シリーズ累計1,300万部突破の大人気小説シリーズを原作に、12月から日生劇場で上演されるミュージカル『十二国記 −月の影 影の海−』。公演開幕に先立ち、主演・柚香光さんを始めとするキャストと、演出を手がける山田和也さんが製作発表会見に臨みました。

演出のヒントは「モップ」?「見たことのない幻想的な世界を」

『十二国記』は小野不由美さんによる、大河ファンタジー小説で、30年以上にわたり熱烈な支持を受けながら書き継がれてきています。2002年にNHKにてアニメ化、2019年には18年ぶりの新作長編『白銀の墟(おか)玄(くろ)の月』が刊行され大きな話題を呼びました。

現実世界と、地球上には存在しない異世界とを舞台に繰り広げられる壮大なファンタジー作品『十二国記』。世界初のミュージカル化となる本作は、シリーズ本編の第一作『月の影 影の海』を描き、演出を山田和也さん、脚本・歌詞を元吉庸泰さん、音楽を深澤恵梨香さんが担当します。

主人公の女子高生・中嶋陽子は、異界に連れ去られた後の中嶋陽子(ヨウコ)を柚香光さん、我々が住む世界の陽子を加藤梨里香さんと2人が1人の人物を演じていきます。

製作発表会見では柚香さんの原作オマージュビジュアルをお披露目。このビジュアルを使用したミュージカル記念特別フルカバー仕様の原作本 上下巻が、9月12日より順次全国書店にて発売されます。

製作発表会見には柚香光さん、加藤梨里香さん、楽俊(らくしゅん)役をWキャストで務める太田基裕さん・牧島 輝さん、景麒(けいき)役の相葉裕樹さんと、演出・山田和也さんが登壇しました。

柚香さんは昨年宝塚歌劇団を卒団後、本作が東宝ミュージカル作品初主演。「本当に光栄で、そして同時に、正直申し上げますとプレッシャーを感じております」と心境を明かしながら、「原作ファンの皆様にも、初めてご覧になるという方々にも楽しんでいただける作品を作りたいと燃えております」と意気込みました。

地球上には存在しない異世界をどのように舞台上に出現させるのか。演出の山田さんは「我々は舞台なので、実写の映像やアニメとはやり方・特性が違うと思います。元吉さん・深澤さんと、どういう語り口にすると舞台にする意味・価値があるかということを一生懸命考えながら作っている最中です。壮大なことはなく、例えば実物大のヘリコプターが降りてきますとか、巨大なバリケードが入ってきますみたいなことは想像しないでおいていただいて(笑)。何もなくてもそういう場所だと宣言してしまえばそこになれるのが舞台なので、大袈裟なことはせず、等身大の高校生の女の子がたどる過酷な運命にお客さんが感情移入していただけるようなミュージカルになれば良いかなと思っています」と語ります。

演出プランのヒントとしては「モップ」というキーワードを挙げ、柚香さんは「飲み込まれるような、ぬめーっと出てくるような。舞台の奥行きの変化によって、同じ舞台なのに空間の感じ方が変わってくる。ものすごく効果を発揮する装置じゃないかと思います」とコメント。

相葉さんは「こういう使い方を見るのは生まれて初めて。お客様にも見たことない幻想的な世界に、美術や衣裳、僕らの演技、歌が加わって、作品の世界がさらに膨らんで届けられるんだろうなとワクワクしました。おそらくモップが舞台上に一番出ています(笑)」と語りました。

太田さん・牧島さんが演じる楽俊は「ネズミの形をしている半獣」ということで、「街で見かけるネズミが少しだけ愛おしく見えてきた」とおどけつつも、どこまで明かすか迷うお二人。そこで柚香さんが「尻尾の動きが大好きです。本当にキュートで、一緒にお芝居をできるのが楽しみ」とヒントを明かしました。本作ではパペット制作に劇団プーク、パペット操演指導に柴崎喜彦さんが加わることが決定しており、楽俊のキャラクター表現にも期待が高まります。

原作の魅力について問われると柚香さんは「常に自分に問いかけられているような気がしました。あなたの生き方はどうなんですか、問題にぶち当たった時、自分の欠点に向かい合った時、あなたはどうするんですかと。凄い作品に出会わせていただいたなというのを最初に感じました。その中で中嶋陽子さんという方は、最初は色々なものに流されて、女子高生という年齢相応の葛藤であったり、迷いであったり、過ちであったり、色々なものを抱えているんですけれども、異国に飛ばされて試練に立ち向かっていく姿に色々なことを教えていただくような気がしまして、本当に尊敬するという思いと共に、考えさせられる、学びをいただく作品だなと思いました」と語ります。

加藤さんは「自分の人生をどう生きていきたいのかを考えさせてくれる作品だなと感じました。陽子は旅の中で変化していって、自分らしさ・自分の人生を見つけていくのが凄く魅力的ですし、ミュージカルでも大事にしていきたい部分です。私は日本にいる陽子を演じさせていただくんですけども、旅の最中も柚香さんが演じるヨウコと心の中で対話していく役割でもあるので、「家に帰りたい」という強い思いをずっと持ち続けることを大切に、お稽古に臨んでいきたいなと思っております」と語りました。

好きなシーンについてお伺いすると相葉さんは「景麒が陽子と契りを交わすシーン。「許すとおっしゃい」「許す」という言葉から物語が進んでいくので、ここから世界が広がっていくのが印象深く、好きなシーンです」とコメント。

牧島さんは「作品を読んだ時に好きだなと思ったのは、聞きなれない単語がたくさん出てきて、それを理解していくためにその世界に入っていく没入感があったこと。一緒に自分もその世界に入ったような感覚になれるところが好きです」、

太田さんは「僕もシーンというより世界観が好きです。原作を読んでいると文字から浮かび上がってくる空気感や匂いがあって、非常に演じがいがありそうだなと想像しています。漆黒の闇のような描写が多く、自分が追い込まれていくような感覚があるんですけれど、その闇が居心地良くなるような、闇の中をたゆたう感じで、不思議な感覚を得ました」と語ります。

加藤さんは「楽俊と再会するシーン」と言うと、柚香さんは大きな笑顔と前のめりで共感。「楽俊と一緒に旅をして、一度離れた後に再会するシーンが好きです」と加藤さんが語ると、柚香さんも「陽子の思い、そして楽俊がどのような思いで彼女を待っていたかを考えると、色々な思いが込み上げてきて大好きなシーンです」と語りました。

山田さんは本作の魅力について、「架空の世界が大部分の作品ですけれども、とても現実感・リアルさがあって、それが一番の魅力だと思っています。リアルな世界だけれど、何一つ知らない主人公が読者と、そしておそらく観客と、一つ一つ知っていって、知れば知るほど不安になったり、知ることで安心したりしていく。没入感と言うとありきたりですけれども、観客や読者が主人公と同じような気持ちで最後まで行くということがこの作品のすごく素敵なところだなと思っていて、舞台も極力そうなれたらいいなと今思っています」と語ります。

音楽についても7〜8割は完成しているということで、陽子役お二人が掛け合い、陽子の心の中の対話が描かれる楽曲もあるそう。また柚香さんは「迫力のある映像も楽しんでいただけるんじゃないか。あとは殺陣もあります。宝塚歌劇団の男役の時にも殺陣を培ってまいりましたけれども、殺陣を存分にやらせていただけるということで、どのように戦っていくのかを楽しんでいただければ」と見どころを語りました。

撮影:晴知花

世界中で愛される作品の世界初演というところで、再演や世界進出、シリーズ化も期待される本作。山田さんは「『千と千尋の神隠し』がロンドンに行ったり韓国に行ったりしていますけれど、我々も負けずに、タヒチに行ったり、ハワイに行ったりモルディブに行ったり…(笑)。真面目な話、これが上手くいけば、原作はたくさんお話がありますので、第二弾第三弾と続いていって…(キャスト)みんなあと30年ぐらいはこれに関わることになるよ。頑張ってね」と今後への期待を語りました。

ミュージカル『十二国記 −月の影 影の海−』は2025年12月9日(火)から29日(月)まで日生劇場にて上演。2026年1月6日(火)から11日(日)まで福岡・博多座、1月17日(土)から20日(火)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、1月28日(水)から2月1日(日)まで愛知・御園座にて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

「モップ」とはどんな機構なのか…演劇ならではの『十二国記』に期待が高まりました!会見中は、柚香さんが同じ陽子を演じる加藤さんに、温かい眼差しを向けているのが印象的でした。髪色がピッタリのお二人でしたが、合わせたわけではなく、偶然気持ちが通じ合って揃ったのだそうです!