演劇・ミュージカルファンの聖地である帝劇こと帝国劇場(東京・千代田区)が、2025年を目処に一時閉館することになりました。老朽化した建物の建て替えと丸の内地区の再開発のために一時的な閉館となるのですが、こちらのニュースが発表された際にはSNSで「帝劇」というワードがトレンド入りし、ファンや出演歴のある俳優たちからは現在の劇場での思い出を綴って名残惜しむ声も多く挙がりました。人々に愛される日本の演劇界の象徴ともいえる帝国劇場の歴史と、今後の行く末を探ります。
現在の劇場は二代目帝国劇場
帝国劇場が誕生したのは、1911年(明治44年)のこと。日本で初めての西洋式大劇場として建てられ、戦前は演劇舞台、戦後は大形映画の上映館として活躍し、初代の劇場は1964年に閉館しました。
現在の帝国劇場は、その後の1966年(昭和41年)に開場した2代目の劇場です。運営会社である東宝の当時の専務取締役は、菊田一夫演劇賞の名称にもなっている国民的劇作家の菊田一夫氏。
彼の指揮のもと、2代目帝国劇場は名作小説『風と共に去りぬ』のストレートプレイ舞台によってこけら落としとなりました。
丸の内エリアに立ち並ぶ数多くの劇場の中でも、帝国劇場は日本の演劇と芸術発展の歴史を感じさせる劇場です。
ロビーにある美しいステンドグラスやオブジェは、三越の包装紙をデザインした猪熊弦一郎氏の作品。赤い絨毯が敷かれた格式の高いロビーでは、まるで美術館に来たような見ごたえのある芸術品に目を奪われてしまいます。
売店で帝劇オリジナルメニューやオリジナルグッズを買うのも、開演前の醍醐味です。
約1800席の客席は、2018年のリニューアルによって従来のものをすべて交換し、より座り心地の良いものに一新しました。4つのセリと回り舞台を持つ特殊な舞台機構により、設立から56年経った今もさまざまな演劇・ミュージカル作品の発展を支えています。
時代に合わせた新しい劇場へ。気になる2代目の大千秋楽は?
帝国劇場建て替え計画の具体的な内容や閉館の日程についてはまだ詳細が明かされていませんが、今回の建て替えによって帝国劇場と出光美術館の入る帝劇ビルと隣接する国際ビルを一体的に建て替えることが発表されています。
2つのビルを東宝と三菱地所、出光美術館が三者共同で建て替え、建物の防災力の強化やポストコロナに合わせたテナントニーズ、脱炭素化社会の実現を図るそうです。
新しい帝国劇場は、建て替えられた一体型の施設のなかで再開します。丸の内エリアのまちづくりを通して、生まれ変わった帝劇劇場がさらに演劇の拠点として発展していくのではないでしょうか。
今後の予定として多くの関心を集めているのは、「来たる2025年の大千秋楽に何が上演されるのか」ですよね。『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などの世界的名作なのか、帝劇公演から生まれた『マリー・アントワネット』や『ナイツ・テイル−騎士物語−』などの日本初演から世界へ羽ばたいたオリジナルミュージカルなのか、はたまた帝劇の代表作としてジャニーズファンにも愛されている『SHOCK』なのか。
2023年に上映される『SPY FAMILY』や『キングダム』など、日本を代表する人気漫画の初舞台化作品の成長も気になるところです。
2代目帝国劇場の大千秋楽に選ばれるのは、いったいどの作品なのでしょうか?今後の続報を楽しみに待つことにしましょう。
2025年に帝国劇場が一時閉館し、新しく生まれ変わることで、令和のエンタメ業界に新しい風が吹く予感がしますね。 休館期間がどれくらい続くのかまだわかりませんが、帝劇上演作品とのタイアップ経験もある同じ丸の内エリアの帝国ホテル東京は、再開発プロジェクトによる建て替え工事を2024年から2036年にかけて行うそうです。 建て替え期間に入ると、帝劇とは長いお別れになる可能性があります。 劇場へ出かける楽しさと、生の舞台の感動を長きにわたり伝えてくれた帝国劇場。 一時休館の前には、ぜひ足を運びたいものですね。