劇作家・演出家で劇団「ハイバイ」も主宰する岩井秀人さんがプロデュースする『いきなり本読み!』シリーズ。出演者には作品名を事前に知らせず、ステージで文字通りいきなり本読みをするというもの。今回は演出に宮藤官九郎さんを迎え、オンライン配信された『いきなり本読み!with宮藤官九郎』をリポートします。(2021年2月、オンライン配信)

演劇の新しい楽しみ方!「本読み」で魅せる

ステージに用意されたのは、机と椅子、そして台本。中村獅童さん、平田敦子さん、富田望生さん、浅野和之さんと豪華キャストがその場で初めて見た宮藤官九郎さんの脚本を読み進めていきます。今回題材となったのは、2011年に本多劇場で上演された『サッドソング・フォー・アグリードーター』。老舗の和菓子屋に5年ぶりに娘が帰ってくるホームドラマに、未来から来たボイジャーがクドカン流スパイスを加えます。

まずボイジャー役を振られたのは中村獅童さん。タイトルも物語の趣旨も説明されないままに始まったのにも関わらず、ハイテンションで突飛なボイジャー像をいきなり作り上げます。さらに出演者全員がそれぞれボイジャー役をやることに。役者それぞれの“頭のおかしいハイテンション未来人”に笑いが止まりません。

そこには衣装も、役者の動きも、セットも照明もない。ただ机に座って、初めて見た台本を役者が読んでいるだけ。それでも役者毎に描くボイジャーの姿が浮かび上がってくることに感動します。また同じシーンでも役者が入れ替わると全然異なる物語に見えるのも面白いところ。演劇にはまだまだ楽しみ方が多様にあるのだと教えられました。

ラストは明かさない!役者の作品へのアプローチがメインコンテンツ

本読みだけでも十分に作品に引き込まれてしまうのですが、ラストは明かさないのも『いきなり本読み!』のポリシーなのだとか。役者が初めて作品と向き合った時、どんなアプローチをするのか。そこだけを楽しんで欲しいのだそうです。途中には、「セリフの前と後ろ、どちらに(爆笑)を付けるか?」といった岩井さんと宮藤さんの脚本家談義も。まるで舞台作品の稽古を覗き見してしまったような、お得感と楽しみをもらった時間でした。

Yurika

『いきなり本読み!』は2020年2月にスタートし、12月には東京・東京国際フォーラムでも実施されています。今後の開催があれば、ぜひ生で体感したいと思います。