11月に長野・まつもと市⺠芸術館 実験劇場にて幕を開ける舞台『ハイ・ライフ』。1996年にカナダの小劇場で初演された本作は、若者の間で口コミで広がりをみせ大盛況となりました。日本では2001年に初演されて以来、何度も再演が繰り返されている、根強い人気を誇る作品です。東出昌大さん、尾上寛之さん、阿部亮平さん、小日向星一さんがならず者の4人を演じます。
ならず者4人の人間ドラマが見せる“生”の本質
11月に⻑野・まつもと市⺠芸術館 実験劇場、12月に東京・吉祥寺シアターで、舞台『ハイ・ライフ』が上演されます。
『ハイ・ライフ』はカナダの劇作家リー・マクドゥーガルさんによって、1994年に執筆された戯曲。過激な内容から上演に至ったのは2年後の1996年のことでした。トロントのクローズ・シアターという小劇場で幕を開けると、若者たちの間で口コミが広がり大盛況に。以降カナダだけでなく、オフ・ブロードウェイ、シカゴ、ロンドン、ソウルなど世界各国で上演され続けています。
日本では2001年に初演され、翻訳を手掛けた吉原豊司さんは、第9回湯浅芳子賞を受賞しました。2009年には映画化もされた作品です。
『ハイ・ライフ』の登場人物は、前科まみれのディックに、刑務所帰りのバグ、コソ泥のドニー 、そして女に貢がせてばかりのビリーの、過激かつ反社会的な4人。彼らが銀行強盗を企むところから物語は始まります。
ハイ・ライフ(上流社会)を夢見て、人生を懸けた大博打に出た悪党たちは、どのような結末を迎えるのでしょうか…。
本作の見どころは、なんと言っても筋金入りのジャンキーな4人の男たちが繰り広げるスリリングな駆け引き。欲望をむき出しに生きている4人の無軌道な生き様が、人間の生の本質の一面を浮かび上がらせます。
長野県・松本市での濃密な創作環境に期待
演出を手掛けるのは 、骨太な社会派の作品を上演し続ける劇団チョコレートケーキの日澤雄介さん。
2014年『治天ノ君』にて第21回読売演劇大賞優秀演出家賞、 2023年には『生き残った子孫たちへ 戦争六篇』で、第30回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞し注目を集めました。近年の主な演出作には『M.バタフライ』、『アルキメデスの大戦』などがあります。
日澤さんは、本作を「猥雑で滑稽で人間の欲望が煮凝りの様に煮詰まった作品」と表します。
上演に向けて「これ程までに過激でぶっ飛んだ作品も珍しいので、いつか演出してみたいと思っておりました。一癖も二癖もある魅力的な俳優たちと共に緻密に戯画的に作品を立ち上げて行く『ハイ・ライフ』、その濃厚で刺激的な味をお楽しみください」とコメントしました。
出演者には、前科だらけのディック役に『とべない風船』、『天上の花』、『Winny』など話題映画への出演が続いている東出昌大さん。
「それぞれのキャラクターは強烈ですが、この作品は会話劇なので芝居の緊張感とその奥ゆかしさや厚みをじっくりお客様に楽しんでいただきたいです。今まで見たこともないような熱量だったり、緻密さだったりを一緒に体験して頂きたいなと思います」とコメントしています。
天才的なコソ泥のドニーには、NHK大河ドラマ『⻘天を衝け』、 連続テレビ小説『スカーレット』。近年では映画『それぞれの花』で主演を務め、自身の劇団「ヒトハダ」を立ち上げるなど活躍の幅を広げている尾上寛之さん。
今回は長野県松本市で作品制作をするというのが俳優陣にとっては大きなポイントになっているよう。尾上さんも「松本で4人で濃密な時間を過ごして作品をつくる事は、作品のことだけを考え、東京とは違う環境の中で感じるものがいっぱいあって、今の自分にとってとても貴重な体験になりそうだと思った」こと、そして「今まで観ていた劇団チョコレートケーキの日澤さんが演出」ということで本作への出演を決めたのだそう。
「かなりハードルが高いと思いましたが(笑)今まで演じたことのない役なので自分の殻を破り、また自分にとって一歩踏み出せるような体験が出来そうな気がしています」とコメントしました。
刑務所帰りのバグには、映画『クローズZERO II』、NHK連続テレビ小説『らんまん』など映像作品を中心に活躍しており、悪役に定評がある阿部亮平さん。阿部さんは今回が本格的な舞台は初挑戦。出演を決めたきっかけを、「演出の日澤さんとお会いして、この人に自分を任せて、舞台の経験が浅いからこそ、自分ができる限りの全てをぶつけてみたいと思った」からだと話します。
「良い化学反応が起こって、舞台の上に立つことを期待しています。共演者の中では、一番年上ですが、全員に胸を借りる挑戦者のつもりでいます。それくらい頼もしい仲間がいるなと楽しみにしています。今まで悪い役をたくさんやってきましたが、今回はリミッターを外して、どこまで行けるかな?と自分にも楽しみでもあるし、どんどん挑戦をして今までにない自分を出したいです」と意気込みました。
女に貢がせてばかりのビリーを演じるのは、 『染、色』、『マーキュリーファー』、『エダニク』、『スカパン』、『宝飾時計』など話題の舞台に次々と出演している小日向星一さん。
小日向さんは、本作について「めちゃくちゃな破天荒なのに、惹きつけられるものがあって。4人が全員とも愚かなんだけど、愛おしさを感じるところがあったり。普段だったら関わらない人たちですが(笑)全員が魅力的です」とコメント。
また、出演にあたって「今まで出たことがないタイプの作品、演じたことのない役で、見る側にも演じる側にも凄い刺激的な作品だと感じ、ぜひ挑戦したいと思いました」と意気込みました。
まつもと市⺠芸術館プロデュース 『ハイ・ライフ』は、11月23日(木) 〜11月 26日(日) に長野・まつもと市⺠芸術館 実験劇場にて、12月1日(金) 〜 12月6日(水) に東京・吉祥寺シアターにて上演です。チケットの一般発売は9月2日(土)10:00〜を予定しています。詳細は公式サイトをご確認ください。
俳優陣が口を揃えて「松本での濃密な稽古があることで出演を決めた」というその稽古スタイルが、とても気になるポイント。自分を抑え込み周りや社会に順応することが多い現代だからこそ、破天荒な4人の生き様をぜひ劇場でご覧ください。