ドラマ『半沢直樹』シリーズや映画『空飛ぶタイヤ』などの原作者である小説家・池井戸潤さんの最新映像作品が、映画『シャイロックの子供たち』です。今作は劇団四季が衣装協力に携わっており、池井戸さんのファンだけではなく劇団四季ファンからも注目を集めています。映画『シャイロックの子供たち』で”共演”を果たした池井戸さんと劇団四季。その経緯には、池井戸さんの劇団四季への愛が垣間見えます。
映画『シャイロックの子供たち』に劇団四季が衣装協力
東京第一銀行の長岡店で、ある日現金100万円の紛失事件が発生します。100万円は支店内で紛失した可能性が高く職員全員が必死に捜索しますが、真相は謎のまま。営業課・課長代理の西木雅博(阿部サダヲさん)は、部下の北川愛理(上戸彩さん)と田端洋司(玉森裕太さん)と共にこの事件の真相を探ります。
すると、営業一課のエース・滝野真(佐藤隆太さん)が優良案件において顧客と架空融資を工作している疑惑が発覚。さらには支店長・九条馨(柳葉敏郎さん)と100万円紛失事件の調査に訪れた本部検査部の黒田道春(佐々木蔵之介さん)にも、銀行員としてあるまじき裏の顔があるようで・・・?!
平和に見える町の銀行支店で巻き起こる騒動から、裏の金に目がくらんだ銀行員たちの欲と不正を暴き出します。
タイトルになっている「シャイロック」とは、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場する強欲な金貸しの名前です。
映画は検査部の黒田が舞台『ヴェニスの商人』を観劇する印象的なシーンから始まるのですが、舞台上の役者たちは劇団四季の舞台で実際に使用された衣装を着用しています。
劇団四季が実際に使用していたという舞台こそ、1977年から2011年までストレートプレイとして上演していた『ヴェニスの商人』。シャイロック役は、初演から長きにわたり劇団四季の創始者のひとりである故・日下武史さんが演じていました。
そんな”本物”の『ヴェニスの商人』の舞台衣装が『シャイロックの子供たち』のために再調整されて使われており、エンドロールにも「劇団四季」の名前が登場しています。
池井戸潤×劇団四季の豪華コラボのルーツとは?
映画の原作小説の著者である池井戸潤さんは、実は大の劇団四季ファン。2017年1月から2021年12月までは劇団四季の会報誌「ラ・アルプ」でコラム『池井戸潤の劇場で会いましょう』を連載していました。
コラムの中で池井戸さんは新作ミュージカルを観に劇場へ足を運ぶ様子や作家という視点からの舞台作品の考察、ときにはファンである俳優の名前も挙げることもあり、劇団四季ファンの間では池井戸さんの劇団愛はすっかりお馴染みなのです。
そのため今回の『シャイロックの子供たち』と劇団四季のコラボは、池井戸さんのファンと劇団四季のファン双方が見逃せないものとなっています。
ちなみに、池井戸さんが特に好きな劇団四季作品は『キャッツ』だそう。これまで『キャッツ』の公演プログラムやCDアルバムに寄稿していたり、池井戸さんの小説『ようこそ、わが家へ』には劇場猫と同じガスという名前の猫が登場したりすることからも、池井戸さんが『キャッツ』好きであることがひしひしと伝わります。
池井戸潤さんといえば作品の映像化が絶えない絶大な人気を誇る経済・企業小説家ですが、劇団四季ファンにとっては”同志”としても敬愛せずにはいられない存在です。 新作映画『シャイロックの子供たち』における劇団四季の衣装協力も、演劇と劇団四季の魅力を深く知る池井戸さんだからこそ実現した貴重なコラボなのではないでしょうか。