ダンスで物語を表現する。そう聞くと、緩やかな音楽に合わせたコンテンポラリーダンスや、気持ちを爆発させたように踊るHIPHOPなどが思い浮かぶかもしれない。しかし梅棒は違う。あくまで「物語」が主役。これはまさしく、“新ジャンル”なのではないでしょうか。そこに加わる成井豊さんの温かで人間味のある世界観。その魅力にどっぷりハマリました。(2020年12月17日〜27日、サンシャイン劇場)
誰もが知る楽曲から浮かび上がる物語
『成井豊と梅棒のマリアージュ』は、脚本・演出家である成井豊さん率いるキャラメルボックスメンバーと、梅棒のコラボレーション作品。「plat de 成井豊」と「plat d’ 梅棒」の2バージョンの公演が行われ、双方の作品に出演し合います。今回観劇した「plat d’ 梅棒」では、4つの物語をオムニバス形式で展開。うち3作品が梅棒・遠山晶司さん演出のセリフなし・ダンスで魅せるストーリー。1作品は成井さん演出の会話劇となっています。
遠山さん演出の3作品では、役者は一切セリフを発しません。しかしダンスや役者の動きによって、確実に物語は進んでいきます。そこに使用されるのは、誰もが知るJ-POPの楽曲や演歌など。楽曲の歌詞が自分の心境や状況とぴったりはまる瞬間ってありますよね。あんな感覚で、様々な楽曲の歌詞・メロディーに役者の喋らぬ演技が乗せられ、物語が浮かび上がってくるのです。もちろん、ダンスはキレッキレ。ダンスと物語の絶妙なバランスとメリハリが、梅棒スタイルのミソなのではないかと感じました。
梅棒にマリアージュする、人間味溢れるキャラメルボックス・エッセンス
梅棒スタイルに取り憑かれ始めた頃、3作品目に登場するのが作・演出成井豊さんの『CROSSROADS』。先程まで“ザ・エンターテイメント!”全開で踊っていた役者たちが「言葉」を持ち、人間らしさ全開で語り始めます。多様な衣装・小道具で魅せる他作品に比べ、『CROSSROADS』で使うのは白い椅子とほんの少しの小道具のみ。衣装もすごくシンプル。(何しろ他の作品には女装する役者やら動物に扮する役者やら出てくる)
一転して男らしい役者たちが静かに豊かに語る、人間味溢れる言葉たち。やっぱり、言葉がひしめき合う“ザ・演劇”もいいな。梅棒全開だったステージにキャラメルボックスのエッセンスが流れ込み、マリアージュしていく感覚を肌で味わいました。
ここまで来たら、もう一度人間味溢れる「plat de 成井豊」も観てみたくなったぞ…。と、帰り道にチケットを再購入。これは、キャラメルボックス×梅棒の沼にハマっているのでしょうか…。公演は27日まで。皆様も、2020年の観劇納めにいかがでしょうか。公式サイトはこちら