演劇大国イギリスの傑作舞台を、日本の映画館で楽しめるプロジェクト「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)」では、8月1日からテネシー・ウィリアムズの名作『欲望という名の電車』が上映開始されます。

ジリアン・アンダーソンが没落した名家の令嬢・ブランチを演じ、彼女のキャリアの中で最高の評価を得た本作品。2014年にロンドンのヤング・ヴィック劇場で上演され、大きな成功を収めました。2015年のローレンス・オリヴィエ賞で最優秀主演女優賞を受賞した本作品が、上演から10年の時を経てスクリーンに蘇ります。

『欲望という名の電車』とは?ピューリッツアー賞受賞の名作

『欲望という名の電車』は、アメリカの劇作家テネシー・ウィリアムズ(1911-1983)による作品で、1947年12月にブロードウェイで初上演されました。

本作は、1947年・1948年度のピューリッツアー賞を受賞したほか、ニューヨーク劇評家賞など、数々の賞を受賞するほどの話題作となりました。

アメリカ・ニューオーリンズの下町へやってきたブランチは、アメリカ南部の大農園の令嬢でした。名家出身の彼女は実家の財産を使い果たし、精神的に不安定になっています。

そんなブランチは、妹であるステラの住むアパートに身を寄せることになりました。ステラの夫のスタンリーは粗暴な人物で、ブランチはカルチャーショックを受けます。

劇中では、ブランチとスタンリーのさまざまな対立と確執が描かれるなか、ブランチがひた隠しにしていた「過去」が暴かれていきます。彼女の破滅への道のりが鮮烈に、そして繊細に描かれた作品です。

『X-ファイル』のジリアン・アンダーソンが魅せるブランチ役

狂気と悲しみ、そして繊細さと凶暴性を持ち合わせるブランチを演じるのは、俳優にとっては大きなやりがいを感じられることかもしれません。

今回の舞台版でブランチ役を演じたジリアン・アンダーソンは、アメリカの実力派女優です。日本でも大ヒットしたTVシリーズ『X-ファイル』では、主人公のひとりであるFBI捜査官ダナ・スカリーを演じました。

俳優として優れたキャリアを持つジリアン・アンダーソンですが、この舞台におけるブランチ役で「キャリア最高の演技」と高く評価されています。

そのほか、「ジリアン・アンダーソンは完全に魅了する」(ガーディアン紙)「圧倒的な力強さで心を打つ」(インディペンデント紙)など、彼女の演じるブランチは、作中で絶対的な存在感を放っていることがわかります。

また、今回の舞台では、中央に回転式の舞台装置が設置されています。

これが、ブランチの不安定な心情や、登場人物たちの醸し出す不穏な空気のなかに観客を引き込みます。その舞台演出に加え、ナショナル・シアター・ライブの撮影技術によって、さらに臨場感が増すことが期待されるでしょう。

『欲望という名の電車』をより楽しめる公開記念イベントも

TOHOシネマズ日比谷では、8月1日からの作品上映に先駆けて、7月31日(木)に公開記念イベントが行われます。本イベントのゲストは、戯曲翻訳家の小田島恒志さんと小田島創志さんです。

近年の演劇界で最も活躍している若手翻訳家の小田島創志さんが進行役を兼ね、小田島恒志さんに本作を楽しめる情報を深掘りしていくイベントとなっています。小田島恒志さんは、日本での『欲望という名の電車』の上演時に翻訳を手掛けてきたこともあり、作品をより楽しめる情報を得られるでしょう。

上映情報およびイベントについては、TOHOシネマズ日比谷の公式ホームページをご覧ください。

糸崎 舞

テネシー・ウィリアムズの描く劇作品は、時に痛みを伴うほど繊細です。しかし、その繊細さと凶暴さは、私たちの心を掴んで離しません。屈指の名作として知られる『欲望という名の電車』、ジリアンの名演技も含めて要注目作品です。