井上ひさしさんの戯曲を上演するこまつ座が創立40周年第1弾に選んだのは『きらめく星座』。旗揚げ翌年1985年に初演された「昭和庶民伝三部作」の第一作目で、太平洋戦争前夜の昭和16年12月7日までの約1年間を描きます。

激動の時代に、ジャズを愛した浅草のレコード店を描く

『きらめく星座』の舞台は昭和15年の浅草。小さなレコード店・オデオン堂を営む家族と間借り人たちは平和に暮らしていましたが、陸軍に入隊していた長男・正一が軍から脱走。正一を追って乗り込んできた憲兵伍長「蝮の権藤」と、長女みさをの夫で愛国主義者の源次郎が加わったことで、家族の暮らしに“大嵐”が吹き荒れます。

劇中ではピアノの生演奏にのせて、「青空」「一杯のコーヒーから」など昭和初期の流行歌が使用される音楽劇となっています。敵性音楽として戦時中は演奏や鑑賞が禁止されていたジャズ。今の時代から考えると遠い昔のようにも思えますが、コロナ禍に様々な芸術が“不要不急”と呼ばれたこともよぎります。あの日々を経た私たちだからこそ、本作から感じるものがあるのではないでしょうか。

また本作の特徴として、ほとんどのシーンが戦前の祝日に設定されています。このことに関して井上ひさしさんは、「戦前の国家的な祝日が、名前を変え、趣旨を変え、戦後も抜け目なく祝日になっている。世の中変わっていると言うけれど、あまり変わっていない。日本が徳のある国になって欲しい、という願いを込め」て制作したと語っています。

演出・栗山民也×実力派俳優が集結

『きらめく星座』は1985年の初演時、夏木マリさんや橋本功さんらが出演。第20回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞しました。その後何度も再演が行われ、2009年からは栗山民也さんが演出を担当。近年では『夏の砂の上』『凍える』などの演出も印象的な栗山さんが、2023年版でも演出を務めます。

出演には『夏の砂の上』にも出演していた松岡依都美さん、こまつ座5回目の出演となる久保酎吉さん、『RENT』『デスノート』『生きる』などに出演してきた実力派俳優・村井良大さんら実力派俳優が集結。東京公演は4月8日(土)から23日(日)まで、紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演、その後全国ツアーが予定されています。上演時間は約3時間。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

Yurika

ミュージカル座が東京の過去と現代を描いた3月公演『東京ミュージカル』でも、ジャズと戦争の描写がありました。音楽と人々の暮らし、そして戦争。様々なことに思いを巡らせる公演となりそうです。