同期、動機、動悸…。一言に「ドウキ」と言っても、様々な意味合いを連想させるのが日本語の面白いところ。同期たちが集まった動機とは?そしてかつて仲間だった彼女らが離れ離れになってしまった動機とは?様々な想いと事情が交錯した作品、リーディングアクト『ドウキの…』の観劇リポートをお届けします。(2021年9月・よしもと有楽町シアター)

朗読劇の魅力が詰まった作品。言葉から“動機”を想像して

演劇、特に朗読劇では、観客の“想像力”に委ねることが多くなります。誰がどんな役なのか、その言葉が何を意味するのか、登場人物たちは過去にいるのか現在にいるのか。1つの場所でシーンを完璧に再現しないからこそ、様々な意味合いを想像させる。リーディングアクト『ドウキの…』は、まさにそんな魅力が詰まった70分でした。

演劇の養成所の同期だった4人は、ある事情から離れ離れに。そして、30年以上の時を経て再会することとなります。なぜ離れ離れになったのか、過去を思い出しながら探っていく登場人物たち。音楽を担当するPAHUMAさんの生演奏と共に、再会した「今」と、出会った当時の「過去」を行ったり来たり。1人1人の思い出と一緒に、少しずつ物語の骨格があらわになっていきます。全てを明らかにしない、様々な解釈が可能な脚本が故に、1人1人の登場人物の視点に立ち、その行動の“動機”を確かめたくなります。

朗読劇なのにアドリブあり?!個性豊かなキャストが魅せる!

出演は、小川菜摘さん、宮下今日子さん、藤井隆さん、守谷日和さん、フクシノブキ(福士申樹)さん。小川菜摘さんと宮下今日子さんはまるで本当に同期かのように息のあった掛け合いを見せます。同窓会で2人が会ったら本当にこんな風にお喋りするんだろうな、と思わせられるほど。一方、藤井隆さんや守谷日和さんはアドリブ満載の顔芸やセリフ回しが炸裂。守谷日和さんはある小川さんとの掛け合いで、稽古から毎回異なるセリフと演技をしていたそう。その場限りの空気を作り上げるのはさすが芸人の成せる技です。

物語の重要な鍵を握る青年を演じるフクシノブキさんは、落ち着いた雰囲気ながらもどこか不思議めいた存在感。彼は過去に何をしたのか、それがそのほかの登場人物たちにどんな影響を与えたのか。常に人物像の印象が変わっていく演技力が、物語を静かに大きく動かしていくのを感じました。

Yurika

リーディングアクト『ドウキの…』は9月20日、21日によしもと有楽町シアターにて上演。21日は配信が行われ、見逃し視聴は23日の18:30までとなっています。劇場に足を運べなかった方も、配信で登場人物たちの様々な視点から“動機”を想像してみてください。配信チケットの購入はこちら