「日本の喜劇王」と謳われた榎本健一さんの波乱の人生を、又吉直樹さんが新作戯曲として書き下ろす音楽劇『エノケン』。市村正親さん演じるエノケンの息子、榎本鍈一さんを演じるのは、連続テレビ小説『虎に翼』やドラマ『モンスター』などに出演、現在は木曜劇場『波うららかに、めおと日和』での好演が話題の本田響矢さん。本作への意気込みを伺いました。

シアタークリエで「作品の世界に没入できる」のが楽しみ

−作品への出演が決まった率直な心境を教えてください。
「音楽劇への出演というのは初めてなので、楽しみですし、わくわくした気持ちでいっぱいです。舞台作品への出演は10代に、お芝居を学び始めた頃にやらせて頂いた時以来です。当時はがむしゃらにやっていたのですが、今回はその時より公演期間も長いので、体調管理もしっかり意識したいなと思っています」

−エノケンの息子、榎本鍈一さんを演じるというのはいかがでしょうか。
「病弱でおとなしく、礼儀正しい方だったと伺っています。脚本でどのような方として描かれているのか僕も楽しみです」

−ビジュアル撮影で衣裳を身に纏ってみていかがですか。
「髪型もビシッと決まっていますし、服も相まって背筋が伸びます」

−エノケンさんの活躍をリアルタイムでは見られていなかったと思いますが、調べてみてどう感じられましたか。
「当時の仲間の方や、先輩・後輩のコメントを読んで、たくさんの方に愛されていたのだなと感じました。息子への愛も感じる一方で、喜劇に対しては厳しさもある方なのかなというイメージを持っています」

−エノケン役は市村正親さんですが、どういったことを吸収したいと思われますか。
「全部を吸収したいです。歌の面も芝居の面も、たくさん吸収させていただきたいなと思っています」

−シアタークリエで上演されている作品は観られましたか?劇場についてはどのように感じられましたか。
「2024年にシアタークリエで上演されていた『ラブレター』を観劇しました。舞台と客席がとても近いので、目の前で繰り広げられている世界という感覚が凄くありました。だからこそ強く胸の内に刺さってくるものがあると思います。演じる側としても、作品の世界に没入できる空間のように感じられたので、舞台に立つのが楽しみです」

−舞台に初出演した際も下北沢駅前劇場と観客との距離がかなり近い劇場ですが、緊張感はありましたか。
「緊張した覚えはあまりなくて、自分たちが演じる世界に入り込んでいたと思います。なので、今回も同じような感覚になれるかなという期待があります。当時よりも経験を重ねて、感じ方やアプローチは変わってきていると思うので、どうなるのか楽しみです」

−又吉直樹さんが新作戯曲として書下ろしをするということについてはいかがでしょうか。
「学生時代にお笑い番組で見ていた方ですし、『劇場』はとても好きな作品です。又吉さんが描かれるキャラクターを自分が演じられるなんて、とても楽しみです」

役への理解を深めることで、自分を信用して監督と話せる

−音楽劇に初挑戦する心境をお聞かせください。
「歌は大好きなのですが、音楽劇への出演は初めてなので不安も少しあります。でも99%は楽しみ、わくわくしています」

−映像作品において、物語が音楽に与える影響を感じたことはありますか?
「Netflixで配信されている『恋愛バトルロワイヤル』に出演させて頂いた時は、音楽の力をもの凄く感じました。作品により没入できる音楽でしたし、音楽と芝居、映像との共和性は大切なんだなと実感した作品です」

−2024年には連続テレビ小説『虎に翼』に出演するなど活躍の場を広げていらっしゃいますが、役作りにおいて心がけていることはありますか。
「役に入る前に、役についてしっかりと理解したいという思いはあります。例えば20歳の役なら、演じるまでの20年間はどう生きてきたのか。兄弟はいるのか、好きな食べ物は何なのか、友達はどのくらいいるのか。その人の履歴書みたいな形で人物像を理解した上で、現場に入ります。その方が台詞への疑問が減るし、もし“こういうことは言わない気がする”と思ったら自分を信用して監督と話せると思います」

−役とご自身との距離が近いタイプですか?
「これまで演じてきた役柄は、理解はできるけれど自分は共感できないな、と思う役が多かったので、普段の自分とは離して考えるタイプだとは思うのですが…メイク中などカメラが回っていない時にも周囲から“役になっているね”と言われることは多いので、影響されていることは多いかもしれません」

−俳優としての考え方が変化したような、転機になった作品はありますか。
「ABEMAで放送されたドラマ『ANIMALS−アニマルズ−』です。今までで1番撮影期間が長く、1ヶ月半ほどかけて役にじっくりと向き合うことができたので、役者として役を演じる魅力や面白さに気づくことが出来ました。カメラマン役だったので、現場にも自分のカメラを持って行っていたのですが、僕が撮った写真を劇中で使って頂いたこともあって、役として過ごした時間が活きていたのかなと思います」

どんな役柄も演じられる俳優に

−本田さんにとっての喜劇王、笑える瞬間はありますか。
「ロバート秋山さんがやられているラジオ「ロバート秋山の俺のメモ帳! on tuesday」が好きで、毎週火曜日は欠かさず聴いて笑っています。バラエティ番組にロバート秋山さんが出られていると見ちゃいます」

−歌は幼少期からお好きなのでしょうか。
「そうですね、小学生の頃から家族とよくカラオケに行っていました。Kさんの「Only Human」をよく歌います。今は「SoundCloud」というアプリで音楽を聴くことが多くて、有名無名に関わらず、聞き心地の良い音楽を探すのが好きです。音楽劇『エノケン』でもどんなメロディーに出会えるのか楽しみです」

撮影:鈴木文彦

−今後の俳優としての目標を教えてください。
「その人に向いている役というのはあると思うのですが、できる限りリミッターを外して、どんな役も演じられるよう、幅を広げていきたいという思いがあります。“これって本田くんが演じていたんだ”と思ってもらえるような俳優になりたいです」

音楽劇『エノケン』は2025年10月7日よりシアタークリエにて上演。その後、全国ツアーが予定されています。公式HPはこちら

Yurika

「王様のブランチ」新レギュラーメンバーや、木曜劇場『波うららかに、めおと日和』出演など活躍が目覚ましい本田さん。音楽劇ではどのような表情を見せてくれるのでしょうか。