舞台を中心に俳優として活躍を見せる高畑裕太さんが、2021年に立ち上げた劇団ハイワイヤ。第一回公演は各回満席となり話題となりましたが、今回満を持しての第二回公演の上演が決定しました。今回の作品でテーマとなるのは“介護”。超高齢社会である日本において切っても切り離せないテーマを、どのような形で上演されるのでしょうか?
“社会の片隅で過ぎていく誰かの半生”を描く。劇団ハイワイヤとは
2021年に旗揚げされた劇団ハイワイヤは、高畑裕太さんが主宰、そして作・演出を務めています。個人が経験したものをベースに物語が紡がれており、今作と前回の第一回公演で上演された『トラ』は高畑さん自身が経験したことを題材とした作品です。
作品ごとにオーディションを開催しキャストを集めているのも一つの強みで、作品に合った俳優陣で常にそのカンパニーでしか出来ない表現で舞台を上演しており、劇団公演ながら毎公演何か違うものを見させてくれるのではないかと期待をさせてくれる劇団です。
“介護”を軸に、そこから派生して見えてくる現実を描く『墓場までのかえりみち、ゆりかごからブランコへ。』
今回上演される作品は、介護士として働いていた高畑さんの経験が元となっています。
〈あらすじ〉
都内企業で働くタナカは、日々の仕事や、人間関係に激しく疲弊していた。そんな中、故郷に一人残してきた母親がレビー小体型認知症を発症したという知らせが入る。数年振りに母と再会したタナカは自身の肉親に訪れた「老い」を直視出来ないまま東京に戻る。母の介護、職場での人間関係、恋人との未来。目まぐるしく襲いかかってくる現実にタナカの心はどんどん削られていった。そしてとある日ついにタナカの精神は限界を迎えて、勤務中に重大な事故を起こしてしまう。その後離職を余儀なくされたタナカは故郷に帰って、認知症の母と二人で暮らすようになる。
今を生きる私たちにとって、介護といった誰しもが直面するかもしれない、あるいは現在直面している方もいる、そんな問題です。その問題に対して向き合う作品は、介護だけではなくそこから見えてくる多くのものを、演劇という自由度の高い表現を通して訴えかけてくれるのではないでしょうか。
高畑さん自身もコメントで、「今作はそんな現代に生きる人々の「生活」や、それぞれの当事者にしか見えない「視点」を通じて、一つの物語を描きました。そしてただただ、とにかく、とにかく、演劇としての豊かさに溢れていて、現時点での自分自身のベストを尽くした面白い作品になれることを目指しました」としており、少し暗く感じるテーマをどのような表現で舞台化されるのか期待が膨らみます。
今回の作品には、現在放送中の『あんぱん』に出演し舞台を中心に活躍している薄平広樹さんをはじめ、大河日氣さん、大竹このみさん(贅沢貧乏)、河合陽花さん(海ねこ症候群)、中村さちさん、福田航さん、藤本かえでさん、佛淵和哉さん、松尾望さんが出演されます。出演者の方が全員30代という同年代が集まり、そして年齢的にまだ介護から少し遠いところにいる俳優陣たちが、このテーマをどのように捉えて作品を作り上げるのかとても楽しみです。
劇団ハイワイヤ第二回公演『墓場までのかえりみち、ゆりかごからブランコへ。』は、7月24日(木)〜30日(水)まで、東京・下北沢シアター711にて上演されます。詳しくは公式HPをご覧ください。

自分自身にとって、演劇は遠い存在のものをより自分自身に近づけて考えさせてくれる存在だと思っています。“介護”という自分自身にとっては遠いような近いような、しかし将来経験することがあるだろうと漠然と感じるものを、演劇作品として観劇できることがとても楽しみです。