舞台の上に立ち続けるのは、どんな世界を生きることなのでしょうか。華やかな拍手の裏側にある、焦りや迷い、そして静かな喜び。そんな「俳優という生き方」を、たった2人の会話劇で浮かび上がらせる舞台『ライフ・イン・ザ・シアター』が幕を開けます。この記事では、数々の名優に演じられてきた本作の特徴やあらすじ、キャストの魅力をご紹介します。一緒に「俳優人生の悲喜こもごも」に触れてみませんか?
名優2人が約90分間の濃密な会話劇を繰り広げる
舞台『ライフ・イン・ザ・シアター』は、現代アメリカ演劇を代表するデヴィッド・マメットの代表作です。1977年2月、シカゴ・グッドマンシアターで初演された後、ブロードウェイやロンドンでも上演されてきました。
日本初演は1997年。シアタートラムの柿落とし公演(こけら落とし公演)として、演出・佐藤信さん、石橋蓮司さんと堤真一さんで実現しました。2006年に市村正親さんと藤原竜也さん、2022年には勝村政信さんと高杉真宙さんの顔合わせで公演がおこなわれています。
『ライフ・イン・ザ・シアター』の舞台は、まさに「劇場」そのものです。世代もキャリアも違う2人の俳優が、舞台上や楽屋裏、舞台袖や衣裳部屋など、劇場のあらゆる場面で、時に笑えて、時に切ない会話を交わします。
作品の魅力といえば、少しずつ変化していく2人の心理的パワーバランスを、時にユーモラスに、時に残酷なほど辛辣なタッチで描いているところ。上演時間はわずか90分ですが(※2025年版の上演時間は未定)、様々な感情の積み重ねが濃密に詰め込まれていて、めまぐるしい人生があっという間に過ぎ去っていくような味わいがあります。
2025年、数々の名優によって演じられてきた不朽の名作が、16年ぶりに日本で上演されます!
俳優の生き様から「人生の悲喜こもごも」が浮かび上がる
劇団に入ったばかりのジョンは大御所俳優のロバートに尊敬の念を抱いており、芝居を褒められて喜んだり、遠回しに食事に誘おうとしたりするシーンも登場します。ロバートもジョンに期待していて、舞台人生に対する価値観など、熱心に指導するのでした。
しかし、ジョンがキャリアを重ねていくうち、2人の関係が変化していきます。ジョンは先輩を少しめんどうに感じ始め、老いていくロバートは若い才能に憧れるのです。男たちのパワーバランスが、まるでシーソーのように行き来し、交錯する世界は、滑稽さと激しさに満ちていて、役者は2人だけなのに飽きる暇がありません。
それぞれの葛藤を乗り越えて、ベテラン俳優ロバートと若手俳優ジョンの関係性はどうなるのか。いつもは観客が見ることのない、舞台裏における俳優の姿や生き様を通して、「人生の悲喜こもごも」がじんわりと胸にしみわたる作品です。
堤真一と中村倫也が、それぞれの俳優人生と重なる役柄を演じる
大御所俳優ロバートを演じるのは堤真一さん。1997年の日本初演でジョンを演じたのが、当時30代の堤さんでした。あれから約30年を経て、堤さんはついにロバートとして舞台に立ちます。
堤さんといえば、幅広い演技力と飾らない自然体な姿、そしてユーモラスな一面が魅力的です。舞台、映画、ドラマとジャンルを問わず活躍し、二枚目から三枚目まで幅広い役柄をこなせる実力に加え、人柄の良さも多くの人々を惹きつけてきました。
かつてジョンを演じた堤さんだからこそ、ロバートの姿には、年齢を重ねた俳優ならではの実感とまなざしが宿るはず。若き日の自分を知るからこそ演じられる、深みのあるロバート像が楽しみです!
また、若手俳優ジョンを中村倫也さんが演じます。中村さんは「カメレオン俳優」とも呼ばれるように、シリアスからコメディまで、幅広いジャンルの役柄をこなす演技力が特徴です。観客の心を掴む声や、親しみやすさの奥に秘めた演技への強いこだわりも、彼を人気俳優へと押し上げてきました。
ジョンは、俳優としての成長や葛藤を抱えながら舞台に立ち続ける存在。まさに多彩な表現を追求し続けてきた中村さんだからこそ、その揺れ動く心情にリアリティと説得力をもたらしてくれるでしょう。ベテラン俳優との対話を通して変化していくジョンの姿には、中村さん自身の軌跡や今が自然と重なります。
2009年上演のシス・カンパニー公演『バンデラスと憂鬱な珈琲』で初共演して以来、親交を深めてきた2人。「役者人生における父」と呼び、一番慕っている役者として、中村さんは堤さんの名前を挙げているそうです(2023年放送のテレビ番組『日曜日の初耳学』より)。
俳優として高め合ってきた堤さんと中村さんが挑む、究極の二人芝居『ライフ・イン・ザ・シアター』。 2025年9月5日(金)から23日(火・祝)に、IMM THEATERにて東京公演が実施されます。その後、京都、愛知、大阪、愛媛、宮城公演も予定されていますので、詳しい情報は公式サイトをご確認ください。

『ライフ・イン・ザ・シアター』は数々の名アドリブが登場してきた作品なので、お2人の深い関係性からどんな演技が飛び出すのか、とてもワクワクしています。90分間とは思えない濃密さで、みなさんに新しい世界観を教えてくれるはずです!