映画館で往年のミュージカル映画が鑑賞できるのをご存じでしょうか。一年を通して名作映画を上映するプロジェクト『午前十時の映画祭』では、2025年の上演ラインナップに、ミュージカル作品が4つも組み込まれています。上質なミュージカル映画を観られるこの機会に、映画館に足を運んでみませんか?
『午前十時の映画祭』とは?
『午前十時の映画祭』は、公益財団法人「川喜多記念映画文化財団」と一般社団法人「映画演劇文化協会」が毎年開催しているプロジェクトです。2010年から開始され、今年で15年目を迎えます。
傑作映画が選出され、全国の映画館で1年間にわたって連続上映されることで、本来なら映画館では観ることのできない過去の名作を鑑賞できるのです。
また、一般1500円、大学生以下1000円、シニア1200円など、通常の鑑賞料金よりもお安く鑑賞できるのも大きなポイントです。ただし、鑑賞料金は各劇場が設定しているため、詳しくは鑑賞予定の映画館の公式サイトでご確認ください。
『午前十時の映画祭』では、全国の映画館を「グループA」「グループB」にわけ、それぞれに異なる作品を上映しています。そのため、最寄りの映画館で上映される作品を鑑賞する、お目当ての作品が上映される映画館へ足を運ぶなど、多彩な方法で楽しめるのも魅力のひとつです。
2025年に上映されるミュージカル映画4作品を紹介
2025年の『午前十時の映画祭』では、過去に上映した全316作品のなかから、リクエストによって厳選された25本が上映されます。今回はその中から、4本のミュージカル作品をご紹介します。
ソウルフルな讃美歌でハッピーに!『天使にラブソングを…』
上映期間:【グループA】2025/07/25(金)~2025/08/07(木)
【グループB】2025/08/08(金)~2025/08/21(木)
製作年:1992年
名女優ウーピー・ゴールドバーグの人気を不動のものにした『天使にラブソングを…』。カジノで歌う売れないシンガー、デロリスは、ひょんなことから命の危機にさらされ、修道院に匿われることとなりました。
しかし、厳格な修道院長をはじめとする、修道院の暮らしにうんざりするデロリス。やがて若いシスター(尼僧)たちと親しくなったデロリスは、修道院の聖歌隊の指導を始めます。ところが、それは讃美歌にソウルやロックなどのアレンジを加えたもので……。
日本でもファンの多いこの作品は『天使にラブソングを~シスター・アクト~』というタイトルで舞台化され、2023年の公演では、森公美子さんと朝夏まなとさんがデロリス役のダブルキャストを務めました。
厳かな讃美歌が大胆にアレンジされ、シスターたちが生き生きと楽しげに歌う様子は、観ているだけでハッピーになれます。修道院長を演じたマギー・スミスと、デロリス役のウーピーとの掛け合いも絶品です。
60年以上愛される名作『メリー・ポピンズ』
上映期間:【グループA】2025/08/08(金)~2025/08/21(木)
【グループB】2025/07/25(金)~2025/08/07(木)
製作年:1964年
ウォルト・ディズニーによる『メリー・ポピンズ』は、児童文学が原作のちょっと不思議なミュージカル作品です。公開当時、俳優たちが演じる実写場面とアニメーション場面の融合という画期的な表現が話題になりました。
メリー・ポピンズを演じたジュリー・アンドリュースは、第37回アカデミー賞、第22回ゴールデングローブ賞で、「女優賞」「最優秀主演女優賞」を獲得しています。
やんちゃな子供たちのもとにやってきたメリー・ポピンズは、優しくて美人、さらには魔法まで使えるという型破りな家庭教師。子供たちの父親であるバンクス氏は、そんなメリー・ポピンズに難色を示しますが……。
製作から実に60年以上が立つ不朽の名作『メリー・ポピンズ』は、2026年に濱田めぐみさん、笹本玲奈さん、 朝夏まなとさんの主演でミュージカル版が上演されることが決定しています。
天才への嫉妬、そして苦悩を描いた『アマデウス』
上映期間:【グループA】2025/11/07(金)~2025/11/20(木)
【グループB】2025/11/21(金)~2025/12/04(木)
製作年:1984年
『アマデウス』は、厳密に言えばミュージカル映画ではありません。
しかし、原作はロンドンやブロードウェイなど、数々の劇場で上映された名作演劇であり、ミュージカルファンの方々にもぜひ観ていただきたい作品です。
物語の主人公は、オーストリアの宮廷楽士・サリエリ。非常に優れた音楽家ですが、同時期に活躍した若き天才作曲家、アマデウス・モーツァルトに嫉妬心を抱いています。サリエリの嫉妬はやがて苦悩にかわり、その感情が大きな悲劇へと広がっていくのです。
音楽を愛する者の努力が、圧倒的な才能の前にどれほどの劣等感を抱かせるのか。芸術に関わる人々のすべての苦しみを描いたともいえるこの作品は、映画館で観るとどれほどの迫力があることでしょう。
劇中にはモーツァルトのさまざまな名曲が使用されており、ミュージカルにひけを取らないほどの鑑賞体験を楽しめるはずです。
革新的な振付と名曲に浸れる『ウエスト・サイド物語』
上映期間:【グループA】2025/11/21(金)~2025/12/04(木)
【グループB】2025/11/07(金)~2025/11/20(木)
製作年:1961年
NYを舞台に、「ジェット団」と「シャーク団」の抗争を描いた物語。その渦中で生まれる切ない恋は、多くの人々の涙を誘いました。
本作は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を原作にして、人種間の分断や移民問題、若者たちの非行といった社会的なメッセージが描かれています。
振り付けを担当したジェローム・ロビンス(1918-1998)は、当時のミュージカル界では一般的ではなかった、クラシック・バレエの要素を取り入れました。この振り付けは、後年、「キング・オブ・ポップ」と称されたマイケル・ジャクソン(1958-2009)にも影響を与えるほどでした。
さらに、作曲家レーナード・バーンスタイン(1918-1990)による名曲の数々も、本作が長年にわたり愛され続けている理由のひとつと言えるでしょう。
『午前十時の映画祭』を実施する映画館や、「グループA」「グループB」の詳細については、公式ホームページからご確認ください。なお、劇場によっては上演時間が「午前十時」以外の場合もあります。併せてご確認ください。

今年の『午前十時の映画祭』でピックアップされたミュージカル映画は、正直どれも見逃したくないほどの名作ばかりです!大スクリーンで味わうクラシックミュージカルの魅力を、この機会に体験してみませんか?