2020年に緊急事態宣言の影響で上演が叶わなかった、彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』。本作を上演しないことにはシリーズを終われないという、彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督の吉田鋼太郎さんの想いから、今回上演が叶いました。小栗旬さんを主演に迎え、12月26日に待望の初日を迎えた『ジョン王』についてご紹介していきます。
狂気と混沌の中、生き抜く道はあるのか
『ジョン王』の物語は、イングランド王ジョンの下へ、先王リチャード1世の私生児だと名乗る口の達者な男が現れることから始まります。
その私生児・フィリップ・ザ・バスタードを親族と認め従えることを決めた、ジョンの母エリナー皇太后。そこへフランス王フィリップ2世からの使者がやってきて、イングランド王位を正当な王位継承者である幼きアーサーに譲り、領地を引き渡すよう要求します。
しかし、ジョン王はその要求を拒否。私生児を従えてフランスとの戦争を開始します。
首尾よく王族の仲間入りをした私生児は、権力者たちの愚かなふるまいを嘲笑いながらも、戦争へと巻き込まれていきます。正当な王位継承者であるアーサーの存在が疎ましいジョン王。腹心の臣下のヒューバートに、アーサーを殺すよう示唆します。これにより、ジョン王と私生児の運命は大きく狂っていくのでした…。
オールメールで上演する『ジョン王』
1998年にスタートした彩の国シェイクスピア・シリーズ。芸術監督であった蜷川幸雄さんのもとでシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、国内外で次々と作品を発表してきました。蜷川さん亡き後の2017年に、俳優の吉田鋼太郎さんがシリーズ2代目芸術監督に就任。吉田さんの演出で、これまでに『アテネのタイモン』、『ヘンリー五世』、『ヘンリー八世』を上演しました。
『ジョン王』は、シリーズ第36弾として2020年に上演予定でしたが、緊急事態宣言の影響で中止に。2021年に第37弾として『終わりよければすべてよし』を上演し、一旦シェイクスピア全37戯曲の完全上演のシリーズ完結を迎えました。しかし、『ジョン王』を上演しないと終われないという吉田さんの強い意志から、今回、本作の上演が叶いました。
生命力とユーモアにあふれ、世の中をシニカルに見つめる若者“私生児”を主演として演じるのは、シェイクスピアシリーズに16年ぶり4作品目の出演となる小栗旬さん。舞台出演自体が2017年のミュージカル『ヤング・フランケンシュタイン』ぶりということで、小栗さんの舞台姿をみられる貴重な機会となっています。
タイトルロールの“ジョン王”役を、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役等、ミュージカル界で圧倒的な実力を誇る吉原光夫さんが務めます。吉原さんは意外にも、今回がシェイクスピア作品初挑戦だそう。
演出も務める吉田鋼太郎さんは、ジョン王と敵対する“フランス王”役で出演します。(埼玉・愛知・大阪公演はジョン王役を吉田さんが演じます。)
さらに今回は、女性の登場人物を含めて全役男性キャストが演じる“オールメール”での公演。
“オールメール”での公演は、蜷川幸雄さん演出の時から上演されているシリーズ。『お気に召すまま』、『間違いの喜劇』、『恋の骨折り損』、『から騒ぎ』、『じゃじゃ馬馴らし』、『トロイラスとクレシダ』『ヴェローナの二紳士』などが上演されてきた人気シリーズです。
演出の吉田さんが“モーレツな女性”と話す3人の女性には、ジョン王の母“皇太后エリナー”役に中村京蔵さん。中村さんは歌舞伎役者で、女方を演じています。『NINAGAWA・マクベス』では魔女役を演じた経験も。
幼き息子アーサーを王にすべく奔走する“コンスタンス”役に、劇団柿喰う客に所属する玉置玲央さん。玉置さんは、『パンドラの鐘』や『赤鬼』など蜷川作品や『お気に召すまま』などシェイクスピア作品への出演経験があり、吉田鋼太郎さんとも何度も共演経験があります。
ジョン王の姪でフランス皇太子と結婚する姫 “ブランシュ”役に植本純米さん。老若男女問わず多彩な役柄をこなす植本さんは、『ハムレット』ではハムレットとオフィーリア、両方演じたことがあるそう。植本さんも『ロミオとジュリエット』や『ヘンリー四世』など多くのシェイクスピア作品に出演経験があり、シェイクスピア作品への造詣が深い俳優といえます。
また、フランス王の息子“皇太子ルイ”役に、2020年の上演の際にオーディションで選ばれたという白石隼也さん。ジョン王の臣下“ヒューバート”役に、蜷川さん演出舞台に多数出演していた高橋努さんなど、シリーズ初参加の若手から常連まで、多彩な俳優陣が集結しました。
彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』は、12月26日(月)〜2023年1月22日(日)東京・Bunkamuraシアターコクーンで上演です。その後、2023年1月26日(木)~29日(日)愛知・御園座、2月3日(金)~12日(日)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、2月17日(金)〜24日(金)埼玉・埼玉会館 大ホールが行われる予定です。詳しくはこちら。
また、本作のWOWOW・イープラスStreaming+・Bunkamura STREAMINGでの配信が決定しました!2/24(金)午後1:30から、埼玉大千秋楽公演が配信されます。観劇できなかった方も、もう一度観たい!という方も、ぜひお見逃しなく。
WOWOWはオンデマンドで配信。視聴には、WOWOW加入済みのWEBアカウントでログインが必要です。※アーカイブ配信は2/26(日)午後11:59まで。
イープラスStreaming+ではライブ配信&1週間のアーカイブ配信、Bunkamura STREAMINGでは2週間のオンデマンド配信(ライブ配信はなし)が行われます。
ついに『ジョン王』が上演できるということで喜びもありますが、これで本当にシリーズが完結してしまうと思うと少しの寂しさも。本作は、シェイクスピア作品の中でも、あまり上演されてきていない演目ですので、この貴重な機会にぜひ劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?