戦争があり続ける現代で、戦争をしないと宣言した国に生きているわたしたち。日々の暮らしでは見えにくいけれど、世界のどこかでは今日も誰かが痛みを感じています。そんな現実に目を向け、声をあげるのが、新進気鋭のミュージカル劇団「東のボルゾイ」です。彼らの新作『ウテルス』は、戦争のある世界で「それでも希望を見出そうとする」人々の姿を、音楽と物語で描き出します。ぜひ劇場で、生きる意味や希望の所在に思いを巡らせてみませんか?
「日本人の身体と言語を炸裂させるミュージカル」を目指して
「東のボルゾイ」は、主宰の島川柊さん(脚本家)、久野飛鳥さん(作曲家)、大舘実佐子さん(演出家)が東京藝術大学で出会ったことをきっかけに、2018年に始動した劇団です。「日本人の身体と言語を炸裂させるミュージカルを作る」という目的を掲げ、毎年、平均2本の新作公演とミニ公演1本を上演しています。
プロフィールだけ聞くと「よくある大学発の劇団かな?」と感じるかもしれません。でも「東のボルゾイ」は、主宰3名の才能と、エンターテインメントの各方面で培われてきたスキルが組み合わさり、どんどんパワーアップしていくのが特徴です。
島川さんは、共同作詞や訳詞、演劇メディアでの連載、お笑い単独ライブの映像制作など、活躍の幅を広げ続けています。久野さんはピアニストとして、ミュージカルやレストランでも演奏。さらに大舘さんは、東京藝術大学大学院に在籍しながら、アシスタントディレクターやセットデザイナーとしても舞台制作に取り組んでいます。
そのクオリティとオリジナリティに溢れた創作が評価され、2025年にはミュージカル『ソフトパワー』で「Musical Awards TOKYO 2024」ミニシアター賞を受賞。「東のボルゾイ」は、小劇場ミュージカルの中で今注目を集めている新進気鋭の劇団なんです!
いつまでたっても戦争がある世界で
2025年、「東のボルゾイ」が待望の新作ミュージカルを上演します。劇団8本目となる公演のタイトルは『ウテルス』。いったいどんな内容なのでしょうか?
<あらすじ>
花ちゃんはある日、自らを【花丸】と命名し、男になった。
きっかけは兄から言われた「お前が男だったら、親父は喜んだと思うぜ」の一言だった!
<主宰コメント>
いつまでたっても戦争がある世界で、できる限りの希望を探す物語です。東のボルゾイは、今年8月に旗揚げ5周年を迎えます。現時点での集大成となるよう、元気モリモリ決死の思いで稽古に励んでおります。石橋佑果さん、仲井真徹さんをはじめとする頼もしいキャスト陣、そしてスタッフの皆さんのパワーをお借りして、火花散る悲喜劇ミュージカルをお届けしますので、ぜひ劇場に足をお運びいただけましたら幸いです。
26名の若手表現者と生演奏が生み出すフィーバー
多くの若手表現者を起用するのも「東のボルゾイ」らしさ。『ウテルス』では12名の出演者と14名のアンサンブルキャストが登場する予定です。
主人公「花丸」を演じるのは石橋佑果さん。ミュージカル『魔女の宅急便』ジジ役、新作ミュージカル『ディズニー くまのプーさん』ピグレット/ルー役など、近年ミュージカルで大活躍中の俳優です。郵船クルーズ飛鳥Ⅱ『2025年 オセアニアグランドクルーズ』にゲストエンターテイナーとして乗船、関東大手テーマパークのミュージカルショーで主演するなど、活動は多岐にわたります。
喜怒哀楽をのせてクルクルと変わる表情。愛らしさ、温もり、透明感のある声。作品や関係者への愛情深さ。石橋さんは見た目のかわいらしさが印象に残りやすいですが、それ以外の魅力もたっぷりあるんです!「東のボルゾイ」作品に出演するのは、2023年の『バウワウ』以来とのことで、どんな化学反応が起こるのかも楽しみにしています。
さらに『ウテルス』では、ピアノとパーカッションの生演奏も味わえます。難しい印象を受けるのに、観客は決して置いて行かれず、舞台を最後まで満喫できる。久野さんが創り上げる世界観は、観る者を虜にしてやみません。「音楽溢れる演劇」こそ「東のボルゾイ」の真骨頂なので、ぜひ楽曲や演奏にも意識を向けてみてくださいね。
ミュージカル『ウテルス』は、中目黒キンケロ・シアターにて、2025年9月5日(金)から9日(火)まで上演されます。詳しい情報は公式サイトをご確認ください。

あらすじから物語の展開が予想できない感じに、思わず想像が膨らみます。舞台は一期一会。少しでも気になった方は、「できる限りの希望を探す」旅に出発してみませんか?