋駿一さん、GENTA YAMAGUCHIさん、松野乃知さん、ダンドイ舞莉花さん、エリザベス・マリーさん、吉田繭さん、加島茜さんという個性豊かなバックグラウンドを持つ俳優が揃いました。

わたしが注目しているのは、パトリックの秘書・ジーンを演じる音月桂さんと、ポール・オーウェンを演じる大貫勇輔さんです。

音月桂さんは1998年、宝塚歌劇団に入団。歌、ダンス、芝居と三拍子揃った実力派トップスターとして雪組を牽引し、2012年の退団後は舞台・映像など幅広い分野で活躍されています。インタビューで「シーンを深堀っていくのが好き」「表現の可能性が楽しみ」とお話されていたので、その豊富な経験を活かして、どんな世界観をつくられるのか目が離せません!

また、大貫勇輔さんは、17歳にプロダンサーとしてデビューし、そのキャリアを確立しながら、俳優としても評価されている方です。音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』(2024年)、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』(2023年)、ミュージカル『王家の紋章』(2021年)などの話題作にも出演した経験を持ちます。しなやかで迫力のある動きと伸びやかな声を、ぜひ劇場で拝見したいと思っています。

ミュージカル『アメリカン・サイコ』は、2025年3月30日(日)から4月13日(日)まで、新国立劇場 中劇場で上演されます。また、4月19日(土)から21日(月)まで大阪府の森ノ宮ピロティホール、26日(土)は福岡県のJ:COM 北九州芸術劇場 大ホール、30日(水)は広島県のJMS アステールプラザ 大ホールで、地方公演が予定されています。詳細は公式HPでご確認ください。

さよ

客席に歌とダンスと血しぶきが降り注ぐ『アメリカン・サイコ』日本初演。きっと日本にいる誰も観たことのない舞台になるはずです!