今年度1発目の公演は、井上ひさしさんが小説で遺した“フロイス”という人物を題材に作られた完全新作。井上さんの意思を継ぎ生まれた本作、上演まであとわずかです!
長田育恵×栗山民也タッグが描く、信じること・人間の愚かさと愛おしさ
2010年に世を去った小説家・劇作家の井上ひさしさん。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに書くこと」
こまつ座は井上さんの遺した言葉を守りながら、これまで彼に関する作品のみを上演し続けてきました。
根強い人気を誇る“井上ひさし作品”ですが、気になっていても観たことがない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回ご紹介する『フロイス –その死、書き残さず–』は、1983年に井上さんがNHKラジオドラマのために書いた台本『わが友フロイス』に登場する宣教師ルイス・フロイスを題材に、劇団てがみ座主宰・長田育恵さんが書き上げた作品です。
劇作家協会戯曲セミナー研修科に通っていた長田さんは、井上さんにとって最後の個人研修生でした。彼に習った“劇に人間のどうしようもない愚かさや愛おしさを書き込むこと”を根幹に、現代を見つめる長田さんらしいアプローチで、フロイスの葛藤や人生を描いています。フロイスはポルトガルのカトリック司祭、宣教師で、織田信長や豊臣秀吉らと会見するなど戦国時代の日本で活躍、歴史書『日本史』を執筆しました。
長田さんは「宣教師フロイトは戦国時代の日本を肉眼で見ていた記述者でもあります。本作には「物語」さえあれば命を捨てていける日本人の宿痾や、宗教上の使命と人への愛着の矛盾に苦しむ葛藤を描きました」とコメントしています。
そして演出を務めるのは井上作品ではお馴染みの栗山民也さん。“井上ひさし”を知り尽くした彼の「この題材なら長田さんがいい」との熱心な意見で生まれたこのタッグで、本作がこまつ座の新たな名作となること間違いなしです。
栗山さんは「神とはなにか。なぜ人は絶望に襲われた時、自ら宗教に向かうのか。絶えることのない人間同士の争いに、神への祈りは有効か。神のため、人は自ら命を捧げることが出来るのか、などいろいろな問いがぐるぐると巡る」とコメント。
戦国時代が舞台ではありますが、“神”や“宗教”について、今の時代にも通じる狂気が描かれているとのこと。井上ひさしさんイズムを残しつつ、より現代にも寄り添った作風で、きっと「むずかしいことをやさしく」描いているはずです。
井上ひさしさんのファンの方はもちろん、今までこまつ座の作品を観たことがない方も楽しむことができるのではないでしょうか。
フロイス役に風間俊介!繊細に力強く作品を彩る
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本作を彩るのは実力派の役者陣。主役のフロイスは圧倒的な演技力で話題の風間俊介さんが務めます。「心から楽しみなのと同時に、少々、恐れ慄いております。」とのことですが、「観にきてくださる皆様の心を強く揺さぶる作品になると思います」と力強いコメントも。
名を連ねるのは、映像作品で注目を集め、今回は舞台初出演の川床明日香さん。ご出身の九州が舞台の物語ということで「当時の方々に思いをはせながら、力をもらいながら、これまでの自分とこれからの自分を信じて皆さんにしがみついていきます。」とコメントしました。
続いて劇団文学座所属の釆澤靖起さん。かつて長田さん・栗山さんと他作品のスタッフとして関わったという彼ですが、役者としてお二人とお仕事をすることが念願だったそう。そして久保酎吉さん、増子倭文江さんも、作品の台本を読んでワクワクしたお気持ちをコメントしました。
最後に演劇ユニットTEAM NACS所属、戸次重幸さん。幅広いジャンルで活躍中の彼ですが、栗山さん演出の舞台に出演するのは初とのこと。「人間臭さを表現することを第一に、演じきりたい」と語りました。
豪華メンバーで描かれる戦国時代の人間模様。皆さんもぜひ、井上ひさし・こまつ座ワールドに浸ってみてはいかがでしょうか?
『フロイス –その死、書き残さず–』は、2025年3月8日(土)〜30日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演されます。
その後、全国公演は4月から。4月5日(土)兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、4月12日(土)岩手・奥州市文化会館(Zホール)大ホール、4月18日(金)宮城・仙台銀行ホール イズミティ21大ホール、4月25日(金)〜26日(土)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティと続きます。
チケットは絶賛一般発売中。こまつ座オンラインチケット、またはこまつ座チケット係のお電話にて予約が可能なので、気になる方はお早めにお問い合わせください!詳しくはこちら。
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こまつ座2025年ラインナップは本作に加え、お馴染みの『父と暮らせば』『きらめく星座』『泣き虫なまいき石川啄木』の4本。そして映画『木の上の軍隊』も上演!今年もこまつ座から目が離せません。