Audience人気企画、勝手に推しを大特集。今回紹介させていただくのは、役者:朝木ちひろさんです。25歳から役者を志した朝木さん。未経験・普通のOLだった彼女が、夢に向かって現実を闘う背中の恰好良さからでしょうか。”新しい時代をサバイブする多様な女の子のロールモデル”を発掘するオーディション『Miss iD 2020』にて、「常に前を向くという真似のできない正しい才能とパワーに」と、フェアプレー賞とVoCE賞を受賞されています。

そしてなんと、記事で紹介させていただけないか連絡を取ったところ、「折角だから」とインタビューに応じてくださいました。

なので今回は特別に、公式に推しを大特集。役者を目指したきっかけから、芸をいかに磨き、役者となったのか。そして、映画やCMなど活躍の幅が広がりつつある現在に、どんな壁を乗り越えて辿り着いたのか。本人からお聞きした役者:朝木さんの軌跡を、前編・後編の2回にかけて紹介させていただきます。

空っぽな自分を埋めたくて始めたボランティアエキストラ、でも職業にする気なんてなかった。

―25歳・未経験で役者を目指すというのは、なかなか勇気のいる決断のように感じるのですが、目指されたきっかけをまずおうかがいできますか。

本当に最初からお話しさせていただくと、私は25歳までOLをしていたんですが、趣味が無かったんです。学生時代から、高校は帰宅部で学校行事を楽しむとか、大学では人並みにサークルに入るとか、それなりに充実した生活を送っていたつもりでした。社会人になっても、土日はしっかり友達と遊んでいて。

でもそれは、今で言うインスタ映えみたいな感じで、いかに自分が充実しているかアピールするために生きているのに近くて。あるとき、これって別に自分の趣味とは言えないよな、自分って空っぽだなって思ったんです。

だから何か面白いことをしてみたくて探していたら、テレビ局のホームページに「ボランティアエキストラ募集」って欄があって。そういうのって、何かエキストラ事務所とかの人がやるものだと思っていたんですが、誰でも応募できるんだと知って興味を持ちました。ボランティアだから副業にもならないし、もともとちょっとミーハーなところもあったので。それで1回行ってみたら、、、病みつきになって、毎週末行くようになりました。笑

初めて行った現場は、今思えばすごく厳しい現場だったんです。監督が「いやそうじゃねぇだろ」「お前こうしろや」みたいな指示をして、みんながアワアワしていて。テレビを作るところってこういう雰囲気なんだ、と正直最初はちょっと怖いと感じていました。でも「撮影を始めるぞ」「シーン何々、いきます」ってカチンコがなった瞬間に、ワッてみんなの集中力が一つになって。役者さん、ボランティアエキストラの人、スタッフの人全員が、カチンコが鳴った瞬間に集中するのにびっくりしたし、自分の勤めている職場で、あまり見たことのない目をみんながしていたのが印象的でした。

そして、そのとき撮影されたものがテレビで放送されたのを観た時に、「あの瞬間・あの場所でみんながワッて集中したものがこうやって形になって、それを視聴者が見て、すごい面白いとか、励まされたりとか、そのために仕事だったり学校だったり頑張ってる」「今日はドラマがあるから頑張ろうって思ってる人とかもいるんだ」と思ったら、すごく感動してしまったんです。

でも、そのときは役者を職業にするなんて考えていませんでした。役者になるような人は、スカウトされて芸能界に入るものだと思っていたのですが、私は原宿とか歩いていても別にスカウトとかされないですし。笑

普通の幸せだって、掴めるか分からないもの。なら、思い切り冒険してみたい。

―ボランティアエキストラを趣味にされた、でもそのときはまだ、役者を目指していたわけではないのですね。何かその後、考えが変わる出来事でもあったのでしょうか。

実は、家族が離れ離れになったり、過労で体調を崩してしまったことなどが重なって。そのときに、今の自分・今までの自分の人生ってどうだったのかな、と考え直したんです。それで、自分の今までの人生ってずっと「このくらいでいいかな」みたいな、”普通”に沿ってきた人生だったなと思って。

今までそういえば冒険したことなかったな、と。でも、一生普通の幸せを追求していったとしても、それもつかめるかどうかわからない。だったら、20代のうちに1回くらい冒険しよう、いま一番趣味としてやっていることを職業にしてみようと考えたんです。それで会社を辞めて、役者になると決めました。」

―では、会社を辞めるときには、まだ役者としてやっていけるかは分からない状態だったんですか!?

全然わからなかったですね。今も役者としてやっていけてる、と言ってよいかは自信がないですが。とにかく、今までなにも挑戦というか、危ない橋を渡るみたいなことはしてこなくって。“普通の人になるためのプロセス”を積んでいたけど、1回だけでも挑戦してみようかなと思ったんです。」

念願の事務所入り。でも、役者としての履歴書が白紙では、そもそもオーディションに進めない。

―役者になると決心されてから、まずはどんな行動をされたんですか?

当時は本当に何もできない状態で、どうやったら役者になれるのかも分かりませんでした。ただ、芸能事務所に入れば役者になれるかなと思って。だから芸能事務所を手当たり次第に受けていきましたね。

でも、履歴書を送っても25歳・未経験の女なんか欲しがってくれる事務所は、なかなか見つからなかったです。続けていく中で、一社、ようやく入れてくれる事務所が見つかったんですが、それでももちろん”売り出す人”としての採用じゃない。完全に未経験なので、事務所の営業の方も何を売りにすればよいか分からず、苦労されたのではと思います。

やっぱり、役者としての履歴書が白紙なので、それを出しても書類審査から通らなくて。だから、オーディションにまず行けないっていう壁がありました。これが10代とかだったら、未経験でも書類が通ってオーディション会場に行けたりするらしいのですが、私はオーディション会場にもほとんど行けない状態で。このままでは駄目だと悩みました。

―実績がないとスタートラインに立てない、でもスタートラインに立てないと実績が増えない。世知辛いですね。。。その状態からどう抜け出されたのですか?

当時のマネージャーさんに相談したら「チケットを売る覚悟ができるんだったら、舞台やってみる?」「チケットが売れないと劇団側にも迷惑が掛かっちゃうから、そこは覚悟が必要だけど。」って言われて。で、舞台のオーディションを受けて受かり、それから最初の2年間は、舞台しかほぼやっていないです。特に2年目は、もうとにかく自分の修行の年にしようと思って、1年間で6本の舞台に立ちました。」

―1年間で6本!二か月に1本のペースで舞台に出演するなんて、成り立つんですか?

そう、だから1つの舞台が終わった次の日から次の舞台の稽古に合流とか、掛け持ちに近いことをして成り立たせました。なのでこの1年間は、ほとんどの日々が舞台稽古か本番かという感じでした。」

休みなく舞台に打ち込む日々。OLを経験したからこそ持てる、感謝の気持ちが支えてくれた。

―では役者としての学びは、学校に通うとかではなく、現場で叩き上げる形で学んでいかれたんですね。

本当にそう思います。舞台って、映像と違ってお客様の反応がじかに返ってくるんです。終演後に「あなたの役すごくよかった」と声をかけてくださる方もいれば、SNSで感想を書いてくれる方もいる。そういった方々の言葉から自分がどう見られているかを学んで、自分の演技を見直していました。

それに、やっぱり掛けてくださるお金と時間。特に時間は、自分がOLをしていたから「土日に予定を空けてもらえるのがどれだけ大きなことか」っていうのは身に沁みて分かっていたので。電車に乗って、劇場に行って、そこで2時間弱過ごしてくれるってスゴイことなんだよなって。だから、中途半端なことはできないなって思いながら取り組んでいました。

―お金と時間に対して「しっかり返そう」といったプロ意識は、もともとOLだったところから来ているんですね。

それはあると思います。OLを経験したからこそ、人一倍、応援してもらえるありがたみが分かるというか。「朝木ちひろを応援してます」って言ってくださる人がいても、ずーっと応援してくださるなんてことは、なかなかないことだと思うんです。土日や平日の時間を空けるっていうのがどれだけ大変か分かっているつもりなので。

だから「ごめん仕事で今回の舞台行けそうにない」とか応援してくれる方に言われても、「全然大丈夫です!私はこれから先も何度でもステージに立つし、時間を気にさせないでも済むように、映画だったりテレビにもでます。もちろん生の私も見てほしいから舞台もずっと続けていきます。だからあなたの時間のある時、これが見たいと思ったときに来てください。」っていうスタンスでいます。

出演する舞台に全通してくださるお客様とかもいて、もちろんそれも嬉しいんですが、1回だけなんとか来てくれる・どうしても行けないけど応援してくれるといった方の存在も、私には大きいです。フォローをはずさないでいてくれる方というか。私の名前を知ってくれて、興味を持ってくれて、いつか見たいと思ってくださる方の存在も、私にとってすごく大きいんです。

―なるほど。そういった方々の存在が、張り合いや頑張る力になっているんでしょうか。

もちろんです。やっぱり周りがライバルだらけですし、一つの枠を争うなかで、自分が他の人よりその役に合わなかったから落ちるわけで。自分って駄目だ、自分の何がいけなかったんだろう、とすごく落ち込んでしまうことがある。「そんなにボロボロになってまで、勝負の場にいなくてもいいんじゃないか」って実際に家族に言われたこともあります。それでも闘い続けられるのは、応援してくれる方がいるから。いまでは、普通の毎日・同じような毎日を過ごしていたときより、いまの私の「いつも戦い」みたいな日々の方が自分に合ってるんじゃないかって思っています。

―思っています、ってことは現在進行形でも闘い続けてらっしゃるんですね。

それはもう間違いなく。キャッチコピーは「孤高のドリームファイター」なので。(笑)」

Kei

孤高のドリームファイター、役者:朝木ちひろさんへのインタビュー記事。前編では、朝木さんが役者を目指したきっかけから、いかにして役者としての最初の1歩を踏み出したのかを紹介させていただきました。後編では、夢への道を阻む数々の壁と、その壁をどう乗り越えたのか。映画やCMなど活躍の幅を広がりつつある現在に、いかにたどり着いたのかを紹介します。ご期待ください。